海外旅行の現地手配会社団体、旅行仕入れの競争激化を指摘、世界基準の商取引きへの改善が急務

日本海外ツアーオペレーター協会(OTOA)が2023年6月7日、第32回通常総会に伴う記者会見を開催した。OTOAは、主に日本人旅行者の海外旅行先のホテル・現地ツアーなどの手配や現地オペレーションを専門に取り扱う旅行会社が集まる組織。新型コロナを経て国境が開かれたいま、あらためて旅行会社との事業者間取引の適正化に向けた活動に注力する。

日本人旅行者のプライオリティ低下を危惧

国内旅行や訪日旅行の活況で日本の観光地がにぎわいをみせる一方、海外旅行の回復状況は2019年比で3割程度。要因には円安、世界的なインフレ、日本人特有の慎重な姿勢もあるが、世界の旅行需要はパンデミック前の水準に回復している。OTOA会長の大畑貴彦氏は「現地サプライヤーの中での日本人旅行者のプライオリティが下がっている。本格復活に向けて大きな壁になる」と、ツアーオペレーターとして現地の実情をつぶさに知る立場から早期市場回復の重要性を訴えた。

OTOAがコロナ禍前から再三指摘してきたのが、海外旅行素材仕入れにおける日本独自の商習慣の改善だ。もはや、世界各国の旅行は売り手市場。BtoB取引きにおいて、予約とともにデポジット、さらにはフルチャージでの支払いが一般化している。一方で、日本の旅行会社との取引では、かつての後払いが続いていたため、OTOAなどに所属するツアーオペレーターが立て替えてきた経緯がある。

OTOAは現在、会員に事業者間取引の最新状況の確認を実施しており、6月末をめどに日本旅行業協会(JATA)に要望書を提出する予定だ。

大畑氏は、アジアをメインに取り扱うサイトラベルサービス代表取締役で、OTOA会長に就任してから14年目になる。「事業者間取引の適正化に向けた取り組みを継続してきたことで、現地手配に関わる旅行会社からの入金のタームが徐々に短くなり、最近では1カ月に2度というケースが大半になるなど早期化を実感している。ただ、グローバルでは、ホテルを筆頭にほぼすべての部分で値上げ、支払いの厳格化が進んでおり、仕入れの競争激化を受け入れられない地域からの観光客は排除されてしまう恐れがある」と話した。

インバウンドオペレーターの取り込みに注力

もっとも、OTOAも海外旅行の苦境が続くなか、ツアーオペレーターの団体として存在感を発揮していくために、さまざまな形を模索している。

インバウンドの回復が著しいなか、2023年度はOTOAホームページにインバウンド関連ページを設置。海外旅行同様、インバウンドを取り扱うオペレーターに対しても、各種マニュアルや手引きなどの周知を図るほか、業界団体ならではの団体保険などメリットを武器し、賛助会員としての取り込みを進めていきたい考えだ。

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