経理部門のDXは、事業規模を問わず、企業が取り組むべき課題の1つだ。支出管理に伴う業務効率化やガバナンス強化はもちろん、電子帳簿保存法やインボイス制度などの法制度への対応、働き方改革にも関わってくる。そこで注目されているのが、法人カードの活用だ。
なかでも、クラウド型法人カードのpaild(ペイルド)は、与信審査や年会費・月額利用料を不要にして無料から導入できるようにし、導入企業における小口現金のキャッシュレス化と領収書の回収・管理の効率化を実現。経理担当者のみならず、カード利用者側である現場の社員からの評価も高い。観光分野でも利用する事業者が増えているという。
従来の法人カードと何が違うのか。ペイルド社の取締役COO・木戸秋圭太氏に話を聞いてきた。
経理をめぐる課題とpaildがクリアしたこと
paildは、クラウド上で法人カードを発行・管理できる新しいサービス。従来の経費精算や法人カード利用のデメリットをクラウドの活用で解消し、多くの事業者が法人カードのメリットを享受できるようにする発想で開発された、とのことだ。
例えば、法人カードのない企業では、経費は事前申請による仮払いや社員の立替精算となる。現金振込や小口現金の管理の手間はもちろん、立替精算をする社員にとっても、自分の懐から必要金額を持ち出し、経費精算書や領収証などの必要書類を揃えて精算するのは大きな負担になる。また、事業者側にとっては経費の不正利用リスクについての不安もつきものだ。
こうした課題に対して、切り札として期待されるのが法人カードだが、普及には大きく2つの課題がある。第一にコストの問題。従来の法人カードは一般的に発行手数料や年会費、月額利用料等が必要なので、全社員に持たせるにはそれなりのコストが必要となる。結果、導入を見送ったり、役員や管理職など一部の方に限定した利用にとどまったりするケースも多い。
第二はガバナンスの問題。事業者として何百万円も使えるカードを、従業員に渡すのはリスクが高い。利用金額の上限設定を変更したり、カード紛失時に停止する場合も、都度、カード発行元に申請する手間と時間が必要となったりと、事業者にとっても運用の負担が大きい。
paildはこうした課題を踏まえ、国内外VISA加盟店(一部除く)で利用できる法人カードを、与信審査なし、かつ無料から利用できる仕組みとした。もちろん、しっかり業務フローに乗るように初期設定、運用フロー設計の有料サポートも実施しているので安心して利用可能。木戸秋氏は「導入企業側がコストを抑えながら、すべてをオンラインの管理画面上でリアルタイムにコントロールできる点が、従来の法人カードとは異なる」と強調する。
クラウドで、業務実態にあった法人カードの運用を可能に
なぜ、このようなサービスが提供できるのか。paildの仕組みを見てみよう。
まず大きな違いは、paildがプリペイドカードの手軽さと使い勝手の良さを備えた法人カードであること。だからこそ与信が不要で、事業者がpaildに事前チャージした分がそのまま利用可能な金額になる。木戸秋氏は「最大15億円まで事前チャージが可能。下限はなく、月間10万円といった少額からでも利用できる」とプリペイド式の利点を強調。チャージ金額内であれば、利用上限金額などの設定は事業者が自由に決められるという。
また、カードはバーチャルカードとリアルカードの2種類があり、発行枚数に制限はない。バーチャルカードならすぐにカード番号が付与され、利用が可能。オンライン決済のみの利用なら、バーチャルカードで十分だ。一方、リアルカードは通常のカード決済体験と同じように、街中のVISA加盟店で利用できる。セキュリティを考慮し、カードにはカード番号の記載がないのも特徴だ。
カードはクラウドで管理しているので、事業者自身がオンラインの管理画面上で発行から停止、利用上限の変更などを、いつでも設定できる。利用状況もリアルタイムで確認でき、カードごとに上限金額や利用停止などの設定もできる。
「例えば出張での使用なら、その内容によって金額設定ができ、出張先から急な出費の連絡が入った場合はすぐに上限金額を変更してカードに反映できる。営業所・店舗などの拠点や部署単位での発行など柔軟な使い方ができ、プロジェクト期間中だけの限定発行にも柔軟に対応が可能」(木戸秋氏)であるのも強みだ。
さらにpaildの大きな特徴は、領収書の回収・管理機能も付け、法人カードの発行から精算管理の支援まで一気通貫で提供していること。paildでカード決済すると、すぐにカードの利用者に「領収書を提出してください」という回収促進メールが届く。利用者はメールの指示に従って領収書をスマホで撮影し、メールに添付して返信するだけ。これでカード明細に対して領収書が自動的にアップロードされる仕組みだ。
紙の領収書や経費精算書の提出のために出社する必要がなくなり、リモートワークがしやすくなる。「領収書の回収が利用後3日以内に100%という事業者も出てきている」(木戸秋氏)という。
実際、ある企業では、領収書回収・管理に社員が費やしていた時間が2時間以上、経理担当者が経費確認と仕訳入力で2時間半以上、これに口座振込み手続きを加えると会社としての業務時間は6時間に及んでいた。これが、paildを導入すると領収書回収・管理と口座振込が不要になり、経費確認と仕訳入力の時間も削減できるので、全体の作業時間は2時間にまで短縮できるとわかった。木戸秋氏は「結果的に業務時間は3分の1、業務負荷も最大70%程度の削減が可能」とアピールする。
そのうえ、実際に使用した金額と領収書との整合性をリアルタイムで確認できることは、不正リスクを排除できる安心材料となる。木戸秋氏は「ワークフローのみに依存したリスク対策は限界にきている。法人カードの利用はリスク対策やガバナンスの観点からも有効」と付け加えた。
観光事業の分野と相性が良い理由
木戸秋氏によると、法人カードのクラウド発行・管理サービスは、グローバルでも急速に広まっている。日本での導入企業も増加しており、日本におけるクラウド型法人カードのパイオニアであるペイルド社では、2020年8月のサービス開始からわずか3年弱で、事業者数が3000社を超えた。「反応が早かったのはIT企業やスタートアップ企業だったが、その後、医療や福祉関係の法人、そしてホテルなどの宿泊事業者や飲食店といった観光関連分野など、さまざまな業種で利用が増えている」(木戸秋氏)。
観光分野ではホテルや旅館をはじめ、拠点や店舗が複数存在する企業は多く、立替経費は日常的に発生している。ところが、コストとの兼ね合いで法人カード導入に及び腰な事業者は多い。
その点、paildなら導入のハードルは低い。観光業界での経験を有し、事業者の実情を知る木戸秋氏は「観光関連のサービス現場では、追加食材の手配など急遽、支払いが必要となるケースは少なくない。その際、paildがあれば迅速に対応でき、事後処理も簡単。旅行会社であれば、出先でのトラブル発生や予期せぬ事態への対応が求められる添乗業務などでも、利用価値は高いはず」と、観光分野との相性の良さを強調する。
観光事業者は、繁忙期に期間限定の増員をかけるなど、スタッフの出入りが多い。そのため、カード情報の漏洩リスクや管理の煩雑さを考慮し、現金決済の方が良いと判断する事業者もいる。しかし、カード番号の記載のないpaildなら、人員の入れ替えや退職時も安心という声も多いという。
事業者の声、今後の展開
木戸秋氏には、導入企業から聞いた印象的なエピソードがある。それは、とある導入企業の経理担当者がカード利用者である社員から「本当に楽になった。paildを導入してくれてありがとう」と直接、感謝の言葉を受け取ったこと。「社内に新たな仕組みを導入する際には、管理側と利用者で評価が分かれることもありがちだ。社員をサポートすることが通常業務である経理が、社員から面と向かって感謝されることもあまり聞かない。だからこそこの話は、感慨深い」と話す。
こうした評価を得られる背景には、クラウド型法人カードの特徴を生かした、paildの制度設計と技術開発がある。新規導入を検討する企業との打ち合わせには、時に営業担当とともに開発者も同行してヒアリングをすることもあるという。フィンテックのスタートアップ企業として実直にサービス開発に取り組むペイルド社の開発姿勢・技術力が、利用者が満足するサービスを生み出している。
ペイルド社は、基本的なサービス機能として、カードが利用された対象店舗や企業が支払う手数料を主な収益源としている。一部、導入企業の要望に応じて、paildをより活用するための有料サポートサービスも提供する。
導入企業が経費を有効活用できる環境を整備して、paildの利用を促進することが、同社の収益向上につながる。現在はインボイス制度に対応する機能開発も進めており、事業者番号や税区分の管理も自動化する予定だ。
木戸秋氏は「今後も法律の変化に随時対応していく。『paildさえ入れておけば、法制度への対応は安心』という状態を作っていきたい、そしてクラウド型法人カードが普及している米国などと同様に、日本でもコスト構造の改善に役立ててもらいたい」と考えている。
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対応サービス:クラウド型法人カード「paild(ペイルド)」
問い合わせ先:sales@paild.jp
記事:トラベルボイス企画部