オンライン販売を強化したいが、なかなか実行に移せない。デジタル化に取り組み始めたものの、効率化や収益面で成果が得られない。そんな悩みを抱えているタビナカの観光事業者の課題を解決すべく、2021年に日本で本格提供を開始したのが、観光DXプラットフォーム「Nutmeg(ナツメグ)」だ。
Nutmegは観光事業者向けに特化し、これ1つでタビマエの予約サイトの開設・販売管理からタビナカの現地消費促進およびデジタルマーケティング、タビアトのリピーター促進まで、オンライン販売で収益を拡大するために必要な機能を集約したオールインワンのサービス。「当社のスローガンは、観光事業者の稼ぐ力を最大化し、ファン作りのパートナーとなること」と話すNutmegLabs Japan(ナツメグ社)執行役員の北中萌恵氏に、観光事業者のデジタル化の現状と課題からサービス概要、今後の展開まで聞いてきた。
観光事業者が持続的に“稼ぐ”ための課題に対応したプラットフォーム
北中氏によると、テーマパークや動物園、水族館などの観光施設やバスや船などの現地交通、アクティビティといったタビナカの観光事業者のデジタル化とオンライン販売には、大きく2つの観点で課題がある。
1つは、観光事業者が自ら稼ぎ、持続的な経営をするためのシステムや体制が整っていないこと。従来の観光事業者のオンライン販売は、体験予約のオンライン旅行会社(OTA)の利用が中心で、自社サイトを持つ事業者も予約はOTAの販売ページへのリンクで対応するケースが多い。「予約と販売管理のデジタル化にとどまっている。その結果、施設が主体となった販売やマーケティングができないために、リピーター作りや顧客単価向上といった施策が打てていない」(北中氏)のが現状だ。
もう1つは、観光事業者のデジタル対応と利用客の期待する顧客体験に乖離があること。例えば、オンラインで事前予約ができても決済システムが連動していなければ、予約客は当日、窓口に並んで精算することになる。こうした話は珍しくない。この場合、観光サービスは良い体験でも、それまでの過程に不満があれば相対的な満足度は低下する。
観光事業者がオンライン販売で目指したいのは、デジタル化による生産性向上と直販による売上拡大を実現し、収益性を高めて、持続的に成長していくこと。そのためにも、自社の販売サイトを作り、顧客基盤を構築してCRM(顧客管理システム)をはじめとするマーケティングを仕掛け、サービスの向上と何度も利用するファンを作ることが不可欠だ。
特にファン作りは「一定の収益モデルとして主軸に置くべき」(北中氏)と重視している。地方の小規模の観光事業者ほど遠方から来訪する新規客を次々と開拓するのは難しくなる。だからこそ「拠点を置く地域に愛され、地元客をリピーター化してファン層に育てていけるかが、事業の成否を左右する。そのためには直販で得た顧客データをいかし、データに基づいた施策を的確に展開していくしかない」(北中氏)。
こうしたオンライン販売やデジタル化、マーケティングやデータ分析には、専門の知識やスキルが必要で、観光事業者が自社で習得したり、専門人材を獲得するのは簡単なことではない。そもそも、タビナカの事業を運営する観光事業者は少人数体制が多く、人手不足は長年の課題である。
北中氏は、タビナカ事業者が抱える様々な課題に理解を示しながら、「Nutmegはこうした課題すべてに対応し、稼ぐ力の強化とファン作りを完結するプラットフォームとして進化してきた」と説明。「自動化など業務改善をケアした機能を入れ込み、専門知識がなくても、現有人員の1人が予約・販売管理からCRM、データ分析まで対応し、シームレスに現場の業務につなげられることを想定して設計した」と、観光事業者の実態に即したサービスであることを強調する。
タビマエからタビナカ、タビアトまで、すべての顧客接点を活用
では、タビナカ事業者がどのようにNutmegで稼ぎ、ファン獲得ができるのか。そのシステムを見てみよう。
Nutmegの特徴はタビマエからタビナカ、タビアトまで、観光客のカスタマージャーニーをカバーし、それぞれに顧客接点を持って、売上・利益の拡大と顧客満足の向上に資する機能を提供できること。
タビマエにおける販売サイトの構築や予約管理、販売・決済はもちろん、タビナカではEチケットやデジタルマップなどを提供して、利用客とのタッチポイントを創出。これを基盤に、例えばテーマパークなら、園内の混雑状況をプッシュ通知して分散化を図ったり、クーポン発行や追加チケットの販売でアップセルを仕掛けたりすることも可能だ。
タビアトでは、自社販売で取得できた予約客のデータを用いて会員組織化し、ニュースレター送付などでエンゲージメントを高める施策も可能になる。会員の属性分析やレビュー・アンケートを実施し、その結果を顧客数・満足度の増加を促す取り組みに活用することもできる。
そして、カスタマージャーニーに沿ったこれらの施策は、観光客の体験にもプラスに働く。特に、紙に代わるEチケットやデジタルマップの利便性は高い。そのうえ、デジタルマップ上で、各種限定情報と販促ツールが最適なタイミングで通知されることはファンにとっても有益で、より満足度の高い観光体験に引き上げることも可能だ。
なぜナツメグ社は、観光事業者の課題解決と観光客の体験価値の向上を両軸で実現するサービスにこだわったのか。北中氏は「当社の創業者が、観光事業者と観光客の双方のペインポイントを知っていることが、製品の設計や使い勝手に表れている」と発想の違いを説明する。
ナツメグ社は2018年、現地ツアー販売のOTAで事業開発を担当していた中口貴志氏が、日本と米国で創業。中口氏は以前の業務を通じて観光事業者の実態と課題を認識している一方、大の旅行好きでもあることから、旅行者の視点で世界の観光事業者のサービスを見て、その違いを目の当たりにしていた。北中氏は「タビナカの観光ビジネスを熟知し、事業者と観光客の双方の実態に問題意識を持った経営者がいることが、違いを生んでいる」と強調する。
初期費用0円~、販売単価3割アップした事例も
日本と米国で展開するナツメグ社。日本では2021年のサービスイン以来、契約社数は年々増加し、計400社に広がった。北中氏によると、導入企業からは「機能はもちろん、インターフェースを含め、『使いやすい』という評価が多い」。売上も「前年の4割増は珍しくない。1年目より2年目の方が高収益となる企業が多く、これはCRMを利かせてファンを作るNutmegならではの特徴だと思う」と自信を見せる。
2024年春に導入したばかりのエンターテインメントパーク「長井海の手公園ソレイユの丘」(神奈川県)でも、早速成果が出ている。年間来場者数100万人規模の同園では導入後、顧客単価が導入前の3割増となり、ゴールデンウィーク期間中に限れば1.8倍まで跳ね上がった。
園内アトラクションの回数券は従来12枚券だが、デジタル化を機に36枚券を試行したところ、同社の売上ベスト3の商品となり、急ぎ定番化。単価アップに貢献した。デジタル化したからこそ、気軽にテスト販売ができた。さらに、導入後1カ月で会員5000人を獲得。「早くもCRM基盤を構築し、事業者が主体となってさまざまな販促マーケティングを試行できるフェーズに至っている」(北中氏)。
Nutmegは、初期費用0円~でスタートが可能。Nutmegを通した売上に対して手数料を収受するビジネスモデルなので「導入企業の収益アップは当社にとっても重要。だからこそ、収益の上がる機能提供を常に考え、サポートを重視している」と北中氏は説明する。Nutmegで持続的な成長とファンを獲得するノウハウを伝えるサイト「Nutmeg Compass(ナツメグ・コンパス)」も開設し、誰もが無料で閲覧可能とした。
今後、ナツメグ社では導入企業に様々な売り方を可能にして、新たな販売機会を提供する考え。すでに、Nutmegの導入企業同士が相互の商品を各販売サイトに置いて販路を広げることができる「チケットパッケージ基盤」を稼働。観光エリアでは、バスやフェリーなどの現地交通と観光施設、アクティビティなどをパッケージ化し、周遊を促すモデル展開を、Nutmegを基盤に作っていく取り組みも始める。この夏より、複数の有名観光地域で順次始動する見込みだ。
「一定の事業規模があり、自社販売の機能のある観光事業者は圧倒的に指名検索からの予約が多く、自社販売が9割を占める。自社販売と顧客基盤を構築する仕組みがないばかりに、CRMの稼働を通じて財産となる顧客や重要な情報を逃している事業者も多いはず。当社は、あくまでも観光事業者の独自会員を作り、顧客を年に2回、3回と呼び込む仕組みを提供するオンライン販売のプラットフォームであり、他のツールとはポジショニングが違う。どういうシステムか、ぜひ、問い合わせをしてほしい」と北中氏は話している。
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提供サービス:Nutmeg(ナツメグ)
問い合わせ先:問合せフォーム
※記事で紹介した「Nutmeg Compass(ナツメグ・コンパス)」
記事:トラベルボイス企画部