「エイビーロード海外旅行セミナー2013」 2012年の旅行者はどう動いた?

株式会社リクルートライフスタイルは、このほど「エイビーロード海外旅行セミナー2013」を実施。エイビーロード・リサーチ・センターの研究員、森戸香奈子氏が、最新の旅行市場動向の調査結果を発表した。

2012年の旅行市場については、すでに発表されているようにハワイと東南アジアが好調。円安前の駆込みとみられる動きがあった。そのようななか、森戸氏は同社調査による2012年の海外旅行市場で注目すべき点についての分析、考察を交えて解説。今回のレポートでは、セミナーで解説された主なポイントをまとめた。


【市場概況】

▼渡航率 -レジャー市場は「縮小しているわけではない」

同社の調査によると、2012年に渡航した人は17、4%で前年から0、4ポイント上昇。そのうち「観光」、「趣味・スポーツ」、「友人・知人訪問(1年未満滞在)」、「留学・研修(1年未満滞在)」のレジャーを目的とした渡航者が約85%で過去2年と同程度という結果となった。この傾向から、森戸氏は近年議論となっているレジャー市場の縮小論に反して「マーケットが縮小しているわけではない」との判断だ。

また、渡航率で目立った傾向として東海エリアの減少を指摘。2012年調査では16、4%だった渡航率が14、4%に、レジャー渡航率も他エリアが横ばいのなか、2012年の78、5%から75、4%に下落した。


▼海外旅行経験 -「ヘビーの中でヘビー化が進む」

2012年に海外旅行に行った人の平均回数は、約1、7回で昨年とほぼ同程度の結果。各年代でみても、前年からの大きな変動はなく、頻度は安定しているといえる。

変化があったのは海外旅行の経験回数だ。同社は、海外旅行経験を1~3回を「ライト」、4~9回を「ミドル」、10回以上を「ヘビー」と分類して調査を続けており、近年は「ヘビー」が増加傾向にあった。しかし、今年の調査では「ヘビー」が55、4%と昨年とほぼ同ポイントという結果に。一方、平均回数については前年から0、9回伸びて15、3回に増加した。こうしたことから、森戸氏は「ヘビーの中でヘビー化が進んでいる」と分析。「ライト」については、16、6%で前年から微増し、数年来の減少傾向から持ちこたえている。


  • 2ページ目は「2012年の旅行者動向」 -申し込みは前倒し化傾向へ
  • 3ページ目は「2012年の旅行形態」 -パッケージツアー vs FIT

【2012年の旅行者動向】

▼旅行費用 -平均は16、1万円で前年から0、9万円増

同社の調査によると、2012年に海外旅行に行った人が使った旅行費用は総額で平均16、1万円。これは前年と比べて0、9万円増加している。この増加について、森戸氏は渡航先で近距離の韓国や中国が減少し、中・長距離が増加した影響であると解説。また、現地費用は18、9万円と前年比0、2万円減となっており、旅費が増えた分、買い物やアクティビティに書ける費用が少なくなっているとみている。


▼旅行の目的 -「食べる」、「名所、旧跡」、「街歩き」、「ショッピング」

2012年に海外旅行に行った人の旅の目的は、前年同様に「おいしいものを食べる(48%)」、「名所、旧跡を観光する(45、5%)」、「街歩きをする(45%)」、「ショッピングをする(42、6%)」が上位4位を占めた。この項目は複数の回答を求めるものだが、例年突出して上位を占めており、この4つの要素を達成しているか否かはデスティネーション選定に大きく影響してくるとしている。


▼旅行申込み -申込みは前倒し傾向、情報収集はスマホ活用へ

旅行の検討、申込み時期について、「旅行を思い立った時期」は過去2年ほぼ変わらず平均4、6か月前。しかし、「検討開始時期」は3、3か月前、「申し込み時期」は2、6か月前と過去2年から少しづつ前倒しの傾向があるという。また、旅行の情報収集はインターネットが上昇し続けている。旅行会社のパンフレットが30、5%、旅行会社のカウンターが13、8%である一方、インターネットでの情報収集は79、2%と突出した傾向だ(複数回答)。そのなかでも、スマートフォンの活用がすすんでおり、2011年は1、6%、2012年は4、4%、そして今年の調査では7、4%と大幅な上昇をみせた。こうした傾向から、森戸氏は「近い将来には、PCと逆転する可能性もある」とみている。


  • 3ページ目は「2012年の旅行形態」 -パッケージツアー vs  FIT

【2012年の旅行形態】

▼パッケージツアー vs  FIT  -FIT化が鈍化

同社の調査による2012年のパッケージツアー利用率は、60、4%。前年は59、2%で前年と同程度だったといえる。パッケージツアーを選んだ理由としては、「自分で航空券の手配をしなくて済むから(42%)」、「自分で宿泊施設の手配をしなくて済むから(37%)」など、手配の煩わしさがない手軽さが理由の上位にあがった(複数回答)。一方、価格について「ツアー内容に比べて価格が安いから(18%)」、「個人で同内容のものを企画していくよりかかくが安いから(16%)」という結果で、手軽さに比べて数値は低い結果だった。このことから、森戸氏は、「パッケージツアーの比率は、もう下がらないのではないか」と分析している。

なお、パッケージツアーで行った旅行先については、ビーチリゾート、トルコ、中近東などで比率が高く、アメリカや東南アジアではFIT比率が高い結果だった。パッケージツアーの利用率が高い地域と低い地域の順位は以下のとおり。

<パッケージ利用比率が高い国・地域>
  • グアム・サイパン
  • トルコ
  • 中近東・アフリカ
  • カンボジア
  • バリ島
  • その他中近東・アフリカ
  • イタリア

<パッケージ利用比率が低い国・地域>

  • イギリス
  • ニュージーランド・その他オセアニア
  • マレーシア
  • アメリカ(西部、南部、東部、ハワイ・アラスカのぞく)
  • バンコク・タイ都市
  • タイビーチ
  • フィリピン

*この調査は2013年3月25日~4月1日まで、インターネット調査で実施。調査対象数は11万8202人で、調査集計数は5万4045人。さらに集計のうち、姓年代別に均等に回収した2万件を国勢調査(平成22年)の人口構成比に換算して集計したもの。

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