タイ国政府観光庁によると、現在も継続しているバンコク周辺の反政府勢力のよるデモがタイ国内に与えた経済的な損失は、2014年1月だけでも約520億円(約140億バーツ)。また、日本人の観光客は前年比で17%減少したという。こうした状況下、同庁の本国からタワチャイ・アルンイク総裁が来日。現地の状況や今後の見通しなどについて語った。(右上写真は2014年1月15日バンコク市内トンロー付近:撮影者Miyuki Niida)
アルインク総裁は、まず現在のバンコクの状況について「観光客に影響はない」と明言。また、デモが開始して5か月たっており、同氏は「3月を超えずにデモは終わるのではないか」という考えだ。
現在のバンコク市内には各国からの観光客が訪れており「デモの中心地は避けるべき」としつつも、それ以外は通常通り観光ができる状態であるという。また、今回のデモは過去と比較して「平和的」との考え。2006年、2007年とは大きな違う形態でデモが展開されており、デモの参加者の中心が中間層であることや、政府機能をマヒさせずに実施している点を理由として挙げた。同氏は、過去のテロで空港閉鎖、洪水などのトラブルを振り返っても被害は最小限にとどまっており「私たちは観光客を守る」と名言した。
タイ国政府観光庁は旅行会社に対してデモの実施予定やBTSの運航状況など情報提供を行っているが、今後は旅行者が直接情報を取れるようにするという。これは、ウェブサイトで行う予定で近日中に公開される予定だ。また、旅行者に対しては観光警察、空港オペレーションセンターなどとともに情報提供を行う「旅行者救援ネットワーク」、空港ではタイ旅行業協会(ATTA)、タイ・ホテル協会、タイ国政府観光庁(TAT)などさまざまな機関から職員が空港に派遣されており、利用者をサポートしている。
なお、反政府勢力のデモによる影響は、バンコクとその周辺に限られておりプーケットやチェンマイなどの他のエリアにはほぼ影響はないという。
▼デモ終息後のリカバリーキャンペーンも計画
2014年の日本人旅行者目標は150万人
アルンイク総裁は日本市場を旅行者数では中国などにすでに抜かれているものの、消費額は常に上位であることから「重要な市場」との認識で、日本市場を中心にマーケティングをしていく方針だ。今回のデモの影響で減少した日本人観光客については、同氏は「すぐにもどってくるのではないか」と楽観視。これは、これまでの両国間の友好関係やリピーターが増加していることなどの理由からのようだ。こうした考えのもと、2014年の日本人旅行者数の目標は2013年とほぼ同等の150万人としている。今後は「3月を超えずにデモは終わるのではないか」との考えのもと、アジア全体に約3億円(1億バーツ)の予算を用意してリカバリーのプロモーションも計画している。具体策は未定だが、タイ現地ではコンサートなどのイベントを開く計画もあるという。また、メディアを招いて現地の状況を正確に伝える活動を近日中に実施。過去に行われてきたメガFAMなどもプランにあがっており、積極的なリカバリープランを策定しているという。
▼デモによる影響、これまでの流れ
バンコクの反政府勢力によるデモは2013年10月から首都バンコクを中心に行われており、11月には一部政府公的機関の占拠など動きなどで本格化。日本の外務省は、2013年11月26日に渡航者、旅行者に注意喚起を発表しており現在も継続中だ。
現地では2014年1月21日にバンコクとノンタブリ県全域と一部隣接県に非常事態宣言が発動された。非常事態宣言の期間は、1月22日から60日間となっており間もなく期間が終わる予定。対象地域はバンコクとノンタブリ県の全域、および一部の隣接県。
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トラベルボイス編集部:山岡薫