米国の事業用不動産業・投資顧問会社であるシービーアールイー(CBRE)は、カジノを軸にホテルや娯楽施設、MICE施設などを含めた「統合型リゾート(IR)」について、成功例を持つシンガポールの事例を参考に、日本での開発効果をまとめたレポートを発表した。
この「Japan’s Bet on Casinos―統合型リゾートによる日本の観光振興の可能性」によると、訪日外国人が政府の目標通り2020年までに2000万人に増えた場合、東京都では約1万4000室、大阪では約7000室の客室が不足すると試算。2020年に東京都と大阪府の2カ所でIRが創業し、シンガポールと同様のペースで訪日外国人が増えれば、日本全体では年間約5%ずつ増加し、2030年までに3000万人という政府の目標も視野に入ると予測。IRの整備に伴いさらに数千室の客室が供給された場合にも、それらを吸収し得る需要が創出され、ホテルマーケットは好調を維持すると予想されるという。
また、2013年時点で1.4兆円の訪日外国人による観光収入は、2030年には現GDP(2013年時点の名目ベース:480兆円)の約1%に相当する4.3兆円規模に拡大すると試算される。これらを考慮すると、IRが開発される都市のリテールマーケットでは、新規出店のニーズが高まり、その結果として賃料が上昇するエリアも出てくる見通し。
日本では、観光振興の戦略の一つとして、2020年の東京オリンピックまでにIRをオープンさせるため、IR推進法案が国会で審議対象となっている。CBREによると、2010年にオープンしたシンガポールの2つのIRの効果を見る限り、IRが整備される都市では受け入れ施設の充実に伴い、訪日外国人旅行者数が増え、観光収入を含む消費全般へのプラスの効果が期待できるという。