明日の日本を支える観光ビジョン構想会議は、「明日の日本を支える観光ビジョン」(案)をまとめ、訪日外国人旅行者数の政府目標を大幅に前倒しし、2020年に4000万人(当初目標2000万人)、2030年に6000万人(当初目標3000万人)を目指すことを決めた。ビジョンでは、観光を「地方創生」の切り札、GDP600 兆円達成への成長戦略の柱と位置づけ、国を挙げて観光を日本の基幹産業へと成長させ、「観光先進国」に挑戦していく覚悟が示された。
このほか、訪日外国人旅行消費額の目標も2020年8兆円、2030年15兆円に設定。地方部(三大都市圏以外)での外国人については、延べ宿泊者数で 2020年7000万人泊、2030 年1億 3000万人泊という目標を掲げた。また、外国人リピーター数の目標も掲げ、 2020 年2400 万人、2030 年3600 万人とした。日本人国内旅行消費額 の目標は2020 年21兆円、2030年22兆円。
また、「観光先進国」を達成するために必要な施策として、「3つの視点」と「10の改革」を掲げた。
視点1 観光資源の魅力を極め、地方創生の礎に
改革1 :「魅力ある公的施設」をひろく国民・世界に開放
赤坂迎賓館を2016年4月19日から一般公開を通年で実施するほか、京都迎賓館も2016年4月28日〜5月9日に試験公開したうえで、7月下旬を目途に一般公開を通年で実施する。
改革2・ 「文化財」を「保存優先」から観光客目線での「理解促進」そして「活用」へ
2020年までに文化財を核とする観光拠点を全国で200整備、わかりやすい多言語解説など1000事業を展開し、集中的に支援を強化する。
改革3 「国立公園」を世界水準の「ナショナルパーク」へ
2020年を目標に、全国5箇所の公園について、保護すべき区域と観光活用する区域を明確化し、民間の力も活かし、体験・活用型の空間へと集中改善する。
改革4 おもなし観光地で「景観計画」をつくり、美しい街並みへ
2020年を目途に、原則として全都道府県・全国の半数の市区町村で、「景観計画」を策定。専門家チームを地域派遣し取組を徹底サポートする。
視点2 観光産業を革新し、国際競争力を高め、我が国の基幹産業に
改革5 古い規制を見直し、生産性を大切にする観光産業へ
60 年以上経過した規制・制度の抜本見直し(通訳案内士、ランドオペレーター、旅行業など)のほか、トップレベルの経営人材育成、民泊ルールの整備、宿泊業の生産性向上などを、総合パッケージで推進・支援する。
改革6 あたらしい市場を開拓し、長期滞在と消費拡大を同時に実現
欧米豪や富裕層などをターゲットにしたプロモーション、戦略的ビザ緩和、MICE誘致支援、首都圏 のビジネスジェット受入環境改善などを推進する。
改革7 疲弊した温泉街や地方都市を、未来発想の経営で再生・活性化
2020年までに、世界水準のDMO(Destination Management/Marketing Organization)を全国に100 形成するほか、観光地再生・活性化ファンド、規制緩和などを駆使し、民間の力を最大限活用した安定的・継続的な 「観光まちづくり」を実現する。
視点3 すべての旅行者が、ストレスなく快適に観光を満喫できる環境に
改革8 ソフトインフラを飛躍的に改善し、世界一快適な滞在を実現
世界最高水準の技術活用により出入国審査の風景を一変させるほか、ストレスフリーな通信・交通利用環境、キャッシュレス観光、ユニバーサルデザインなどを実現する。具体的な施策は以下のとおり。
【通信】 無料 Wi-Fi 環境の整備促進や一回の認証手続で利用できる環境の整備、SIMカードとの相互補完利用、多言語翻訳システム、個人のニーズに合わせた観光情報の配信など最適なサービス提供基盤の社会実装化
【交通】新幹線や高速バスなどにおける海外からのインターネット予約可能化、JRも含めた東京23区内の駅ナンバリングの完成
【キャッシュレス観光】 主要な商業施設や宿泊施設や観光スポットにおける「100%のクレジットカード決済対応」および「100%の決済端末のIC対応」、3メガバンクにおける海外発行カード対応 ATMの設置計画の大半を2020年から2018年に大幅に前倒し。
【医療】 2020 年までに、訪日外国人が特に多い地域を中心に、外国人患者受入体制が整備された医療機関を、現在の5倍にあたる100 箇所で整備
改革9 「地方創生回廊」を完備し、全国どこへでも快適な旅行を実現
外国人向け「ジャパンレールパス」を、訪日前だけでなく日本到着後でも購入可能にするほか、 新幹線開業やコンセッション空港運営等と連動し、観光地へのアクセス交通の充実を図る。
改革10 「働きかた」と「休みかた」を改革し、躍動感あふれる社会を実現
2020 年までに、年次有給休暇の取得率を 70%(2014 年:47.6%)へと向上させるほか、休暇取得の分散化のため産業界に対し奨励を行うとともに、経済的インセンティブ付与の仕組みの導入を目指す。