ソフトバンクは2016年4月1日、2016年度入社式をおこなった。式ではソフトバンクグループ代表の孫正義氏が登壇。新入社員486人に向けて挨拶を述べた。※写真はソフトバンクグループ社ウェブサイトより
孫代表は「"情報革命"という大きなテーマは一人で担えるものではない」とし、社員が一丸となって事業の成功に向かい、世界をけん引することの重要性を説いた。また、同社が壁や夢に向かって挑戦していく企業であることを強調。孫氏が提起した複数国をつなげる再生可能エネルギープロジェクト「アジアスーパーグリッド構想」がようやく実現段階に至ったことに触れ、新入社員にも「強い思いを持つことが最も大切」と述べた。
新入社員へのメッセージは以下のとおり。骨子の全文を掲載する。
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ソフトバンク入社式 同グループ孫正義氏あいさつ(骨子)
おはようございます。
毎年4月1日には私自身、必ず初心に返ります。皆さんは今日から社会人として人生の新しい扉を開くことになります。今日はそんな皆さんのフレッシュな気持ちに触れることができ、私自身も改めてフレッシュな気持ちになりました。
私は社会人の最初から社長でした。当時は、若い社長、若い経営者と言われ続け、それが自然なことのように感じていましたが、いつの間にか、もうじき60歳を迎えます。若いときはこれからの人生を思い描くことの方が多かったですが、最近は過去を振り返ることの方が多くなりました。自分の思い描くこうありたいイメージに対して、まだ成し遂げていることがはるかに小さい。悔しいことですが、幸せなことだとも思います。目指す夢がある、登りたい山がある。そこに向けて日々努力している。今の自分に満足することなく、もっともっと頑張らないといけないと思います。夢や希望が自分の心の中に明確にある状態は、幸せなことだと思います。問題を解決したい、壁を乗り越えたいという夢や希望があるからこそ、新しい知恵も生まれるし、努力をしようという気にもなる。私が思い描くソフトバンクグループは、そういうことに常に挑戦し続けていくカルチャーを持つ企業グループです。
私が一番好きな花は桜です。桜は一輪でもきれいですが、多くの花が寄り添って花開き、力を合わせて一つの山全体を輝かせることができるからです。われわれはソフトバンク2.0を掲げ、日本に事業の軸を置いたソフトバンクから、世界中の仲間と共に情報革命を引っ張っていくステージにいます。情報革命という大きなテーマは一人で担えるものではありません。一人一人が一輪の輝きを担い、皆さんと一緒になって多くの人に美しさを提供していきます。また、一輪の花はちょっとした風で散りますが、厳しい冬を越えて翌年の春にまた輝き、それを何百年も繰り返していきます。ソフトバンクも倒産の危機を何回も経験しました。創業時は資金繰りに追われ、存亡の危機にも見舞われました。また、そのステージを過ぎても、大きな事業に挑戦するたびに、同様の危機が続きました。インターネットバブルがはじけて株価が100分の1になったこともあります。しかし、そのようなどん底の状態からも得るものがあり、挑戦する意欲が湧いてきました。皆さんの人生でも、いろいろな悩みがあると思いますが、それを何とかして乗り越えると、得るものがたくさん出てきます。皆さんの一回しかない人生を大切にしてほしいと思います。
今、日本は電気代がアジアで一番高い国です。今日から電力の自由化が始まり、競争が生まれることで、アジアで最も高かった電気代が安くなっていきます。東日本大震災後、原発に代わるエネルギーは何かと私なりに考えた結果、再生可能エネルギーにたどり着き、風力、水力、太陽光という自然の力でエネルギーを起こせたら良いのではないかと思いました。そして、アジアスーパーグリッドを構想しました。モンゴルの風で発電し、インドでは太陽光で発電し、これを日本に持ってくれば良いのではないかと構想しました。4年前は笑われましたが、一昨日、中国、韓国、ロシアの電力会社、そしてソフトバンクグループとで、電力網に関する覚書を調印。4年間かけて、事業の採算性を調査して、電力網をつなぐことを前提に計画することで合意しました。私は電気に関しては素人ですが、福島での原発事故を受けて、何とかしようと思いました。その思いがアジアスーパーグリッド構想に結びついたのです。
私が皆さんに一つだけ言いたいこと、それは、強い思いを持つことが大事だということです。強ければ強いほど良いと思います。その思いが自分の欲望を満たす程度のものでは続きません。多くの人々に幸せになってもらいたい、苦しみを和らげたいという思いがあれば多少の困難も乗り越えられると思います。そういう思いでソフトバンクグループは頑張っていく。今日は皆さんとこの思いを共有できたことをうれしく思います。入社おめでとう。一緒に力を合わせて頑張りましょう。
以上