日本市場を狙う新コンセプトのクルーズ会社、経営トップに最新テクノロジーの搭載など戦略を聞いてきた

米国のクルーズ船会社ノルウェージャン・クルーズ・ラインホールディングス(NCLH)が日本での営業活動を強化する。このほど新たに日本オフィスを開設し、同社がもつ3つのブランドのうちカジュアル船の「ノルウェージャン・クルーズ(NCL)」の営業・マーケティング専任チームを配置した。その背景やサービス内容を、NCLHのトップに聞いてきた。

*写真:スティーブ・オデル氏/ハリー・サマー氏/フェリックス・チャン氏

NCLHは、ノルウェージャンのほか、食にこだわるプレミアム船「オーシャニア・クルーズ(OCI)」、オールインクルーシブの高級カテゴリ船「リージェント・セブンシーズ(RSSC)」の3ブランドで展開している。同社ビジネス開発担当、エグゼクティブVPのハリー・サマー氏は、「日本市場で、すべてのブランドを成長させていく。3ブランドのうち最もポテンシャルが高いのがノルウェージャン」と話す。

「ノルウェージャン・クルーズ」は、自由度の高い滞在をコンセプトとしたカジュアル船。厳しいドレスコードや、食事時間、テーブル指定のシステムがなく、個々の乗客が思うままに過ごすことができる空間を目指している。そうしたコンセプトのため、「スパ・レストラン予約は船内でスマホ予約ができる」とアジア太平洋地区シニアVP兼マネージング・ディレクターのスティーブ・オデル氏は自信を見せる。

ノルウェージャン・エスケープ(16.4万トン)のレストランでは、昨年からウェイターがいなくなったという。デジタルタッチパネルを配置し、乗客がそれぞれのタイミングで注文をする形式に。こうした先端のテクノロジーを搭載するための投資は「惜しまない」と語るサマー氏。今後、新造船される船はすべてにこうしたデジタル技術を搭載し、乗客の利便性を高める。

アジア地区セールスVPのフェリックス・チャン氏は、現在も日本人に人気を誇る「プライド・オブ・アメリカ」(8万439トン)のハワイ4島周遊クルーズにも期待。日本人コーディネーターの乗船や日本語新聞などの提供でさらにアピールしていく考えだ。アジアを統括するチャン氏としては、日本市場は「最も重要な市場」として、注力していく。

一方、インバウンドの側面でも日本に対する期待は高い。同社は、新造船として2017年に中国人専用船の運航を開始する予定。すでに、アジアクルーズのなかで日本の港に寄港するコースは2016年3月から2017年4月までに45種類を計画している。中国人専用船では、中国発の4泊程度の短期間クルーズで展開する予定で、寄港地には日本が視野に入ってくる。サマー氏は「インでもアウトでも日本は魅力的」としており、オデル氏は「寄港地としても魅力が高い」考えを示している。


高級ブランドでは人的なサービスを重視

一方、上級ブランドの船ではどうか?サマー氏は、富裕者層には人的サービスを重視していくことを強調する。「ハイテクノロジーは、旅客側に導入しない。見えないところで活用する」という考えだ。サマー氏は「日本のクルーズ旅行者は、アジアクルーズから始まり遠方クルーズに行くようになると確信している」として各カテゴリでの日本市場の成長に期待する。

3つのブランドがホールディングスとして再出発したのは2014年10月。客層にあわせた選択肢を持つことを強みに、従来の北米中心の展開から、新たに世界展開に舵を切った。積極的な投資も継続する計画で、2019年までに3ブランドで5隻の新造船、ベッド数を4割増とする計画だ。

トラベルボイス編集部 山岡薫

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