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自然のなかで、一流の設備とサービスで楽しむ贅沢なキャンプ体験「グランピング」。グラマラス(Glamorous)とキャンピング(Camping)を掛け合わせた造語で、海外で発祥した新しい野外体験・滞在のスタイルだ。日本でもこの数年、グランピングを冠した施設のオープンが続いているが、そのブームに火をつけたのは、星野リゾートが昨年オープンした「星のや富士」と言えるだろう。2016年3月23日、初めて迎える春夏シーズンを前に行なわれた約2時間の日帰りインスペクションをまとめた。
星野リゾートのグランピングとは?
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星のや富士は、河口湖を見下ろす6ヘクタールの広大な丘陵の森の南斜面に位置する。富士箱根伊豆国立公園の特別地域という本物の自然環境での体験と、湖を挟んだ富士山の雄大な景色の中での滞在が、日本のグランピングリゾートとしての「星のや富士」の基盤だ。
グランピングを謳う施設には様々なタイプがあるが、「星のや富士」は「大自然の中での体験×ラグジュアリーリゾート」とし、「日本初のグランピングリゾート」と冠して一線を画す。総支配人の澤田裕一氏は「圧倒的な非日常を提供する」と語り、大自然をラグジュアリーに楽しむ新しいリゾートカテゴリーであることを強調。その上で、星野リゾートのグランピングとして次の4つの要素を紹介した。
- 遊びをデザインできる大自然
- グランピングマスター(野外アクティビティに長けたスタッフ)が提案するアウトドア体験
- 屋外を感じることができる快適なキャビン(客室)
- ワイルドライフが好きなシェフが演出する食事
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40室すべてが富士山ビューのキャビンは、部屋の3分の1をテラスリビングとし、滞在中は常に富士山麓にいる特別感を訴求する。また、アクティビティエリアの「クラウドテラス」ではグランピングマスターが自然の中での楽しみ方を提案。朝の森の中でのストレッチから昼の石窯での手作りピザ、午後にはハンモックでの読書や薪割りなどの体験をし、夕方の燻製づくりや夜の焚き火BARなど、「1日の時間帯に応じて贅沢な時間を過ごせる体験を用意した」とアピールする。
このほか、湖面の静かな早朝の河口湖でのカヌーや富士山麓での乗馬など、敷地外でもすべて星のや富士のゲスト限定のアクティビティとして提供する。
オープンから約5か月の利用状況は?
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ターゲット層はこれまでキャンプをしなかったアウトドアの初心者。澤田氏によると、客層の中心は首都圏居住の30~50代の夫婦やカップル。その中には「星のや」のリピーターもいる。「『星のや』はもともと、自然の癒しを求めるお客様が多い。しかし、『星のや富士』ではその自然のなかでワクワクする体験で癒されたいという人が多い」のが特徴だ。
次の旅行先を探していて、話題の「グランピング」を星野リゾートが手掛けたと知って訪れるケースも少なくない。外国人客も、インバウンド向けのピーアールを実施していないにもかかわらず、全体の10%を占める。情報感度の高い旅行者が自ら調べて訪れている。
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滞在日数は連泊が中心。ほとんどが朝夕の食事を利用、アクティビティの利用は半分程度だ。「星のや」ブランド自体のリピーターが利用する際は2~4泊と連泊が多く、初めて利用する客は1泊や2泊のお試し的な利用方法を選ぶ傾向が強かったという。
広大な星のや富士ではまだ開発中のエリアもあり、森の散策路も整備する予定。リゾートで望まれるスパについては現在のところ用意されていないが、「設置しない計画もない」とし、まだまだ進化していく可能性を含めた。
写真で見る星のや富士
▼15時~17時はクラウドテラスの最上部で、ウェルカムスイーツを提供。アウトドアで焼いたワッフルやダッチオーブンで煮込んだ3種のベリーソース、焚き火で焼いたマシュマロやバームクーヘンのチョコレートがけなど、スイーツもBBQスタイル
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▼建物はライブラリーカフェでここでも飲み物を提供。焚き火は夏もキャンプファイヤー感覚で、年中火を絶やさない。夜は「焚き火バー」となり、森の香りのウィスキー白州やワインなどを出す(有料)。
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▼森の中のダッチオーブンディナー。専属シェフと一緒に作るグランピングならではの体験。キャンプなのに6コース。子羊の背肉ロースト、あわびの香草バターソテー、オマールエビとムール貝のスチームグリルなど(一例)、まさにグラマラスなディナー。4組8名限定で1人1万5000円(税サ別、ドリンクはフリー)。
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▼山麓の燻製づくり。好みの食材を好みの香りで。ソーセージは富士山麓の鹿のジビエ。グランピングマスターによると、この辺りの鹿はドングリを食べるため、肉に甘みがあるのだとか。狩猟と解体に同行して得た知識は、この地ならではの体験を印象を深める
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▼ユニークな椅子が置いてある木漏れ日デッキ。「朝霧の森深呼吸」と名付けた無料のストレッチ体操で1日がスタート。オリジナルブレンド豆の「森の珈琲店」(無料)、朝食「焼きたてキッシュ」(1600円、税サ別)を提供する会場に
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▼キャビンはすべて富士山を眺める。スコープのような形をしているのが特徴的
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▼キャビンは全4タイプ。広さは40~48平米で1泊1室5万1000円~(税サ食事別)。いずれも前面がガラス張りで室内からの眺望も抜群。写真はキングサイズのダブルだが、半数以上はツイン。トリプルもある。
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▼Sキャビンにはテラスリビングに薪ストーブを用意。夕食を薪ストーブで作りながら食べられるディナー(有料)も可能。限定2室のみ。
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▼キャビンのテラスリビングからの眺望。富士を眺めながら、「モーニングBOX」(2800円税サ別)の朝食。このほか朝食は、ダイニングでの「グリルモーニング」(2200円税・サ別)もある
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▼夕食も前出の「ダッチオーブンディナー」のほか、テラスリビングで食べられる「ルームサービス」(1000円~税サ別)、ダイニングでの「グリルディナー」(7000円税サ別)がある。グリルディナーのメインディッシュは、センターグリルで焼き上げる
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記事:山田紀子(旅行ジャーナリスト)