ホテル・旅館業の地位向上を目的とする「財団法人宿泊施設活性化機構(JALF)」の創設カンファレンスが開催された。JALFは全国3万軒のホテル・旅館の持続的成長と社会的地位向上を目的に、一般国民や政府・行政、業界に向けたコミュニケーションの推進を行なう「業界広報組織」として発足。宿泊産業全体の収益向上のため、各種法令や運用等の適正化の側面支援やナレッジシェア、マネジメント実学を目的とした教育支援などを行なう。
創設記念カンファレンスでは、観光庁による観光立国についての講演のほか、JALF理事によるパネルディスカッションなどを実施。基調講演に登壇した衆議院議員で前内閣府副大臣の平将明氏は、JALFが統計をもとにした政策提言を目指していることについて「非常に良いこと。エビデンスベースで政策を作ることが自民党議員のなかで盛り上がっている」とし、「ぜひ業界から政策提案をしてほしい」と期待を示した。
給与上げられないホテルは淘汰される -アパホテル元谷社長
このなかで、JALFが設けたアワードの表彰式では「第1回レベニューマネジメント賞」をAPAホテルが受賞。アパグループ代表取締役社長の元谷一志氏が、受賞記念講演を行なった。
JALFのアワードは“おもてなし”自体を目的とするよりも「高収益性を含む経済合理性」が重要であることを是とする業界認識の構築を目的に設けたもの。「レベニューマネジメント賞」は、レベニューマネジメントでイノベーションを実行した宿泊施設に授与する。
元谷氏は、収益の向上は優秀な人材を確保するために重要であることを主張。「知恵を絞って原資を作り出さなければ有能な人材が集まらない。集まれば、少子高齢化のなかで他の業界より裾野が広く、非常に将来性がある」とし、「勝ち残るために企業努力をしなくてはいけない」と述べた。アパグループではこの3年間で1万円のベースアップを実現したという。
さらに、今後のホテル業界について国内はもとより、グローバルで競争が激化すると展望。同グループでは現在の367ホテル6万超室(設計中やFC等を含む)から10万室へ拡大する中期経営計画のもと事業を拡大しているところ。しかし、実現しても国内での客室シェアは6.6%であることから、「例えばビール業界では4社で99.9%を占めることを考えれば、宿泊業界は再編されるかもしれない」と言及。さらに、「世界(の企業)は100万室規模で動いており、弊社の規模はコップの中の争い」とし、「日本のホテルチェーンは寡占化・独占化に向けて淘汰されていく」と語った。
ただし、「競争があって磨かれていく」ことも強調。アパグループとして6月20日に米・ニューヨークに開業する海外1号ホテルを皮切りに世界に進出することについて、「日本の『新都市型ホテル』のブランドを勝ち得て世界を席巻したい」と意気込みを見せた。2020年に向けて東京オリンピック本年はもちろん、事前合宿やプレ大会などの需要を、「(世界に向けたアパホテルの)一大見本市と捉えている」と、チャンスとして認識している。
最後に元谷氏は、「日本のホテルはサービス、クオリティで世界に誇れるものがある」と自信を示し、「業界を盛り上げるために牽引していきたいし、誇りある業界のために給与を上げる知恵を絞っていきたい」と改めて収益向上の重要性を強調。「給与を上げられないホテルは淘汰される。そうスタッフに伝えて奮い立たせ、これに啓蒙されたスタッフが次の総支配人となる。人材をいかして次世代に繋ぎ、世界を席巻したい」と力を込めた。
このほか、JALFのアワードでは、宿泊施設の未来を最も考え示唆する行動を実施した宿泊施設に授与する「宿泊施設未来大賞」も設けており、第1回は「変なホテル」を選出した。