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楽天は、AI(人工知能)を活用した新たなサービスの展開に注力する。新たなカンパニー制では楽天トラベルを掌握するライフ&レジャーカンパニーにCTO(Chief Technology Officer)職を新設。このほど開催された楽天トラベルの加盟宿泊施設向けのイベント「楽天トラベルEXPO2016」では、楽天会長の三木谷浩史氏が宿泊施設にその重要性を説明し、「トラベル領域でもAI活用の事業が本格化する」として自信をみせた。
三木谷氏は、実際に開発が進んでいるAI活用のサービスについて、旅行者と旅行先や交通手段などをチャットによるコミュニケーションで相談を受けるサービスを紹介。今後、「ユーザーとのインターフェイス(接点)がチャットやボイス機能が主流になる」として音声認識を軸に検討していることを明らかにした。
また、楽天グループとしてもEC事業で価格を最適化させる需要予測ツールや画像認識技術を発展させていることを強調。ビックデータに基づく個人別のクーポン発行(スマートクーポン)は、トラベル事業にも導入される予定だ。
三木谷氏は、こうした技術開発にむけては全社として投資を行っていることを強調。日本国内の技術だけでは開発が困難な時代となっていることから、東京、ニューヨーク、ボストン、パリ、シンガポールに100人以上の体制を組んでいるという。また、楽天社内の公用語を英語としたことで、技術者の10%が外国籍となり、良い作用をもたらしている点を紹介した。
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その他、カンファレンスでは7月の公開予定のAI活用の新サービスPATW(パトゥー)を発表。旅行者に世界中の観光関連業社や自治体のパンフレットを配布するサービスで、旅の途中(タビナカ)や旅の計画中(タビマエ)での利用を見込む。AI活用でユーザーの過去の購買履歴や嗜好の違いよってトップページ情報を変化させていくことで利用促進を図るという。
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三木谷氏は、宿泊施設に対してAIがトップレベルの囲碁の棋士にも勝利する時代になったエピソードを紹介。すでにAIの発展によって、人間に対する敵意をもったAIの登場を制御する必要性についての議論まで進んでいることに言及し、「人間の生活が変わるタイミングがそこまで来ている」として、今後の社会構造が変化していく時代に適応していく重要性を説いた。
カンパニー制導入で新体制、2016年戦略でもキャンセル対策を強化
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新体制で、CTO(Chief Technology Officer)職には、これまで楽天グループで開発部門を牽引してきた星野俊介氏が着任。トラベル事業長は、ヴァイスプレジデントとして引き続き山本孝伸氏が担当。トラベル事業の副事業長には、ディレクターとして羽室文博氏、高野芳行氏着任している。
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集客では、宿泊施設が割引原資を負担している「楽天クーポン」「ショップクーポン」の他に「宿クーポン」に配布。今後は三木谷氏の発言のとおり、個人の嗜好にあったクーポン発行もできるようになる点を強調した。
カスタマーサポートでは、4月1日からコールセンターの営業時間を拡充。日本語は365日24時間、英語、中国語、韓国語は毎日9時から19時までとし、年中無休で対応ができるようにした。
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宿泊施設側へのサービス向上では、UI一新で作業の簡略化した新管理画面の提供を開始。売上データ管理では、新たに6ヶ月先まで予約状況を確認できる機能を追加、予約人数や属性別表示など新たな表示機能も加えた。今後は複数ログインができる新アカウントの発行、マルチデバイス化などの機能も拡張していく計画だ。
トラベルボイス編集部 山岡薫