グーグルのインバウンド検索2016、滞在中の“瞬間的ニーズ”がトレンド、地名がさらにピンポイントに【ランキング】

グーグル(Google)が発表した2016年のインバウンド旅行関連の検索トレンドによると、日本を目的地とする旅行検索は前年比26%増となり、他の競合国よりも高い結果となった。訪日旅行の人気の高さが示されたが、2016年の訪日旅行者の傾向をグローバル・エクスパンションチーム・シニア・エクスポート・コンサルタントの香川美菜氏は、2016年の特徴として(1)訪問は地方へ、ピンポイントに、(2)検索場面は滞在中の瞬間的ニーズが増加、が見られるようになったと説明する。

特に、滞在中の瞬間的なニーズについては、今自分のいる場所から近い場所を探す際の“near me(ここから近い)”検索が増加。“Sushi near me”、“Suhi Place Near Me”といった“寿司を食べたい”などの思った瞬間に行なう検索のことで、これはモバイルからの検索が前年比51%増、PCの約3倍になった。

また、到着後の“Things to do in 地名”(観光地で何をすべきか?)の検索も37%増加。このなかで検索される地名は「東京」(24%増)や「日本」(21%増)よりも、「六本木」(79%増)、「お台場」(71%増)など、より細かい地域を示す地名が増えているという。

プレゼンテーションより

3回の旅行に係るデジタルタッチポイントは7000回

モバイル化が引き起こす行動変化

香川氏はこれらの訪日旅行者の変化について、モバイルシフトの影響を指摘。旅行関連での検索でも、世界的にもモバイル利用が38%増と増えており、特に日本への訪問者の多いアジア圏のモバイル比率は55%で、世界平均の43%を上回る。アジア地域はPCの発達を飛び越えてモバイルが浸透したのがその理由だと説明する。

プレゼンテーションより

また香川氏は、モバイル化、デバイスの多様化によって旅行者のデジタルへの接触機会が増加していることも説明。過去4か月に3回の旅行をしたウィリアムさんの事例を紹介した。彼が上記の旅行をするにあたって検索した回数は、航空関連で120回、宿泊施設関連で122回、OTAなどで3529回、メタサーチで860回など、デジタルタッチポイントは合計7000回以上に及ぶ。

プレゼンテーションより

香川氏は、「身近にデバイスがあり、常に検索ができることで旅行計画から旅行の仕方が変わってくる。時間をかけて準備をするのではなく、今の瞬間に必要な情報を集めて瞬間的な行動を行なっている」と指摘。日本到着後や観光中の検索が増加する理由を指摘。インバウンドをビジネスに取り込むには、グーグルが2015年に提唱した「マイクロモーメント」(消費者が意思決定を行なうタイミングをとらえるというコンセプト)を捉える重要性を強調する。

プレゼンテーションより

検索データが示す訪日旅行者の嗜好の変化

では、訪日旅行者はどこに行っているのか。2016年の日本の地名検索ランキングを見ると、英語、中国語(繁体字:台湾、香港等で使用)、韓国語それぞれ、上位の順位には大きな変化が見られなかった。ただし、国別で見ると、英語では1位が「東京」となったのに対し、中国語と韓国語では1位は「大阪」となり、国・出身地によって訪問先の意向が異なることが判明した。

特に訪日リピーターの多い中国語と韓国語では、九州や関西の地方都市や、「清水寺」「大阪城」など、ピンポイントな場所の検索も増加。なかでも韓国では「登別」(258%増)、「有馬温泉」(132%増)など、具体的な温泉地名に対する検索が増えているという。

「think with Google」より
グーグル香川美菜氏

また、地方への関心の高まりとともに国内での移動が増えていることから、具体的な商品名や方角をイメージした検索も増加。例えば「新幹線」関連の検索では、英語では“jr pass”(35%増)“Japan Rail Pass”(25%増)、中国語では“jr東日本”(26%増)、“大阪周遊券”(35%増))などが見られるようになった。

このほか訪日旅行の目的では「日本食を食べること」(70%)が、2位の「ショッピング」(53%)を引き離してトップ。言語別のランキングを見ると、依然として和食の人気が高く、上位に変化はない。

ただし、英語の5位に入った“Mochi”(55%増)は、餅でアイスをくるんだ商品が人気であるほか、中国語の5位の「肉じゃが」(11%増)、韓国語の2位の「うどん」(483%増)、7位の「あんぱん」(217%増)など、日本人が日常的に親しむ料理や商品に対する注目が高まっているという。

「Think with Google」より

取材:山田紀子(旅行ジャーナリスト)

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…