経済産業省はこのほど、日本の電子商取引(EC)市場と日・米・中3か国間の越境EC市場に関する動向をとりまとめた。
それによると、2016年の国内の消費者向けEC(BtoC-EC)市場規模は前年比9.9%増の15.1兆円に成長。すべての商取引に対するEC市場の割合を示す「EC化率」は、BtoC-ECで0.68ポイント増の5.43%となった。
BtoC-EC市場規模の推移は以下のとおり。
旅行関連のEC取引は3兆円に、飲食・美容予約が引き続き成長
分野別では、物販系が前年比10.6%増で8兆43億円、サービス分野が9.2%増の5兆3532億円、デジタル分野が8.9%増の1兆7782億円。サービス分野では旅行関連が5.4%増で3兆393億円を占める結果となった。そのほか、飲食サービスは38.4%増の3292億円、理美容サービスは34.7%増の3261億円と、旅行に比較すると規模は小さいながらも大きな伸びを記録した。
サービス系分野のBtoC-ECの市場規模は以下のとおり。
経産省では旅行分野のEC活用度が高い点について、ネット専用の旅行業者(OTA)や大手旅行会社などを通じた旅行のネット予約が浸透してきたほか、国内・国際線の航空チケット予約市場が拡大したことが背景にあると分析。手軽に検索や予約、変更などができるメリットに加え、電子チケットを利用したスムーズな搭乗手続きなどが消費者のニーズに合っていると言及している。
同時に、飲食サービスでは、ネット予約が可能な店舗数が急増。理美容サービスは利用頻度や一回あたりの利用単価には変動がみられないものの、これまで店舗側が対応しきれず機会損失に至っていた予約対応をシステムがカバーする流れが加速。いずれも市場拡大は一層進むとみている。
また、スマートフォン利用によるBtoC-EC(物販)の市場規模は、前年比28.7%増の2兆5559億円。市場全体(8兆43億円)のうちスマートフォン経由のシェアが31.9%を占め、スマホシフトがさらに進んでいる状況が判明した。スマホ経由の市場規模は以下のとおり。
中国が日本から購入した額は3割増の約1兆円に
越境EC市場をみると、中国と米国が日本の業者から購入した額は前年比23.9%増の1兆6522億円。そのうち中国が日本から購入した額は1兆366億円(30.3%増)、米国による購入は6156億円(14.4%増)だった。
一方、日本の消費者が中国・米国の業者から購入した金額は合計2396億円(前年比7.5%増)。そのうち米国からの購入が2170億を占め、中国からの購入は226億円にどどまっている。
この調査は、「平成28年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(電子商取引に関する市場調査)」としてとりまとめられたもの。調査は1998年に開始され、今年で19回目。各種メディアや政府の統計報告書、調査レポートなどの公知情報と事業者へのヒアリングを経て分析された。報告書は以下から入手できる。