今後の旅行市場は、成長のドライバーがメジャーから新興国へ、そして主役がミレニアル世代を中心とする若者層へと移行することは、既に指摘されている。では、こうした変化はオンライン旅行市場にどのような影響を及ぼすのか。そして何に注目して戦略を立てるべきか。
オンライン旅行の国際会議「WIT Japan 2017」では、旅行調査の世界大手フォーカスライトのMaggie Rauch氏(Director Research)が、オンライン旅行の最新動向をデータで発表。これを踏まえ、若者層の影響で見受けられるようになったトレンドを提示した。
オンライン旅行市場は2ケタ成長続く
まずは旅行市場の現状をデータで説明。フォーカスライトでは、2016年の世界全体の旅行市場(予約額)を、前年比5%増の1兆2600億米ドル(約140兆円)と分析。2017年は、5.5%増の1兆3300億米ドル(約147.7兆円)と市場の拡大が続くと予想する。
ただし、米国や欧州など大市場の伸び率は3~4%増と緩やかになり、代わってアジア太平洋地域が7%増、中東は10%増などが市場の成長を牽引。特にインドネシアが11%増、インドが10%増、中国が9%増など、GDPの成長率の高い国々が、旅行市場でも著しい伸びを見せている。
これをオンライン旅行に限ると、2016年の5130億米ドル(約57.2兆円)から10.5%増の5670億米ドル(約63.2兆円)となり、全市場の倍の成長率で拡大。2020年にかけて新興市場を中心に、2ケタ成長が続くと見る。
特に有望なのがアジア太平洋地域。3大市場におけるオンライン予約のシェアを見ると、2016年は米国が4割弱で最大だが、2020年には35%に縮小。これに対して、アジア太平洋は37%と拡大し、最大市場となると展望する。
成長と変化を促すアジアと若者
成長続くオンライン旅行市場でRauch氏は、「若い世代がカギとなるのは確か」とし、その影響と背景に言及。
「デジタルを使いこなし、個人旅行も躊躇しない。LCCや民泊など新しい旅行も積極的に取り入れていくのがこの世代の特徴」とし、こうした若者層の趣向や旅行スタイルが、「モバイル」「OTA」「民泊」「チャットインターフェース」の4点で、影響すると説明した。
例えば、モバイル。オンライン予約のうちモバイル経由の割合は全世界で平均24%だが、中国は5割超と他国に大きく水をあけ、さらなる成長も予測。中国におけるモバイル予約額は、2017年の271億米ドル(約3兆240億円)から、2020年には3倍の832億米ドル(約3兆2834億円)にまで拡大すると見る。そして、オンラインで予約した18~24歳の6割が、モバイルで海外旅行パッケージを購入したという。
これは中国に限った傾向ではない。Rauch氏によると、インドネシアでもオンライン予約の62%がモバイル経由。そして旅行者の69%が35歳以下で、若い世代が占めているという。
こうした若い旅行者の台頭がOTAの成長にどう関係しているか。
例えばホテル予約。最大市場のアメリカではOTA経由とホテル直販がほぼ半々なのに対し、アジア太平洋では71%がOTA経由に。そして年代別で見ても、若い世代ほどOTAの利用率が高い。
さらに民泊では2016年、すべての宿泊予約に占めるシェアが17%に広がった。これらは18~34歳の若い世代が、エクスペディアやホームアウェイなどOTAで予約し、利用をしているという。
このほかチャットインターフェースについては、現在のところ予約・購入場面での活用は難しいが、旅行経験を共有するプラットフォームに成長。LINEやウィチャットなどメッセージアプリやテキストメッセージを通じて旅行体験を共有する人の数を年齢で区切ると、45歳以下は45歳以上の2倍以上になる。
Rauch氏は「彼らが年を重ねるほど旅行経験が増え、チャットの数も成長する」と指摘。新たな旅行スタイルを楽しむ彼らの情報発信で、市場の変化がさらに促進されるのだろう。
なお、Rauch氏はシニア世代も変化しつつあることを指摘。スマホの使用率は2016年、前年より10ポイント増の61%と拡大しており、若い世代の変化が彼らの親世代にも影響を及ぼしていること強調した。