みずほ総合研究所はこのほど、2020年の国内宿泊施設不足をテーマとする調査報告書を発表した。それによると、2020年の客室不足は標準的なシナリオで「最大3800室程度」との推計となり、年初の試算(最大3万3000室)よりも大幅に縮小する見通しに。また、宿泊施設の客室数が予定を下回る場合も、不足数は2万3000室程度にとどまる予想となった。今回の調査は、2016年に実施した試算内容に対し、最新動向を加味して全面的な更新を加えたもの。
※ここでは、日本人と外国人のそれぞれの宿泊需要について、「上振れ」「下振れ」「標準」の3パターンを設定。日本人と外国人の需給バランスについて3×3=9種類のシナリオを用意し、地域別に実際の不足数を試算した。一方、供給側については、2016年時点の客室数に2020年までの新規開設計画を反映した「標準シナリオ」と、既存施設の閉館なども加味した「下振れシナリオ」を設定。需要と供給それぞれの予測値を用いて客室不足数を算出した。
2020年の不足客室数の予測値は以下のとおり。需要が日本人・外国人ともに上振れした場合、標準的な供給が行われた場合(ケース①)は3800室の不足。供給が下回った場合(ケース②)は2万3400室の不足となる見通しだ。
地域別では大阪の不足が引き続き顕著、東京はオリンピック開催期間に深刻な事態に陥る恐れも
地域別では、大阪での不足が顕著で、最大9100室程度の不足に陥る可能性がある。一方で東京都の不足数は最大3300室程度となる見通し。ただし、2020年の東京の宿泊需給について、ロンドン五輪時の宿泊需要の動きをベースに月別に予測した場合、客室不足が一時的に2万室以上におよぶ深刻な事態になるリスクも確認された。
具体的には、(1)オリンピック開催期間の8月に東京都の日本人宿泊数が上昇、(2)同8月には外国人宿泊者数が低下する想定。本来東京への訪問を希望していた外国人が混雑を避け、訪日旅行を別期間にシフトする、いわゆる「五輪によるクラウディングアウト効果」が発生した場合は、8月の東京で最大2万室以上の客室不足となる可能性が示唆されている。
2020年の東京のホテル客室不足の試算結果は以下のとおり。2020年8月限定でみると、日本人の需要が標準~上振れした場合、1~2万室の不足が発生する予想となっている。
同レポートでは、今回の試算結果により、客室不足が縮小する推計となった背景には、新規開業をおこなう宿泊施設の増加のほか、民泊やクルーズ船を利用する外国人旅行者の急増があると指摘。ホテルの新規開業が急増することで従業員の確保に不安が残る側面や、五輪後にホテルの過剰問題が顕在化する可能性もあるとし、ホテルよりも人でのコストが相対的に小さな民泊サービスの普及に期待する選択肢も一考の余地があると考察している。