在庫ない宿泊客室の「空売り問題」で初会合、宿泊業団体とシートリップが意見交換、仕組みの周知とサプライヤー管理の徹底を要請へ

全国旅館ホテル生活衛生同業組合連合会青年部(全旅連青年部)は2018年12月18日、Trip.com(トリップドットコム)の客室在庫のない宿泊予約の「空販売問題」で、Trip.comの親会社である中国OTAシートリップ(Ctrip)の日本法人、シートリップ・ジャパン(Ctrip Japan)に対して、日本旅館協会と共同ヒアリングを行なった。

会を主催した全旅連青年部インバウンド・流通対策委員会委員長の星永重氏によると、宿泊施設側としては今回の件について、特に3つの点を重要視したという。1つめは、Trip.comの「オンライン・トラベル・プラットフォーム(OTP)」のサイトが、日本では新しい存在で、その概念や仕組みの説明が消費者にも宿泊施設にも十分に行なわれていないこと。2つめは、オンリクエスト(キャンセル待ち予約)の販売形態が行なわれ、そのなかで予約をして前払いをした人に客室が確保されていると誤認される通知が行なわれたこと。

3つめは、オンリクエスト予約に関係する複数の中間業者が見えず、宿泊施設にとって自館の客室がリクエスト予約で販売されていること自体も不明で、消費者と宿泊施設双方にとって不安を感じるものであったこと。Trip.comの契約業者が販売していても、宿泊施設が自らTrip.comに客室を載せていると思う消費者が多く、宿泊施設に問い合わせが来るという。

これらを踏まえ、今回の会合ではOTPやリクエスト予約の仕組みについてシートリップ側から説明を受けると同時に、宿泊施設側に起こった事象や苦慮した点を話し、日本でのOTPの展開にあたっての是正点などを議論した。

会議にはシートリップ・ジャパンから日本代表をはじめ、中国本社から副総裁も参加。星氏によると、今回の話合いで「OTPの構築には、我々(宿泊施設)の意見が重要であることが認識された」。今後もその目的に向けて両者の会合を行う予定だという。

なお、現在、Trip.com上ではオンリクエストの予約受付は停止状態となっている。

今後の健全な発展のために

星氏によると、宿泊施設側として今回の問題の発生件数などの取りまとめはできていない。というのも、宿泊施設には自館のリクエスト予約がされていることも、キャンセル待ちの予約があることも通知されないため、宿泊施設側から能動的に確認することはできないからだ。

宿泊施設ではTrip.comでリクエスト予約をしたユーザーからの問合せを受けて初めて、リクエスト予約があったことを確認し、調査を始めることになる。Trip.comのサポートセンターに問合せをし、その内容を踏まえて消費者へ説明するなど、宿泊施設の誠意として対応する必要があった。生産性の向上をめざして予約や問い合わせもオンライン化を進めているが、電話等での個別回答が必要な本件の対応によって「労働生産性を阻害した部分は非常に大きい」と、労働集約型の事業である宿泊施設にとっての影響の大きさを説明する。

一方、渦中のリクエスト予約について星氏は、「完全に悪い話ではないと思う」との認識。キャンセルが出た瞬間に、キャンセル待ちをしていた消費者が予約できれば、消費者にも宿泊施設にもメリットがあるとし、その点ではTrip.comがリクエスト予約を行なう説明と合致する。

ただし、そのためにはリクエスト予約の仕組みがしっかり成立し、関係者にもその内容が明示され、システムが作り込まれていることが必要だとする。少なくとも、リクエスト予約が行なわれた際、そしてリクエスト予約が入った場合に宿泊施設に通知することは必須だ。そしてこれらについて、OTPは消費者や関係者に説明責任があるとの考えだ。

星氏は、「いま、インバウンドの需要も増え、宿泊産業自体が日本における基幹産業へと成長する過程で、こうした新しい問題が発生する可能性は今後もあると思う」と語り、全旅連青年部としてOTPの健全な構築に向けて、協力や助言を随時行なっていく方針。まずは誤認を与えない表示・通知や消費者への告知から、販売事業者等のサプライマネジメントの徹底を求めていく。

特にサプライマネジメントに関しては、観光庁などにも実態にあった国による規制が必要とも考える。消費者は予約時に個人情報を登録するが、それがどのようなルートでどこに伝わっていくのか、把握できる仕組みを国として規制すべきとし、今後は全旅連青年部インバウンド・流通対策委員会として、越境事業者に対してもサプライヤーの取締りが可能な制度の整備について、要望を出していく方針だ。

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