楽天・三木谷会長、5Gでライドシェア実現に意欲、米大手リフト(Lyft)社長と語った「移動サービスの未来」

楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、先ごろ開催した「Rakuten Optimism(楽天オプティミズム)」のビジネスカンファレンスで、同社が出資する米ライドシェア大手のリフト(Lyft)共同創業者兼社長のジョン・ジマー氏と対談した。

三木谷氏は、「安全で便利で柔軟性の高い移動サービスが、日本の発展に極めて重要」と、かねてから主張するライドシェア及び移動のサービス化の必要性をアピール。今秋開始する携帯電話事業での5Gネットワークの構築とあわせ、「楽天グループとして、この辺にチャレンジしてきたい」と意欲を示した。

三木谷氏は、世界中でライドシェアは一般的に使われており、それがモビリティ革命を起こすと説明。「自動車を所有する概念がなくなる。自動車をはじめ移動手段をサービスとして使うことで都市設計も大きく変わり、環境への貢献もできる。世界はこのように動いている」と話し、世界と日本とのギャップを指摘した。

日本が懸念する安全性についても、「日本はすごく誤解しているところがある。技術活用とユーザーの評価制度で、もっと安全になる。ライセンスだけで安全とはいえない」と主張。リフトのジマー氏は「私の言い分としては、安全性はタクシーよりもずっと改善している。タクシーでは乗るまでドライバーの情報が分からないが、リフトでは事前にドライバーの氏名から犯罪歴、保険まで確認ができ、乗車後のレーティングもある」と述べ、安全性の確保もリフトのサービスを始めた理由の一つだったと話した。

ライドシェアの推進で道路は歩行者が主役に

対談ではまずジマー氏が、リフト起業時のビジョンとして、「タクシーやリムジンなどの代わりではなく、よりシームレスで低コストに移動ができる方法を考えた」と説明。車社会の米国では、一般家庭の車の維持費は年間100万円以上かかるが、道路を走っている自家用車は全体の4%程度であり、「これは理にかなっていない。車を所有する経済的な負の部分を変える」との思いが発端だったという。

だからリフト上では現在、自家用車のライドシェア以外にも、自転車やスクーターのシェアや高級車のプライベート送迎サービスを扱う。様々な交通と輸送に対して所有から共有へ変革し、「フルサービスの輸送プラットフォーム」(ジマー氏)へと拡大した。現在、リフトでは自動運転への取り組みを進めているが、他の交通手段同様の「選択肢の1つ」だという。

右:楽天会長兼社長の三木谷氏、左:リフト共同創業者兼社長のジョン・ジマー氏

こうした動きによりジマー氏は、「将来的に人々は車を所有しなくなる」と展望。その時代には「道路の設計が変わる」と、都市計画が大きく変わっていくことを指摘した。例えば現在、道路については車所有が前提で設計されているが、今後は現在の道路や駐車スペースは不要になり、道路は歩行者や自転車、スクーター利用をメインとし、車と道路を分けるという考え方を披露。「今後何が起こるかを想定して考える必要がある」と主張した。リフトでは、地方自治体と連携した取り組みも始めているという。

これを受け三木谷氏は、ロサンゼルス市の3割が駐車場に使われているという話を紹介。「これが将来不要になるということは、都市は将来、現在とは全く違うものになる」と述べ、ライドシェアや移動のサービス化の浸透が街づくりにも影響することを示唆した。

なお、楽天はリフトの株式13%を保有する筆頭株主(昨年末時点)で、三木谷氏は同社の取締役を務める。リフトは今年3月、米ナスダック市場に上場した。

取材:山田紀子

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