旅行分野でイライラしない「決済」は実現するのか? 2020年に起きる4つのトレンドを予測した【外電】

ほんの数年前まで、旅行の時の決済手段といえば主にカードで、国や地域によっては現金だった。

EUによる決済サービスや同プロバイダーを対象にした規制「PSD2」の導入は周知の通りだが、さらに「強力な本人認証(SCA)」の導入が義務化されたことについては、知らない人も多かった。

B2Bの取引で、バーチャルカードを試している旅行会社もあったが、支払いの大多数は、昔ながらのコーポレートカードだった。

旅行において、「フリクションレス(摩擦が少ない、ストレスを感じない)な決済」はあくまで理想論。現実には、チェックアウトの手続きに長い時間がかかり、利用者側に支払い方法を選ぶ余地はなく、価格設定も不透明だった。だが状況は大きく変わった。

今や、旅行の決済分野には、様々な新しい潮流が生まれており、決済というものの定義が大きく塗り替えられつつある。2020年、この流れはどうなるのか。私の予想する4つのトレンドをまとめてみた。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

“強力な本人認証(SCA)”が実現

最近ではよく知られるようになったが、EU経済圏で電子決済を行う場合は、SCAが義務付けられており、本人認証は二段階方式が必須だ。

2020年12月31日以降は同規制がさらに強化される予定で、旅行関係各社への影響は、いよいよ無視できないものとなる。

航空会社、旅行会社、ホテルのビジネスでは、自社の顧客であっても、何らかの仲介業者を経由しての取引だったり、複数のサービスをまとめたパッケージ商品の一部だけに関わっていることが多く、カード保持者の認証を二段階で行うことは、決して簡単な話ではない。こうした状況に対処するため、特に直販分での認証プロセスを支援するような「3Dセキュア2.0プロトコル」を組み入れる動きが今後、加速していくだろう。

一方、他社が介在している間接セールス分、特に法人旅行については、関係各社のより緊密な協力体制が必要だ。発券業者、テクノロジー企業、旅行サービスのサプライヤー、トラベルマネジメント会社などのコラボレーションが、問題解決のカギになる。

決済手段は爆発的に多様化する

アマデウスのトラベル・ペイメント・ガイドのデータ分析によると、2019年は、カードおよび現金による決済額を、ローカルおよびそれ以外の手段による決済額が初めて上回る年となった。

現在、旅行者向けの決済サービスは世界に300以上あり、さらに増え続けている。この爆発的なイノベーションは、まだしばらく続くと私は予測している。

ポーランドのモバイル決済会社、BLIKの年間取扱いは、2~3年前は20万件ほどだったが、今年は2億件に達する勢いだ。同じような例は、世界中にいくらでもある。

この急速な変化を甘く見ている旅行業者は、2020年、消費者が希望する方法で支払いができないというだけの理由で、ビジネス機会を逃してしまいそうだ。

アメリカといえば、カード利用が圧倒的だが、ここでもミレニアル世代では45%がもはやクレジットカードを持っていない、というPPROの消費者マーケット調査結果もある。

2020年はカードのバーチャル化が転換期に

バーチャルカードによる不正行為は減少しており、データ照合面でのメリットも大きい。いずれも何年も前から指摘されていることだが、未だに航空会社への支払いに、バーチャルカードを採用している旅行会社は少数派だ。

だが2020年には間違いなく、このトレンドがスピードアップするだろう。SCA対応やNDCの採用に伴い、大容量データの取扱いに適したバーチャルペイメントの方が支持されるようになるからだ。法人旅行の分野では、出張者本人のモバイル端末にバーチャルカードを導入してしまう手法も注目だ。

カード決済をバーチャル化することは、企業、出張者、旅行会社、サプライヤー、テクノロジー会社、そして銀行と全方位でメリットがある。2020年は、この流れが一気に加速する分岐点になるだろう。

フリクションレスな決済が現実のものに

私は楽観主義者なので、多少のリスクは覚悟の上で、こう断言する。2020年には、旅行ブランドのうち、少なくとも片手で数えられるぐらいが「フリクションレス」と表現するのに相応しい決済方法を取り入れる。

“摩擦がない”支払いサービスと呼べる条件について、私の考えを紹介してみよう。自分で支払い方法を選べること、クリック数は2~3回、できればゼロ回で完了できること、利用デバイスも自分で選べること、為替の両替レートに透明性があること、リアルタイムで不正チェックが可能で、しかも余計な時間がかからないこと。

そしてとても重要なことは、自宅で予約している時でも、空港でラウンジ利用料を払うときでも、旅行に関するあらゆる場面で、こうした決済が可能であることだ。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」に掲載された英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:The big travel payment trends coming in 2020


著者:ジェレミー・ダイボール氏、アマデウス 決済業務担当責任者

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