LINEは2020年1月15日、ベンチャーリパブリックと共同運営する旅行比較・情報メディア「LINEトラベルjp」の事業者向け説明会を開催し、トラベル事業のこれまでの取り組みと今後の戦略を発表した。
今回発表した戦略は、クライアント企業との連携による新たなIDマーケティングの推進。また、LINE台湾とLINEタイの担当者のプレゼンも行ない、グローバル連携を強化し、インバウンドに取り組む姿勢も強調した。
LINEトラベルjpは2018年6月のプレローンチ後、ベンチャーリパブリックが運営してきたサービス(ウェブ版)とのブランド統合を行ない、2019年1月に全カテゴリでの連携を終えてフルサービスで開始。昨秋にはウェブ版でもポイントバックを開始し、LINE版とウェブ版でユーザーがほぼ同じ体験ができるようになっている。
これについて、執行役員O2Oコマース事業担当の藤井英雄氏は「いままではLINE版とウェブ版のサービス統合に向けた準備期間だった」とし、「今年からはLINEらしさの追求に焦点を置く」とLINEの特徴を活かした事業展開を行なう方針を強調。そのポイントとして、韓国NAVERとの連携強化による「圧倒的な検索スピードの実現」といった技術的な改善とともに、グローバル連携やタビマエからタビナカ、タビアトまでの一気通貫のトラベル体験の実現などを上げた。
なお、LINEトラベルjpはフルローンチから1年で、提携会社数は250社以上に拡大。LINE版の公式アカウント友だち数は2000万人(2019年12月現在)、ウェブ版の月間訪問者数は2700万(2019年9月現在)に成長した。ユーザープロフィールはLINE版とウェブ版とほぼ同様で、女性が約6割、40歳以上が65%で比較的年齢層が高い傾向がある。
また、通常のOTAにおける集客経路は、検索やSEOなど外部集客が8割を超えるが、LINEトラベルjpは内部集客が7割を占め、掲載企業からはLINEトラベルjp経由のユーザーは新規率が高いという評価を得ているという。
今までにない発想のパーソナライゼーションへ
LINEトラベルサービスチーム・マネージャーの本間洋也氏は、今年の旅行トレンドを「コネクテッドトリップ元年」と述べ、LINEもグローバルOTAと同様に「ホテルや航空券などの旅行サービスから現地のグルメ、ショッピングなどの情報まで、すべてが旅行系サービスで提供するようになる」との考えであることを説明。
ただし、実現の課題として「サービスをユーザーに実際に使ってもらうこと。単にサービスインしただけではユーザーは使ってくれない」とも述べ、「そのために大切なのは、パーソナライゼーション。その時々のユーザーの状況に最適な情報をプッシュができるかが重要なカギになる」との考えを述べた。
そこで中長期戦略の1つとして重視するのが、IDマーケティング。これまでもLINEトラベルjpでは、ユーザーがIDを持ち、ログインした状態でサービスを利用する強みを生かしたマーケティングを行なってきたが、これに加え、今後はクライアント企業との会員データの連携による新たなマーケティングも提案していく。
具体的には、クライアント企業の会員とLINEトラベルjpの会員の接点を踏まえ、適切な情報配信をしていくこと。例えばクライアント企業で箱根を予約したユーザーが、LINEトラベルjpでは海外旅行のガイド記事を多く読み、韓国旅行の検索履歴がある場合、韓国週末旅行と箱根の高級旅館の予算が似ていることから、それに近い情報をプッシュすることで、相互に潜在ユーザーの発掘が可能になるという考えだ。
また、会員ステータスもカギとして捉え、LINEで獲得した新規のライト層をパートナー企企業のロイヤリティユーザーに転換していくマーケティングにも取り組む。本間氏は「今後はこれまでの発想にないパーソナライゼーションが必要で、そこに挑戦したい。その実現のためにも各社の会員情報との連携ができれば新しい世界を作ることができる。業界内に眠っているデータとLINEのデータを組み合わせて、新しいマーケティングを創出する」と話し、来場した旅行事業者にデータ連携を呼びかけた。
「インバウンド戦略」も本格的に言及
さらに今回の説明会では、LINEが「インバウンド戦略」を示したのも特徴。月間アクティブユーザー(MAU)2100万人のLINE台湾と、4500万人のLINEタイとのグローバル連携を強化し、8200万人の日本をあわせた計1億4800万人のMAUを持つサービスとしてグローバルアライアンスを拡充することで、アウトバウンドとインバウンドに取り組んでいく考えだ。
台湾とタイの取り組みについては、それぞれ担当者が来日。すでに、LINE台湾では2018年11月28日に「LINEトラベル台湾」を開始しており、航空券と宿泊、現地体験のワンストップショッピングから旅程管理ツールも提供している。提携会社数は9社で、静岡観光協会と公式トラベルコンテンツとトラベルガイド、抽選などのキャンペーンも実施した。
LINEタイではまだトラベルサービスは提供していないが、LINEが人口の65%が使用するタイ最大のチャットアプリであり、「Life on LINE」を目指したデジタルインフラの提供のためにタイに特化したローカライズにも力を入れていることを強調。タイの旺盛な訪日旅行の推移や人気の理由、今後の見通しなどを踏まえつつ、LINEタイでのトラベルサービス開始も示唆した。