オーストラリア政府観光局は2020年2月27日、日本の旅行関係者向けのウェビナーを開催した。山火事が収束した現地からの最新情報を紹介する目的で、当初は東京、名古屋、大阪、福岡でのセミナー実施を予定していたが、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、ウェブ版セミナーに切り替えて実施したもの。
ウェビナーではリチャード・コート駐日オーストラリア大使がビデオメッセージで登場。森林火災に対する日本からの支援に謝意を示すと同時に「多くの方から、義援金の他に何かできることはないか、と聞かれるのでお答えしたい。どうぞ、引き続きオーストラリアへ、旅行や留学にいらしてください」と訴えた。
オーストラリア政府統計局(ABS)によると、2019年の訪オーストラリア日本人客数は前年比6.3%増の49万8600人となり、6年連続でのプラス成長となった。この上昇トレンドを引き続き維持するためにも、オーストラリア政府観光局では目下、昨秋から今年1月まで続いた山火事被害からの復興状況について「正確な最新情報」発信に力を入れている。
例えば、公式サイトの「山火事に関する情報」では毎日、現地の状況をアップデートして公開している。オーストラリア政府観光局でオージースペシャリスト・プログラムを担当する梅田七海氏は「SNS上に流れた山火事発生エリアの地図情報などには不正確なものも散見された。旅行関係者のみなさまには、まずオーストラリア政府観光局の公式サイトで情報を確かめてほしい」と呼びかけた。
さらに、ここ数週間で、急速に懸念が高まっている新型コロナウイルス感染拡大についても、同公式サイトで最新情報を随時更新している。
今のところ、オーストラリア国内での発症者は23人。うち15人はすでに快復しており、大きな混乱はなく、日本からオーストラリアへの旅行者に対する入国制限はないが、発熱などがある場合は検査対象となる。ただし航空各社は中国など東アジア路線を縮小しており、日本発着便では、ジェットスターがケアンズ/成田、ケアンズ/関空、ゴールドコースト/成田の3路線で、最大で週2便を5月末まで減便する。
梅田氏は「先が見通しにくい時期ではあるが、オーストラリア政府観光局では、好機を逃さず、すぐに動ける態勢を整えている」とし、2020年5月21日と6月16日にはそれぞれ大阪と東京で例年通り、オージー・スペシャリスト・ナイトを開催することも決定した。
主要観光エリアに山火事被害の影響はなし
過去最大規模の山火事被害に見舞われたオーストラリアだが、降雨により、2月初めには火災は制圧された。2月27日現在、山火事で焼失した地域は、オーストラリア国土の3%ほどで、シドニー、メルボルンなど主要観光都市は煙害もなく、通常通りとなっている。またケアンズやウルル、パースなどでは、そもそも山火事による被害は出ておらず、平常通りの滞在が楽しめる。
ただし、まだ影響が残っているエリアも一部ある。南オーストラリア州カンガルー島では、島の西側に広がるフリンダースチェース国立公園などが閉鎖中。アデレードから同島への航空便を運航していたリージョナル・エクスプレス(REX)は運航をストップしているが、カンタス航空の地方路線、カンタスリンクが増便しているほか、フェリーのシーリンクも通常通り運航している。ホテルが多い島の東側にある観光地、シールズベイやペネショー、キングスコートは平常通り。
ニューサウスウェールズ州では、被害が大きかったスノーウィーマウンテンなど、一部地域で道路が閉鎖しているが、シドニーやブルーマウンテンズなど、日本人客が多く訪れる主要観光地は、「煙害もなく青空が広がり、通常通りの絶景が楽しめる」(オーストラリア政府観光局)。2月23日まで道路が閉鎖していたジェノラン・ケーブの鍾乳洞群も、現在はアクセス可能となり、地底湖や水晶の輝く幻想的な景色が鑑賞できる。
シドニー中心部では、昨年12月、サーキュラーキーからランドウィックまで結ぶシドニーライトレールが開通し、以前よりもあちこち散策できるようになった。2020年5月22日からは予定通り、ビビッドシドニーが開催される。
クイーンズランド州では、昨秋、ヒンターランドなどで火災が起きたが、11月末には収束。サーファースパラダイスでは、例年通りに大晦日の花火大会や今年2月のサンドサファリ(砂の彫刻祭)を開催。「1月には日本から3100人の大型インセンティブツアーも受け入れ、ゴンドワナ多雨林やテーマパークなどを楽しんでいただいた」(同州政府観光局・柴田正三マーケティング部長)。さらに7月には、ブリスベン空港の第二滑走路が供用開始を控えている。
ビクトリア州では、メルボルンから300~450kmに位置する州東部、ギプスランド地域で火災被害が大きく、現在も道路などが一部、閉鎖している。しかし「メルボルン、ヤラバレー、グレートオーシャンロードなど観光客に人気のエリアは終始、まったく影響はなかった」と同州政府観光局の高森健司日本・韓国局長は指摘。今年3月29日からはカンタス航空のメルボルン直行便が羽田発着になり、日本各地からの乗り継ぎが便利になると期待している。
被害のなかったノーザンテリトリーについて、同政府観光局の福田直美トラベルトレードマーケティングマネジャーは、開催期間が延長になった人気のインスタレーション・アート「フィールドオブライト」や星空を鑑賞するツアー、ウルルから至近距離で楽しむBBQなど、新しく登場したアクティビティを紹介した。
ウェビナーでは他にも、アデレードにあるジュリーク・ファームでのオーガニック・コスメ製造見学、タスマニア島の原生林を走るアプト式蒸気機関車「ウィルダネス・レイルウェイ」など、最近、注目が集まっているオーストラリア各地の観光資源の数々について、画像などを交えながら最新情報を紹介した。