オンライントラベルの世界が変わりつつあるなか、グーグルが欧米を中心に展開中のバケーションレンタル(民泊物件)検索サービス「グーグル・バケーション・レンタル」でも変化が起きている。ブッキング・ホールディングスが出戻り、エアビーアンドビーが離脱した。
グーグルの旅行ページ内で独立した分野として掲載されている「グーグル・バケーション・レンタル」では、OTAや施設管理会社が販売しているバケーション・レンタル施設の価格、クチコミ、コンテンツ情報などが掲載されている。
グーグルがこのサービスを立ち上げたのは2019年初めのこと。立ち上げ後数ヶ月は、ブッキング・ドットコムの関連会社アゴダが参加していた一方、エアビーはこのサービスに加わらなかった。
しかし、同年10月には、アゴダが抜け、エアビーが参加。ところが、現在その状況はまた変化している。アゴダが出戻り、エアビーは理性的判断で離脱したのだ。
入れ代わり立ち代わりの背景には何が
グーグルがバケーション・レンタルに力を入れてきた背景には、フライト、ホテル、ツアー、アクティビティ、旅行先情報、クチコミ、旅程管理など旅行関連ビジネスの足場を固める狙いがある。
参画企業は、グーグル・バケーション・レンタルへの参加の効果を測ってきたが、ラインアップが代わる背景にはいくつかの要因がある。
エアビーは、グーグルの広告から外れ、数カ月間一般的な販売を試してきた。それは、広告に頼らなくても、エクスペディアやブッキング・ドットコムといったライバルに対して、競争力を持っていることを示すためだ。
エアビーがグーグル・バケーション・レンタルを避けているのは、皮肉にも資格のある企業どこでもは無料でそれに参画できるところにある。しかし、広告、無料に関わらず、エアビーもライバル会社も、消費者がバケーション・レンタルを探すとき、まずグーグルに頼る習慣を望むのだろうか。
アゴダは昨年、自社サイトでの直接予約を増やしたいという考えから、グーグル・バケーション・レンタルを抜けたが、その間、新しいCMOが就任したことで、ブッキング・ドットコムの戦略は明らかに変化した。新CMOのArjan Dijk氏は、グーグルであれ、テレビであれ、広告展開は最も効率のいい投資リターンであり、その他の恩恵も大きいとの考えを示したのだ。
グーグル・バケーション・レンタルには、ブッキング・ドットコムのほかに、バーボ(旧ホームアウェイ)、トリップアドバイザー、HolidayLettings、Vacasa、RedAwning.com、Rentals United、Turnkey Vacation Rentals、Casamundo.com、Futurestayなどが名を連ね、自社のコンテンツと価格を掲示している。
今のところ、グーグル・バケーション・レンタルへの掲載は無料のため、投資リターンは比較的大きいと考えられている。
ここに、グーグル・バケーション・レンタルとグーグル・ホテルとの違いを示してみる。グーグル・バケーション・レンタルでは、下記の写真の前段が、1施設ごとに1社の表示で掲載は無料。後段は広告による価格比較で、おそらく十数社のリスティングが表示される。
グーグル・ホテルでは、たとえば、ロサンゼルスのJWマリオットの場合、自社サイト上の部屋ごとの価格を表示したうえで、OTA十数社の価格とリンク先を掲載している。
グーグルはさまざま旅行商品を掲載するようになったが、広告主として考えるべきことは、それがトラフィックや予約の増加にどれほど有益かどうか、あるいはグーグルに巨大な王国になりうる鍵を渡すべきかどうかだろう。
※この記事は、米・観光専門ニュースメディア「スキフト(skift)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいてトラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
オリジナル記事:Booking Is In, Airbnb Is Out of Google Vacation Rentals
著者: デニス・シャール(Dennis Schaal)、Skift