タビナカで加速するタッチレス(非接触)技術、コロナ禍で進むデジタル革命の新展開、世界の事例【外電】

近年、ツアー&アクティビティは、旅行業の中で、最も成長著しい分野となっていた。

過去10年ほど、あるいはもっと前から、流通やサービス提供に役立つ技術革新がどんどん進んできた。また投資家からも大きく注目されるようになり、旅行業の既存大手各社も、タビナカは成長分野だと認識するようになった。

そこに冷や水を浴びせたのがパンデミックだ。

ツアー&アクティビティ利用客は激減し、ほぼゼロに近い。閉鎖や休眠状態に陥っているところは多いが、バーチャルツアーを始めたり、営業再開に必要な感染防止策について調べるなど、迅速に対応するところもあった。

こうして状況に適応しようと動いたツアー&アクティビティ事業者には、混雑を避けたり、地元で楽しめることを探している消費者からの需要が集まっているようだ。

例えばQuesto社では、セルフガイドツアーの催行都市を以前よりも増やしており、最近ではロンドン・タクシーツアーズ社との提携を発表した。

しかしパンデミックがツアー&アクティビティ分野にもたらした最大の変化は、ますます加速するテクノロジー面での新展開と言えるだろう。

加速するトレンド

ツアー&アクティビティ事業のチャネルマネジメントやデジタル発券サービスを手掛けるRedeam社CEO(最高経営責任者)、メラニー・ミーダー氏は、コンタクトレス(非接触型)ソリューションを求める需要が大幅に増えたと話す。

ミーダー氏によると、そもそも古くなっていた旅行分野のテクノロジーを見直し、アップデートする動きに、パンデミックが「火をつけた」。コロナ以前から、消費者の間で高まっていたニーズに応えることにもつながっている。

「利用客に対し、紙のバウチャーを印刷し、他の人と一緒に列に並び、それからバウチャーを係員に渡して有効かどうかチェックしてもらい、入り口のゲートで機械が読み取るチケットに交換するようお願いする。こんなやり方は、コロナ禍の世の中では受け入れられない」(同氏)。

ツアー&アクティビティでのチェックイン方法は今後、さらに洗練されて、人間の係員の出番は少なくなり、キオスク端末などで発券やゲート開閉ができるようになるとミーダー氏は見ている。

その他にも、便利なテクノロジーがタビナカの色々な場面で活躍するようになると同氏は指摘。アトラクション施設内での追加サービス販売や、デジタル決済ソリューションの導入が急速に進むと予測している。

現状に即したオペレーション手法への移行が早いところには、やはり大型アトラクション企業が多い。

その一つ、ディスニーパークス&リゾーツでは、収容人数の縮小に対応したシステムを導入する必要があった。チケットを購入した来場客には、どのパークをいつ訪問する予定か、明示するよう求めている。

また各パークが営業再開する前の6月から、接触なしでセキュリティチェックや荷物検査ができるテクノロジーのテスト運用を開始。飲食メニューでは、QRコードを使って確認する仕組みを取り入れ、コンタクトレスでの営業が実現した。

資金や人員数に余裕がある大手企業の方が、こうした対策を取り入れやすいのは事実だが、中小規模のアトラクション施設や体験サービスにも参考になる部分はある。

ミーダー氏の言葉を借りるなら、「ハワイでカヤック2隻でビジネスをしている人」や、同じような小規模事業者の場合、デジタル世界でも利用客から自分を見つけてもらえるようにすること、ネット経由で簡単に予約できるようにするだけで充分だ。

もう少し規模が大きいところ、例えば博物館やギャラリー、お城、歴史建造物などの場合は、こうした施設に特化したソリューションを提供しているテクノロジー系スタートアップや大手企業が頼りになる。いくつか例を挙げよう。

Divento社では、以前からある同社のデジタル予約システムを改良し、時間制で予約を受け付けるタイムスロット・システムを提供。歴史建造物や博物館が、来場者の受け入れを再開する際に役立てている。

アトラクション施設内で便利に使えるものもある。イベント会場向けソリューションを手掛けるRealife Tech社(旧LiveStyled)では6月末、新たに720万ドルの資金調達に成功。目指すのはイベントの安全確保だ。同社のモバイル・アプリは、イベント参加中のユーザーに会場内で役立つ情報を提供するものだが、これを発展させて、例えば混雑しているエリアを通知するなど、感染対策にも活かしたい考えだ。

一方、Wishtrip社では、アトラクション施設やパークがリモートで来場客を管理する機能をアプリ内に組み込み、営業再開をサポートしている。例えば施設スタッフと来場客のチャット、園内の人の分布状況が把握できるマッピング・システム、混雑した場所や、比較的、空いているエリアを知らせるプッシュ通知などを搭載した。

同じような機能は、Data Duopoly社でも開発しており、アトラクション施設内にいる来場者がソーシャルディスタンスを保ち、過剰な混雑が起きないようにするのに役立っている。同社のXplor-ITテクノロジーは、こうした一連のやりとりを、面白くて、ゲーム感覚で楽しめるものにしてくれる。

娯楽の要素は重要だ。せっかく訪れた来場客に、四六時中、ウイルスのことばかり注意するような状況は避けたいところだ。

楽しい場所であり続けるために

Connect&Go共同創業者のアンソニー・パレルモ氏は、現状について、ヘルメットを強要されることで、常にリスクが頭から離れない様子に喩える。だがアトラクション施設というのは、そもそも楽しい時間を過ごすために訪れる場所だ。これを損なうことなく、安全や安心も徹底するためには、コンタクトレス・テクノロジーが非常に重要になってくると指摘する。

「信頼を取り戻すこと、これが第一段階。でもその次に、以前と同じように楽しいところにする必要がある」(同氏)。

同社では、手首に巻くリストバンドなどのウェアラブル端末に、ラジオ周波数を識別する機能を搭載。これで支払いやチケットの払い戻しができるほか、会員向けサービスやゲーム要素も楽しめるようにした。

パレルモ氏によると、このリストバンドには、来場客が購入したパッケージ商品情報を入れているほか、LEDライトや(皮膚への振動など)触覚技術も組み込んであるので、来場者の動きをトラッキングし、人との距離が近ければアラート通知を出すことができる。

この発展形として、チケットやモバイル財布、パスポートなど、あらゆる機能をすべてパッケージ化し、一つのウェアラブル端末や携帯電話に搭載することを考えている。

ツアー&アクティビティ事業の中には、ほぼすべての機能をデジタル化できるようになったものもあると言う専門家もある。

20年前は、人間が現地ツアーなどの商品を販売し、サービスを提供するのも人間だった。だが技術革新により、販売業務はデジタル化へ。そして今や、サービスの提供もデジタル化されようとしている。

こう話すのは、自動運転車両での観光ツアーを催行するベンチャー企業、Autoura社のCEO、アレックス・ベインブリッジ氏だ。

自動運転車両は3~4年以内に実用化される見込みで、そうなると、人間が案内するのは、高額ツアーのみになるというのが同氏の予想だ。

ベインブリッジ氏の最終目標は、無人車両に乗って楽しむ無人の市内観光ツアーを実現することだ。同社では新しい技術モデルが開発される度に、自社の観光案内ボット「サーラ」を使って、テストを繰り返してきた。タクシーで市内観光するツアーから、旅行会社が自社ブランドを冠して利用できるものなど様々だ。

ツアーをデジタル催行できるようになるメリットは多いが、Autoura社では独自の工夫も凝らしている。

まず、他の人との物理的な距離を保つことができる上、各個人の嗜好に合わせた内容にカスタマイズもできる。

例えば使用する言語や食事制限、他にも色々なことを自分仕様に変更できる。AIを使い、インタラクティブなやり取りもできるようにし、利用客の返事によって、仕様変更もする。

ツアー内容についても、今までよりずっとフレキシブルにできるので、旅行者が起きている時間帯ならいつでも対応できると同氏。

現在、平均的な半日ツアーの所要時間は最大4時間だが、自動運転車両ツアーならば、丸一日を使い、途中で飲食店に立ち寄ったり、ローカル文化体験を組み込むなど、多彩なアレンジが可能だ。

「旅行先で利用する有料の体験プログラムは、1日1回が平均的。だが(起きている)15時間あれば、もっと色々なことができるようになる。デジタル催行なので、マージナルコスト(限界費用)が増える心配もない」(同氏)。

未来は誰にも分からないが、自動車メーカー各社が自動運転技術に巨額を投じているのは周知の通り。近い将来、こうした新しい乗り物が、ツアーの在り方に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。

※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営するニュースメディア「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。

オリジナル記事:Touchless tech: COVID has accelerated the digital evolution in tours and activities

著者: リンダ・フォックス

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