世界中で渡航制限とテレワーク導入が拡がった2020年。日本でも、出張して海外の取引先や顧客に会う代わりに、リモート環境で商談や会議を行う企業が増加した。海外での大規模な商談会もオンライン化が進み、日本にいながらにして海外に情報発信することが日常になりつつあるビジネスパーソンも多いことだろう。
こうしたビジネスのデジタル化が進む中、海外渡航者向けWi-Fiルーターレンタルサービス「グローバルWiFi」を提供するビジョン社が2020年10月、オンライン商談・会議、IR活動などのビジネスシーンで通訳・動画吹替などを行う新事業「通訳吹替.com」を立ち上げた。同社にとって、新しい領域へのチャレンジとなる事業だが、すでに受注実績もあるという。責任者である海外戦略事業部次長の寺沢涼氏に、サービスの特徴や活用事例、今後の展望を聞いた。
新時代に求められる外国語支援サービス
コロナ禍によってオンライン会議ツールが一気に普及したことで、収束後も出張需要は減少するとの見方がある。ビジョンでは、これまで「グローバルWiFi for Biz」で海外出張をする法人企業向けサポートをしてきたが、寺沢氏は、「出張が減るというより、効率化が進むことはビジネスにおいては必然だと考えております。オンライン化するメリットが実感され、スタンダードになっていくと想定しています」と、新たなサービスの必要性を話す。こうした時代の変化を見据え、言語の壁を解決する翻訳支援サービスとして開始したのが「通訳吹替.com」だ。現在、27か国語に対応している。
提供するサービスは、主に以下の3種類。
1. 同時・逐次通訳
通訳者がリモートで会議や商談に参加するオンライン形式と、リアルでの会議や商談の場に同席して通訳するオンサイト形式の手配が可能。リアルでの会議や商談に、通訳者だけがオンラインで参加することも可能だ。先日、開催された東京ニュービジネス協議会主催のセミナーで登壇した、台湾のIT担当大臣オードリー・タン氏のオンライン同時通訳サービス業務も担当した。
2. 動画吹替・字幕
日本語から外国語、またはその逆の音声吹替・字幕サービス。発注元が制作した動画に、音声の吹替や字幕を編集して入れ込む。特に海外投資家向け決算説明会や新規事業プレゼン動画などでの利用を見込んでおり、すでに大手企業を中心に順調に受注をしているサービスだ。
上場企業であるビジョンでは海外投資家との面談を年間100件ほど行っているが、四半期決算動画で英語吹替版を公開したところ、海外投資家からの引き合いが大幅に増加。この手ごたえに自信を持ち、事業化を決断した。動画吹替サービスを、ビジネスシーンに特化して提供するサービスは珍しいという。
吹替(日本→英語)動画サンプル:ビジョン決算ダイジェスト版
3. 文書の翻訳
パワーポイント資料や決算説明、海外向けの提案書など、ビジネス向けのテキスト翻訳。
高品質で利用しやすい独自のサービス設計に
ビジョンが通訳・翻訳サービスを手掛けるのは今回が初めて。ノウハウや様々な言語の通訳者の確保は、クラウド通訳サービスを展開するスタートアップ企業との提携で実現した。これをベースにビジョンの強みを生かし、オリジナルのサービスで提供する。
特徴の一つは、クオリティを重視したサービス設計。ビジョンの社員の15%ほどを占める外国人スタッフを活かす。例えば、一般的に振れ幅が大きいといわれる英語翻訳は、提携先の通訳会社に登録する約1000人の通訳のうち、トップ50人程度のAクラス以上の人だけを、ビジョンの外国人スタッフがテストをして厳選。そのうえで、納品された翻訳文章を、外国人スタッフがネイティブチェックする二重の確認体制をとる。動画吹替は、ネイティブチェックを含む料金設定としている。
また、通訳手配の料金設定では、クオリティを重視するため安価ではないが、より手軽に利用しやすい料金体系を考えた。一般的な通訳業務の場合、手配時間は1日単位や最低でも半日(4時間~)の場合が多いが、ビジョンでは最低1時間からの利用が可能。特に1時間程度となることが多い海外投資家向けのIR面談などで、「この料金体系なら使い勝手がよい」と好評だという。
「伝わる」コミュニケーションに価値がある
新規事業の通訳吹替.comだが、販路については「法人向けのグローバルWiFi for Bizや、同社の基盤である情報通信サービス事業を通し、海外市場とのかかわりが深い顧客企業を多く持つ当社の強みが生きる」(寺沢氏)と自信を見せる。自社でのBtoB直販に加え、代理店契約も見込む。代理店契約では、すでに動画吹替サービスで、IR関係のサポート業務を行う2社と提携し、海外進出に興味のある両社の顧客企業へのサービス紹介を開始している。
もちろん、旅行会社をはじめ旅行・観光業界の利用や代理店契約も期待する。例えばオンライン通訳では、アジアに複数拠点を展開する企業の社長から、こんな相談があった。「毎年、自ら海外拠点に赴き、理念や経営方針などを話していたが、今年はコロナ禍で渡航が難しい。そこでオンラインミーティング形式とし、オンライン通訳サービスを使って、自分の想いを直接、現地社員に語りかけたい」。
この相談主が毎年、出張の時間を捻出していたのは「直接、話した方が、自分の思いをしっかり伝えられる」との思いがあるから。今回はリモートになるが、社長がその場で話したことが伝わることで、文書を配るよりも共感や理解が深まればと考えた。海外出張をオンラインに切り替えながらも言語のサポートが必要な需要は、旅行会社の法人顧客の中にも多いはずだ。
寺沢氏は「AI翻訳を簡単に利用できる時代になりましたが、まだまだ完璧ではありません。ましてや経営者の理念や微妙なニュアンスとなると、無機質な通訳や翻訳ではなく、人が介在した方が断然、伝わりやすいのです」と説明。表情や仕草など、非言語コミュニケーションに関与する臨場感を大切にすべきだと話す。
さらに、リアルの海外出張で、会議や商談の時だけピンポイントでオンライン通訳を手配するケースもあり得る。グローバルWiFiと通訳吹替.comを組み合わせることで、旅行会社は顧客企業に対し、海外渡航時はもちろん、出張に行かないときにもサポートを提供する可能性があるのだ。
このほか、旅行・観光関係では地方自治体やDMOなどの利用を見込む。寺沢氏は以前、訪日外国人向けのWiFiルーターレンタル事業に携わっていた時に、訪日客の誘致に力を入れる地方自治体から、観光案内所の看板やPR動画などを翻訳する仕事を引き受けたことがあった。翻訳サービスを本格的にスタートした今、「訪日客向けの情報や動画制作時のサポートも増やしたい」と意気込む。
特にビジョンでは、訪日市場でシェアの大きい中国や韓国、台湾などに海外拠点があるので、「韓国語や中国語の翻訳サービスも、現地の人にとって違和感のない、質の高い内容に仕上がります」とアピールする。
時代に即したオンラインサポートを追求
寺沢氏は大手企業に加えて、スタートアップや海外への販路拡大を検討している企業へのアプローチにも力を入れる方針だ。プロダクトに海外市場からのニーズがあっても、言葉が壁になっているケースや、海外向けIR活動に興味があっても、英語資料を作成するマンパワーが足りず、二の足を踏んでいるケースは少なくない。寺沢氏はこうした企業にこそ、手軽にスポット利用できる通訳吹替.comの各種サービスを活用してほしいと考えている。
さらに今後は、通訳吹替.comを利用したユーザー企業向けのフォローアップ・サービスを拡充することも検討している。海外とのビジネスが動き出せば、その先のコミュニケーションへの支援も必要になる。こうした業務もフォローできるよう、追加支援をパッケージ化した定額制サービス「海外進出応援サブスクリプション」について現在、詳細を詰めているところだ。
もちろん、画面越しのミーティングは、リアル対面の商談に勝ることはない。「(オンラインで)商談が進み、現地に渡航する時が来たら、是非グローバルWiFiを利用していただきたい。日本国内における海外対応を、通訳吹替.comが支援していければと考えております」と、寺沢氏はニューノーマル時代に即した同社のサポート体制をアピールする。
顧客の課題解決はもちろん、その先を“見通し”、社会に貢献する--。ビジョンは、社名に込めたこの想いで、時代に応じた新事業を推し進めている。
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対象サービス:通訳吹替.com
問い合わせ先:メールアドレス:info@tsuyaku-fukikae.com、TEL:0120-966-719
記事:トラベルボイス企画部