政府は2021年1月7日、東京、神奈川、埼玉、千葉の1都3県を対象に、新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言を再発令すると正式発表した。期間は1月8日から2月7日までの1カ月間。宣言発出中はGoToトラベルの停止は全国で継続される。また、緊急事態宣言の解除の目安は、ステージ4からの脱却が必要としている。
イベントは上限5000人を要請
1月7日会見に臨んだ菅義偉首相は、「昨年11月以来、GoToトラベルを順次停止し、飲食店への営業短縮要請をするなか、営業短縮に早期に取り組んだ地域は効果が表れ感染者を抑えている」と説明。そのうえで、「今の感染の中心は1都3県で、本日、東京都の新たな感染者が2400人を上回るなど大変な危機感を持っている。何としてもこれ以上の感染拡大を食い止め、減少傾向に転じさせるために緊急事態宣言を決断した」などと発令の意義を述べた。なお、大阪府、愛知県などへの再発令は「現時点ではそういう状況にない」とした。
具体的には、飲食店に20時までの営業時間短縮を要請。酒類提供は11~19時に限定する。20時以降は不要不急の外出自粛の徹底を呼びかける。スポーツ観戦、コンサートといったイベントについては、入場者数を上限5000人、収容率50%以下に制限し、場内の飲食も控えるよう要請。20時までの営業短縮も働きかける。さらに、テレワークを通じて職場への出勤者を7割削減する目標も掲げた。
宣言解除の目安はステージ4の脱却
菅首相は1月4日付の会見で、1月11日まで全国一斉で一時停止している「GoToトラベル」について、「緊急事態宣言を再発令した場合、再開は難しい」と述べていた。1月7日の会見に同席した新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は、「1カ月の間で感染を下火にして『ステージ3』に近づきたい」とし、緊急事態宣言の解除には、4段階の感染状況で最も深刻な「ステージ4」からの脱却が目安との認識を示した。なお、1月7日午後には、西村康稔経済再生担当相が解除の目安の一例として、東京都の場合は1日あたりの新規感染者数が500人程度まで下がることを挙げている。
緊急事態宣言の発令は2020年4月7日~5月25日以来、2度目。前回は旅行店舗、テーマパークの大半が臨時休業したほか、ホテル、MICE施設の臨時休館も相次いだ。今回は営業短縮の要請が飲食店、イベント関連施設に限られており、緊急事態宣言時に事業の継続が求められる事業者の中には、国民の安定的な生活の確保のためとして、ホテル、宿泊事業者も含まれている。
一方で、すでに東京ディズニーランドと東京ディズニーシーは、1月8日から1月31日の期間、閉園時間を21時から20時に変更することを発表している。
東京オリンピック開催意欲は変わらず
また、菅首相は、今年夏に開催が予定されている東京オリンピック・パラリンピックについて、「まず、新型ウイルス克服に全力を尽くす。そのうえで、感染症対策を徹底し、安全・安心な大会を実現したい」と述べ、2020年9月末の国連演説で「人類が疫病に打ち勝った証しとして東京オリンピック・パラリンピック競技大会を開催する決意だ」と表明した考えに変わりがない意思をあらためて強調した。世論調査などで国民の間から開催に懐疑的な声が少なくないことに対しては、「世界でワクチン接種が始まり、日本でも2月下旬から開始に向け動いている。こうしたことに対応していくことで、国民の雰囲気も変わっていくのではないか」との見方を示した。