MaaSで移動需要の変容は可能か? 新発想ライドシェアや次世代モビリティの事例から、事業者の取り組みを聞いた

WILLER(ウィラー)が主催した「MaaS Meeting 2021」。スマートモビリティ・チャレンジ・シンポジウムでは、トークセッションとして、オムロン・ソーシアルソリューションズ(OSS)事業開発統轄本部コミュニティソリューション事業本部NEXT事業統括部 プロジェクトリーダーの横田美希氏、神姫バス次世代モビリティ推進室部長の須和憲和氏、VILLAGE INC代表の橋村和徳氏が移動需要の変容を促す仕掛けについて議論を展開した。

オムロン、「感謝」をトリガーに新発想ライドシェア

オムロンの横田氏は、京都府舞鶴市で進めている公共交通モデル「meemo(ミーモ)」の社会実装について紹介した。meemoとは、住民同士の送迎と公共交通機関を組み合わせた移動を促すMaaSアプリ。横田氏はその基本コンセプトを「共生」とし、「マッチングによってお互い様社会の実現を目指す」と説明した。

地域が交通インフラで抱える課題のひとつがドライバー不足。meemoでは、送迎で困りごとを抱えている住民に対して、利用者と担い手(ドライバー)をマッチングする。バスやタクシーだけでなく、住民ボランティアが担い手になるのが特徴だ。横田氏は「人を動かし、人と会う楽しみを生み、人がもっと触れ合う機会を創出するプラットフォーム」と話し、住民、自治体、交通事業者が三方良しのモデルを構築したと自信を示す。

いわゆるライドシェアだが、横田氏は「他人を評価するレビューを基本とするウーバーの仕組みは日本ではなじまない。meemoは、『感謝』をトリガーとして、地域の信頼を構築し、共助体験を拡大させていく」と話した。

Meemo導入にあたっては、参画企業の日本交通が住民ドライバー向けの安全運転講習会を実施し、オムロンはアプリ操作の体験会を開催したうえで、2020年7月から3ヶ月間実証を実施した。横田氏は、実証を通じて、「人の行動変容を促すことは不可能ではない」と感じたという。

神姫バス、次世代モビリティで都市計画

神姫バスの須和氏は、兵庫県西播磨の播磨科学公園都市で実施されている「西播磨MaaS実証実験」について紹介した。地域住民や都市来訪者の移動に対する利便性の向上を目的として、2021年1月18日から31日の期間、超小型EVや自動運転車などの次世代モビリティ、自動走行カート、シェアリング電動キックボードなどを組み合わせた実証実験を近畿経済産業局と共同で実施した。

実証実験後の利用者からは、「登録・予約が面倒」「乗車場が少ない」「利用範囲が限られる」「周辺に魅力的な施設がない」などの声が寄せられたことから、須和氏は今後10年で、交通結節点を設け、そこを拠点に都市内移動手段を整備し、利用者の利便性向上のために一括で検索・予約・決済を行えるようにしていくと説明。さらに、都市計画の観点から、商業施設や医療施設との連携も生活者には欠かせないという考えも示した。

(左から)モデレーターの計量計画研究所理事兼企画戦略部長の牧村和彦氏、オムロン横田美希氏、神姫バス須和憲和氏、VILLAGE INC橋村和徳氏MaaSでの事業化は難しいとの本音も

全国各地で遊休資産をキャンプフィールドとして再生する事業を展開しているVILLAGE INCの橋村氏は、「両社のようなMaaSの取り組みは、エンタメ性を加えれば、観光客誘致にもつながる」としたうえで、事業性について疑問を投げかけた。

これに対して、オムロンの横田氏は「meemo単独でのビジネス化は難しい。参画事業者でレベニューシェアをしながら、長期にわたって持続していくことが必要」との考えを示した。また、神姫バスの須和氏も事業化の難しさを認めながら、「EV、自動運転などともに太陽光発電なども組み込み、地域全体で循環型経済を目指す必要性」を主張した。

また、須和氏は、同じ公園でも企業間で実証実験に対する温度差があったとしたうえで、「企業の地域法人コミュニティーを形成できれば、地域MaaSにもっと役立つのではないか」と付け加えた。

トラベルジャーナリスト 山田友樹

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