豪クィーンズランド州、航空路線の復活で日本市場に熱視線、コロナ禍に進んだインフラ開発、進化した観光資源でアピール強化

オーストラリア・クィーンズランド州は、2022年7月21日にジェットスターが2年半ぶりに成田/ケアンズ線の運航を再開したことを受けて、日本人旅行者誘致のプロモーションを本格的に再開する。7月20日には大阪、21日には東京でセミナーを開催。クイーンズランド州政府観光局、ブリスベン経済開発局、ゴールドコースト観光局、ケアンズ観光局が旅行業界向けに最新情報を提供した。

日本と関係がますます深まるクイーンズランド州

クイーンズランド州政府観光局は、オーストラリア政府による入国制限の解除を受けて、安全な旅行を訴求する「Good to Go」プログラムを展開し、観光客の再誘致を進めている。同局CEOのリアン・コディントン氏は、ジェットスターの運航が再開されたことから、日本市場での取り組みを強化していく考えを示した。

オーストラリアへの日本人渡航者数は、2014年から5年連続で前年比増となり、2019年には約50万人に達していた。そのうち、日本人に人気のケアンズやゴールドコーストがあるクイーンズランド州へは、そのほぼ半数となる約22万人が訪れた。

コディントン氏は、インバウンド市場が停まっていた2年半で、現地体験の拡充を進め、100種類を超える新しいアクティビティが創出されたと紹介。「コロナ禍で観光資源は進化した」と強調した。

また、インバウンド市場の復活に向けて、国際航空路線の拡充を進める方針も明らかにした。クイーンズランド州政府は2025年までに航空路線誘致に向けて100億円の投資を決定。この予算で同州4つの国際空港で、日本路線を含む国際線の再導入や誘致に取り組む。

日本市場への期待を話すクイーンズランド州政府観光局コディントンCEO

セミナーの後に行われた記者会見で、クイーンズランド州政府駐日事務所代表の安達健氏は、「日本と同州との交流は、観光や教育に加えて、さまざまなビジネスに拡大しており、関係はさらに深まっている」と説明。現在日本は同州にとって第一位の輸出国となっているという。

農業分野では、オーストラリアから日本へのオージービーフの50%は同州から輸出され、日本とは逆の季節となることから、日本の端境期での農産物の供給も増加している。また、再生可能エネルギーを含めた資源のほか、最近では水素事業開発分野で日本企業との連携も深めている。

安達氏は、「観光や教育などの人の動きに加えて、モノの動きも活発になっていることから、貨物便や旅客機でのベリー輸送の需要も高まる」と話し、日本と同州との航空路線の拡充に期待を寄せた。

日本とクイーンズランド州とのビジネス拡大を説明するクイーンズランド州政府駐日事務所の安達氏

2032年のブリスベン五輪は観光の大きなチャンス

このほか、コディントン氏は2032年にブリスベンで開催されるオリンピック・パラリンピックに触れ、「日本からクイーンズランド州への送客はさらに高まる」と期待感を表した。

ブリスベン経済開発局CEOのジュリエット・アラバスター氏は、オリンピックを控えて、クリケット・スタジアム「The Gabba」を5万人収容のメインスタジアムに改修するなど、さまざまなインフラ整備が進められていると説明。

また、ブリスベン空港の第2滑走路が2020年7月に供用開始され、24時間運用で容量が2倍になったほか、2024年にはブリスベン・メトロが開通予定。さらに、クロスリバーレールの整備など公共交通インフラのプロジェクトも着々と進んでいるという。

加えて、中心部の再開発では、2023年半ばにIR型リゾート「クィーンズ・ワーフ」がオープン予定。ローズウッド、ドーセットなどのホテルも開業し、新たに1100室が追加されることになる。

日本人に人気のゴールドコーストとケアンズも復活へ

ジェットスターは、ケアンズ線に続いて、8月2日には成田/ゴールドコースト線を週3便で再開する。また、カンタス航空も11月には成田/ブリスベン線の再開を予定。ゴールドコースト観光局ステークホルダー&ストラテジー長のレイチェル・ハンコック氏は「日本は3番目の国際市場で非常に重要」とコメントし、航空路線の再開が日本人旅行者の回復につながるとの考えを示した。

ゴールドコースト空港では、2037年までに旅客数が現在の2倍になるとの予測から、5億豪ドル(約475億円)を投じてターミナルを拡張。ボーディングブリッジも新たに備えるほか、「リッジス・ゴールドコースト・エアポート・ホテル」も開業する。

ケアンズ観光局では、「See Great、Leave Greater (私を満たす、私が変わる)」をキャッチフレーズに日本市場でのプロモーションを強化している。2019年のケアンズへの日本人渡航者数は約11万2000人。全体の48%がパッケージツアーが占めていたが、個人旅行も年々増加し、27%を占めるまでになっている。

投資計画も進められており、すでにケアンズ空港のアップグレードは完了。コンベンションセンターの改修は今年12月に完成予定だという。さらに、ケアンズ中心部エスプラネード通りの再開発では、新しくなったダイニングエリアがオープンした。

同局セールマネージャーアジアの坂本統氏は、ケアンズのアピールポイントとして、2ヶ所の世界遺産「グレートバリアリーフ」と「クイーンズランドの湿潤熱帯地域 」のほか、オーストラリア独自のエコツーリズム認証制度を挙げた。ケアンズでは現在のところ、オーストラリアで最も多い62社182の体験が認定。「SDGsが注目される前から、エコツーリズムに取り組んできた」として、サステナブルツーリズムの訴求にも力を入れていく考えを示した。

このほか、アクティビティの充実している点も強調し、「オプショナルツアーで販売すれば、旅行会社の利益にもつながる」と提案。同局では、7月からの今年度、日本市場向けの予算が増額されたことから、コロナ禍で中断していた旅行会社とのプロモーションを再開させていきたい考えだ。

※豪ドル円換算は1豪ドル95円でトラベルボイス編集部が算出

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