グアムの観光事情を取材した、日本4都市からフライト再開、消毒液設置が定番に、新観光素材も

夏の旅行シーズンを迎え、グアム政府観光局(GVB)が日本/グアム観光就航55周年を記念した「Go Go!Guam」キャンペーンを展開するなどマーケティングを加速させている。ユナイテッド航空(UA)と日本航空(JL)が日本の複数都市からの運航再開や増便を計画するなど、環境も整いつつある。では、実際の現地の様子はどうなのだろうか。2022年6月中旬、日本の旅行会社やメディアなど50社が参加したファムツアーから最新情報をリポートする。

複数都市から就航再開、グループ旅行に期待感

夏から秋にかけての旅行シーズンを前に、8月にいよいよ日本4都市(成田、関西、名古屋、福岡)へと航空ネットワークが広がるグアム。増便によって座席供給量が増えるなど、グアム旅行を取り巻く環境は元に戻りつつある。7月に入り、パッケージツアーの商品化・販売も徐々に進んでおり、ファムツアーに参加したある関西のツアーオペレーターは、「地方都市からのグアム直行便がアドバンテージ。11月の社員旅行などグループの問い合わせが増えてきた」と手ごたえを示す。

ただ、懸念材料もある。原油高騰による燃油サーチャージの価格上昇、また日本帰国時のPCR検査の陰性証明書の提示義務だ。追加でかかる費用はもとより、現地でのPCR検査という精神的なハードルの高さを指摘する旅行業関係者の声は少なくない。

こうしたマイナス点を補うサポートの一つとしてGVBが提供しているのが、帰国前に無料でPCR検査が受けられる「フリーPCRプログラム」だ。現在、「ホテル ニッコー グアム」「ハイアット リージェンシー グアム」「パシフィック アイランド クラブ グアム」と「ザ プラザ ショッピングセンター」の4カ所に検査センターを設置。グアム衛生保健局などの協力でGVBが検査費用を負担し、旅行者がアクセスしやすいホテルなどに検査センターを設けることで、精神的な負担の軽減にも寄与している。

ホテルリノベーションや街の様子は?

リゾート地だけに、観光客の満足度を大きく左右するのがホテル選びだ。グアムではコロナ禍の約2年間でリノベーションや新たな試みを実施したホテルも少なくない。2020年7月に開業した「ザ ツバキ タワー」(客室数340室)はタモン湾を見下ろすガンビーチ沿いの高台に位置し、全室から海を一望できる。特徴のひとつが全客室にアウトドアリビングと名付けた13平米以上のバルコニーを備えていることで、「海を眺められる広いバルコニーは日本人旅行者に人気が高い」と評価した旅行会社のスタッフも少なくなかった。

各客室にバルコニーを設置、ザ ツバキ タワー

「ウェスティン リゾート グアム」は客室をリノベーションし、白色を基調としたリゾート感ある内装にしたほか、5月からはグアム初となるモバイルキーを導入した。フロントで手続きすることなくアプリを使ってチェックインでき、スマートフォンをモバイルキーとして利用できる仕組み。「デュシット ビーチリゾートグアム」は6月8日にビーチに面したバー「Tiki Bar TABU」をソフトオープン。夜は地元の人々で大いににぎわいを見せているという。

街の様子はどうか。

地元の人々にも人気のナイトマーケット(水曜夜開催)が2年ぶりに再開され、チャモロスタイルのBBQ、フード屋台、トロピカルな雰囲気のアクセサリー類が売られるなど、徐々ににぎわいを取り戻していた。もっとも、大手免税店がコロナ前の営業状況に戻っていなかったり、マイクロネシアモール内の一部店舗が閉店していたりと、「従来の状況に戻るのはこれから」という印象もあった。「航空ネットワークの復活、観光客の動向が今後の鍵を握るといえるだろう」と、大手旅行会社スタッフは期待感を語っていた。

再開されたナイトマーケット

新型コロナウイルス対策については、ホテルはもちろん、レストランの入り口付近にも消毒液が設置され、ソーシャルディスタンスを意識するよう促すポスターも目にした。だが、グアムはすでに屋内外でのマスク着用義務は解除されており、ホテル内でマスクを着用している旅行者はほとんど見かけなかった。また、ホテルスタッフのマスク着用の有無はホテルごとでその対応は異なり、朝食ビュフェについてもコロナ前と同じスタイルに戻しているホテルもあれば、スタッフがビュフェコーナーから料理を取り分けて朝食を提供するホテルもあった。

ホテルでは厳しいコロナ対策がされていると聞いてグアムにやって来たというツアーオペレーターのスタッフは、「思った以上に開放感があってコロナ前と変わらない」と、リゾート感ある雰囲気に対する好印象を口にした。

消毒液設置が定番に

チャモロ文化と伝統、内陸部ジャングルの魅力

日本人をはじめ、グアムに観光客を呼び戻すためには、魅力を掘り下げ、より高付加価値を提供できる観光素材の再構築が不可欠になる。ビーチリゾートのイメージが強いグアムだが、島の約70%はジャングルに覆われ、南国らしい豊かな自然にあふれている。今後、注目したいスポットのひとつが、タロフォフォ川が東海岸へと流れ、内陸の自然や島の文化を体感できるグアム南部だ。

タロフォフォ川のリバークルーズ

島南部のアウトドア施設「ヴァレー・オブ・ラッテ」では、チャモロ文化と湿地保護に焦点を当てたリバークルーズを提供している。モーター付きの船で渓谷を下り、古代チャモロ人の遺跡である石柱ラッテストーンや村落での生活の知恵を垣間見られる体験は、知的好奇心の強い人に響くだろう。

実際、ヤシの葉を使って皿や荷物を運ぶバスケットなどを作ったり、ヤシの実の皮の部分を使って火を起こしたり。この実はのどの渇きを潤す飲み物にもなり、食料でもある。実演とともにその場でココナッツウォーターを飲み、削ったココナッツの実を試食。ココナッツの香りがよく、思ったほど濃厚さはないが、日本で経験できない削りたての真っ白な実をその場で実食するという南国の雰囲気を味わえる。

ココナッツの皮をむく体験

南部の西海岸にセッティ湾展望台がある。うねうねとした緑の山々と赤土、その先にあるセッティ湾と青い海を見渡す眺望が特徴だ。展望台を過ぎたあたりから、車窓にはフムジョンマングロー山、そしてグアム最高峰のラムラム山(海抜約406メートル)を望むことができる。特徴的なのが尾根に並ぶ十字架群。ハイウェイ2号線沿いからでも遠望できる。セッティ湾展望台の近くにトレッキングルートの入り口があり、十字架群を見にいくことは可能。湾の方へと進めば、セッティ滝までのハイキングもできる。

現地ガイドによると、島内にはトレッキングやハイキングできるスポットが点在し、ボランティアで構成する非営利団体「グアムブーニーストンパーズ」が、古代チャモロの遺跡、山、洞窟、滝などの島の遺産を守りながらハイキングツアーを実施している。週末など限られた曜日、ガイドの案内は英語でおこなわれるため一般的な観光素材としてはハードルが高いが、自然を体験できるアクティビティのひとつとしては、グアムへの客層を広げるうえでも大きな要素といえるだろう。

島内観光やホテルの視察を通して、青い海と白い砂浜、数々のマリンスポーツ、リゾート感あふれるホテルライフは、コロナ前と変わらないグアムの最大の魅力だというのが、旅行関係者の一致した意見だった。その一方で、ツアーオペレーターのスタッフが、「島南部の内陸部などの自然を体感するトレッキングは今後、素材のひとつとして検討材料にしたい」と語っていたのも印象深い。島の文化や内陸部のジャングルでのアクティビティなどをアピールすることで、より多面的なグアムの魅力を発信できるのではないだろうか。

グアム特派 梶垣由利子

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