成長戦略の柱、地方創生の切り札である観光。なかでも旅行消費で大きな割合を占めるのが宿泊業だ。トラベルボイス編集部では、観光に関する統計をわかりやすく整理した「トラベルボイスSTATS」シリーズを公開した。
今回は「宿泊」に関する統計を宿泊施設の供給、需要、パフォーマンス、世界の宿泊施設などについて整理した。その概略をレポートする。
日本の象徴である旅館のシュリンクが顕著に
2000年度には7万4876件あった日本の「旅館・ホテル」だが、2020年度には5万703件まで減少した。20年間で32%減少したことになる。特に減少著しいのが、地域で観光客を受け入れ、日本の伝統文化の象徴ともいえる旅館だ。2000年度には6万6766件あったが、2019年度には42%減の3万8622件まで減少。客室数でみると、2010年度に初めてホテルと旅館が逆転する。2018年度には、ホテル客室90万7500室に対し、旅館は68万8342室となった。
倒産については、コロナ以前の2014年以降は年間100件以下で推移していたが、2020年は増加し、118件となった。
また、2018年6月に住宅宿泊事業法が施行し、新たな宿泊形態として民泊が登場した。2020年4月に民泊の届出件数は2万1385件となったが、コロナでインバウンドが消滅したこともあり、2022年4月には1万8053件となっている。都道府県別にみると、東京が最も多く、北海道、大阪、沖縄、福岡が続いている。
2019年は東京、大阪でシェア35%以上だった外国人客
では、日本宿泊施設の需要の推移はどうか。延べ宿泊者数は2009年以降、右肩上がりに増加を続け、2019年までの10年間で倍増となる5.96億人泊に達した。観光立国とともに伸びが著しかったのが外国人延べ宿泊者数で、2019年までの10年間で6.4倍の1.16億人泊となった。2008年には7%弱だった日本国内の延べ宿泊者数における外国人の割合は2019年には約19%まで上昇。京都、大阪、東京では35%以上になった。
残念ながら、日本人、外国人ともにコロナ禍で激減したのは周知のとおりだ。全体で2020年は2019年比で44.1%減、2021年は同年比で47%減となった。東京、千葉、京都、大阪、沖縄といった延べ宿泊者数に外国人が占める割合の大きい都道府県が全国値を上回る減少をみせた。
宿泊施設のタイプ別に延べ宿泊者数のシェアをみると、供給とともに旅館が減少している。2008年には28%だったものが、2021年には15%に減少。リゾートホテル、シティホテルも減っている。一方、増加著しいのがビジネスホテルで、2008年の34%から2021年には52%と、半数を超えるまでになっている。定員稼働率も、旅館の低さが目立っている。
売上でヒルトン抜いたエアビー
最後に、世界の宿泊統計についてもふれておきたい。欧米の主要グローバルホテルチェーンでは、ホテルの件数ベースではウィンダムが最も多くのホテルを展開。マリオット、ヒルトンが続いた。一方、客室ベースではマリオットが最も多く、約148万室を備えている。売上ではマリオットが最も高く、直近の2021年度は138億5700万ドル。Airbnb(59億9200万ドル)がヒルトン(57億8800万ドル)を凌いだのも興味深い。
そのほか、「宿泊」に関する統計を宿泊施設の供給、需要、パフォーマンスなどの観点から整理した資料は以下からダウンロードできる。