三菱UFJ銀行らが設立した観光の共創ハブ「MUIC」、大阪・関西万博の好機に、広域連携DMOと仕掛ける周遊促進の施策とは?(PR)

広域観光に携わる多くの組織や事業者が目指す、エリア内の各地域への周遊促進。観光客の来訪効果を広く行き渡らせるために欠かせない取り組みだが、実際に観光客の行動変化を促すハードルは高い。それは、京都や大阪など日本を代表する観光都市がある関西圏でも同じことだ。この大命題に目下、三菱UFJ銀行などが観光産業を主軸に設立した課題解決型のイノベーション創出拠点「MUIC Kansai」(MUIC)が取り組んでいる。

MUICが推進するプロジェクトの特徴は、観光やインバウンドの課題に着目し、関係する人や企業・団体、地域を結び付け、課題解決を図りながら収益の見込める事業化を創りあげること。2025年の大阪・関西万博に向け、広域連携DMOである関西観光本部などとともに創り上げた2つのプロジェクトについて聞いてきた。

今回のプロジェクトでは、地域にある資産とデジタルをかけあわせ、各地域を訪れるきっかけと楽しみ方を提案して、関西の観光周遊の促進に資する事業にしようとしている。

全国に共通する関西観光の課題と万博への期待

関西は、日本有数の観光地や名所が多くある地域だ。しかし、インバウンド観光の周遊促進をミッションとする関西観光本部は、「大阪や京都には多くの外国人観光客が訪れるが、そこから東京や広島など他の有名観光地に行ってしまう。構成府県である2府8県(福井県、三重県、滋賀県、京都府、大阪府、兵庫県、奈良県、和歌山県、鳥取県、徳島県)内の各地域、関西全体に観光周遊をつなげることが大きな課題」(関西観光本部 広域観光推進部長 宇井博哉氏)と話す。

MUICも「寺社仏閣や文化財を含め、観光の資産は東京と比べてもいいものがそろっている。ただ、それらの魅力に観光客が気付いていないことが多い」(MUIC マネージャー 村上弘祐氏)と、国内の旅行者に対しても各地域の認知向上は課題だと指摘する。

旅行先を調べる入り口がインターネットにシフトするなか、「関西 観光」と検索をしても、その結果には「関西観光のおすすめ10選」といった、すでに知られている観光地の情報が上位表示される。それ以外に見どころがあっても、地域をよく知らない人がその情報を入手することは意外と難しい。

だからこそ、関西の各地域は2025年の大阪・関西万博を、地域の周知・誘客の機会として期待している。関西観光本部も約半年にわたる開催で2820万人の来場を目指す万博を好機ととらえ、1泊でも多い周遊促進を図るべく、構成府県をまたぐ8つの広域観光ルートを造成。さらに「万博プラス関西観光」として、万博の来場客を関西の各地域に送り出すための旅行商品・コンテンツ造成や販売促進、タビナカサポート整備などに力を入れている。

こうした域内周遊促進の課題に向けたプロジェクトとして今回、MUICが取り組むのが、関西圏内の自治体や地域、施設を対象にした「関西広域デジタルマップ」と「デジタルアート」だ。

MUIC マネージャー 村上弘祐氏

事例1:関西広域デジタルマップ
紙のマップをデジタル化し、観光客も地域にもメリット

MUICと関西観光本部は、地図のオンラインプラットフォーム「Stroly」(ストローリー)とともに、3社共同プロジェクト「関西広域デジタルマップ」を進めている。自治体や観光協会、観光施設などの紙のマップを、その良さであるデザインやイラストのままデジタル化し、関西エリアの観光情報共通基盤としてオンライン上の広域地図に載せ、展開できるようにしたものだ。

地域の自治体や施設が作る紙マップは、地域の魅力を個性豊かに表現する情報媒体。しかし、現地に来た観光客にしか手に取ってもらえず、タビマエやタビナカでのアプローチという点では課題だった。「このままではもったいない。これをタビマエからも閲覧できるようにしよう、との考えでプロジェクトがスタートした」と村上氏は話す。

紙のマップは、単にオンライン上で閲覧できるようにするのではない。協働するストローリーはアナログのマップを位置情報と連動させる特許技術で、数々の受賞歴を誇る。同社の技術を用いることで、紙マップの味わいのあるデザインのまま、一般的なデジタルマップと同様に、利用者が自身の現在地や目的地へのルートなどを地図上で確認できるようにする。

さらに、友人など限られた人同士が各自のデバイスで、同じマップを閲覧できる機能もストローリーのサービスとして実装済み。それぞれの現在地やルートを表示しあい、チャットでリアルタイムの情報交換ができる新しい観光の楽しみ方を提案するマップとしても展開できるという。

このほか、紙マップのデジタル化によって観光客の属性別の行動データの取得・分析も可能になる。地域の自治体・観光協会や施設は本プロジェクトに参画することで、デジタルマーケティングで活用できるデータまで得られるのだ。

関西広域デジタルマップのイメージ。右は、三重県のおかげ横丁の紙マップをデジタル化したもの。これらが左の関西広域地図に乗り、他の地域やスポットとの位置関係が把握できる

本プロジェクトでは、デジタル化した各地域のマップを関西の広域地図に集約。オンライン上で広くアクセスできるようにすると同時に、万博の来場者にも訴求する。「来場者が偶然の出会いで地域を知り、ワクワクできるマップになる。新しい関西観光の世界観を生み出したい」と、関西観光本部の加藤憲司郎氏(広域観光推進部 主任調査役 地域連携プロデューサー)は意欲を示す。

そして、この紙マップのデジタル化には、大きな追加予算は不要という。「配布数や場所の調整をすれば、従来の紙マップの制作予算で賄える範囲」と、MUIC事務局長の桂寧志氏は説明する。各地域に声掛けをする関西観光本部も、「デジタルマップ化が現在の紙マップの運用の非効率な部分を見直すきっかけになり、コストダウンにつながった地域もあった」(宇井氏)と話す。

現在、ベータ版として12市町村の5つの紙マップをデジタル化し、広域地図の公開を開始した。関西観光本部の構成府県には277市町村あり、村上氏は「まずは今年度中に100市町村の掲載を目指す」と意気込む。「デジタルの広域地図の良さは、接点が増えること。広域から狭域へ、またその逆へと情報の受け渡しができる」と、参画者が多いほど周遊促進効果が図れることをアピールする。

左から)MUICマネージャーの村上弘祐氏、MUIC事務局長の桂寧志氏、関西観光本部 広域観光推進部長の宇井博哉氏、関西観光本部の加藤憲司郎氏(広域観光推進部 主任調査役 地域連携プロデューサー)

事例2:デジタルアートイベント
夜観光のイベント創出、企業版ふるさと納税や協賛金で運営へ

MUICがもう1つ仕掛けるのは、地域の観光スポットを舞台にした「デジタルアートイベント」の創出。近年、アートとイルミネーション、テックを掛けあわせたデジタルアートイベントが人気を博しているが、それを自治体が主体となって企画し、地域を訪問する魅力を作るプロジェクトだ。

背景にあるのはやはり、関西観光の課題である「訪問スポットが集中し、周遊観光が進んでいないこと」(桂氏)。関西には寺社仏閣や文化財が多くあり、それを保全し、次代へ受け渡すことも地域の大切な役割だ。有名な寺社仏閣であれば、拝観料などの収入が多いが、それ以外の多くの寺社仏閣では、文化財を保全する費用の確保は課題だった。

また、イベント会場として想定する寺社仏閣などは、拝観時間後は使われないスペースになる。「夜の時間は使われない資産を活用し、文化財の保全はもとより、地域のナイトタイムエコノミーの活性化にも貢献するとの発想で、プロジェクトが始まった」(桂氏)という。

MUIC 事務局長 桂寧志氏

本プロジェクトでは、自治体がアートイベントの主催者となり、事業費は企業や団体からの寄付や協賛金を募るのがポイント。特に寄付に関しては「企業版ふるさと納税」の活用を考えている。

企業版ふるさと納税は、寄付金額の最大9割の法人関係税等が軽減される仕組み。例えば、1000万円の寄附をすると、企業の実質的な負担は最小100万円になる。「個人のふるさと納税ほど浸透していないが、これをうまく活用しない手はない。企業が地域への納税という形で地域貢献ができるのは、素晴らしいことだと思う」と桂氏は話す。

事業費を寄付や協賛金で賄うことで、入場料など来場者の消費分は上乗せ収入になり、地域にある文化財の保全や観光振興の予算とすることが、理論上は可能になる。桂氏は「資金面でもサステナブルなサイクルを作りたい」と力を込める。

2023年度は関西の計5都市でイベントを予定している。桂氏は企業に対し、「ナイトタイムエコノミーの活性化、または関西の地域貢献に関心があれば、まずは相談してほしい」と話している。

万博後も経済活性が続く、自走する事業に

三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)と三菱UFJ銀行が設立したMUICは、銀行出身の職員が観光の課題に注目し、人や企業、地域を結び付け、ハンズオンで関与することで、革新的な企画を堅実に事業化するのが特徴だ。2021年2月の開所以降、2年間で企画されたプロジェクトの数は50件超。事業化し、世の中に実装したプロジェクトは8件に及ぶ。

関西観光本部はMUICの開所当時から賛助会員として参画しているが、プロジェクトで協働するのは今回が初めてだという。2年後に迫る万博開催に向け、地域の意識が強まるこのタイミングにMUICと組み、スタートアップの技術や考え方に触れながら地域への周遊促進に取り組むことは、「地域にとっても気づきが大きい。積極的に、熱量高く提案してもらえることが、タッグを組むうえでありがたい」と加藤氏は話す。

これに対し桂氏は「我々は2025年の万博に向け、観光による経済効果を関西に行き渡らせることを目的に発足した。期限のある組織だからこそ、期間の中で地域活性化に資する事業を生み出したいという思いが、強いモチベーションになっている」と話す。

ただし、期間限定の活動とはいっても、2025年の万博開催がMUICのゴールではない。桂氏は、「その先も持続し、経済効果を地域に落とせる事業を創ることを重視し、取り組んでいる。そうした事業の共創に関心のある地域や事業者はぜひ、声をかけてほしい」と話している。

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記事:トラベルボイス企画部

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