福岡市で1800年の歴史を持つ鳥飼八幡宮が、世界大手コンサルティングEY Japanと「メタバース神社」の取り組みを開始した。メタバース空間で、いつでもどこからでも参拝できる。EY社は2021年にDX支援に特化したEYデジタルハブ福岡を開設。地域での関わりの中でこのプロジェクトがスタートした。
数百枚もの写真から再現されたというメタバース神社の特徴は、VRゴーグルなどを使わずに、スマートフォンやタブレットなどからアクセスできること。スマホ一つあれば、海外からでも訪れることができるほか、外出が困難な人の参拝も実現する。
参拝者はアバターを使って境内の中を自由に動き回り、「手水舎で手を清める」「二礼二拍手でお参りする」「おみくじを引く」などを体験できる。また、神社や歴史、文化について知識を深められるよう、境内には37枚の豆知識カードを用意。参拝とともにカード収集や、福男福女レース、巫女衣装に着替えるなど、何度も参拝したくなる仕掛けが施されている。
EY Japanによると、今回のメタバース構築ではシステム開発の要件定義にとどまらず、メタバース空間でのユーザー体験を基軸におき、デザイン思考の問題解決手法によって構築したという。
このほど開催されたプロジェクト発表の会見で、鳥飼八幡宮 宮司の山内圭司氏は「今回の取り組みは今後100年を見据えたもの。鳥飼八幡宮の参拝者は年間30万人に増えたが、全国の神社を取り巻く状況は厳しく、毎年1000社を超える神社がなくなっている。今回のような先進的な取り組みで神社界そのものが注目されることで、普段神社に縁のない方が足を運ぶきっかけになって人の交流が生まれ、地域を活性化できれば」と語った。
EY Japan CIOの松永達也氏は「これまでもイベント等で作られたものはあったが、常設のメタバース神社は初めてではないか。メタバースありきの取り組みではなく、神社の情報発信や顧客体験の再設計、神社のあり方を変革するためのもの」と話す。将来的にはメタバース神社での交流や季節ごとのイベント、さらには御朱印の授与なども視野に入れるという。
日本では地域コミュニティの中心としても重要な役割を担ってきた神社。新たな交流や現地に足を運ぶきっかけになるものとして、リアルとバーチャルを融合したメタバース神社に期待が集まる。