ユネスコ世界遺産センターの専門家は、イタリアが気候変動やオーバーツーリズムからベネチアを守る努力が足りないとして、ベネチアおよびラグーンを「危機遺産リスト」に追加するように勧告した。
危機遺産とは、紛争、自然災害、観光開発などによって、その普遍的価値を損なうような重大な危機にさらされている世界遺産。ユネスコ世界遺産センターは、今年9月にリヤドで開催される会議で、加盟21か国の委員会が200件以上の遺産を再評価し、危険遺産リストへの追加を決定する予定だ。このうち、約10カ所について、専門家らが加盟国に対して危険遺産リストに載せるよう勧告しており、その中にはすでにウクライナのオデッサ歴史的地区、キエフ、リヴィウ、マリのトンブクトゥの町、シリア、イラク、リビアのいくつかの遺跡が含まれている。
イタリアのベネチアについて、ユネスコはイタリアが提案した是正措置は「現時点では不十分であり、詳細も十分ではない」との見解を示している。
ヴェネツィア市の広報担当者はロイター通信に対し「市はユネスコ世界遺産委員会センターが発表した決定案を注意深く読み、政府と協議する」と述べた。
ベネチアは、長年にわたってオーバーツーリズムに悩まされてきた。2019年のカーニバルの期間には、1日に約19万3000人が中心部の歴史地区に押し寄せた。ベネチア市は訪問者数を抑制するために日帰り旅行者に課金する準備を進めてきたが、反対により遅れている。