アジア旅行市場がさらに急成長する理由、主力OTAが語ったアジア若年層の旅行トレンドから注目の韓国発の海外旅行まで

2023年7月に行われた旅行テクノロジーの国際会議「WiT Japan & North Asia 2023」には、アジアの旅行市場をリードする企業が多く参加し、ポストパンデミックに向けたトレンドや現在の市場環境について議論が展開された。このうち、東南アジアについては、インドネシアのOTAトラベロカ(Travelola)、韓国については、Tidesquare、GCカンパニー、MyRealTripのOTA3社が登壇。それぞれ、今後注力するポイントを説明した。

トラベロカ、急増する若者中間層が旅行市場を牽引

トラベロカのシーザー・インドラ社長がまず触れたのが、世界の旅行市場の成長エンジンとしての東南アジアの潜在力だ。この地域の人口は約6億2000万人。そのうち約半数が30歳以下で、2億人が中間層。この層は2030年にかけて5%増加すると見込まれているという。インドラ氏は「初めて海外旅行に行く若者層が多く、彼らにとって日本を含めた東アジアは人気のデスティネーションになっている」と明かす。

また、その若者層のトレンドにも注目。インドラ氏は、「特にサステナブルツーリズムへのシフトが進みつつある」と指摘した。そのうえで、トラベロカとしても旅行における環境負荷の軽減にパートナーと共に取り組んでいることに触れ、「新しいリアリティに向けて、その取り組みの認知度を高めて、ベストプラクティスを共有することが大切」と強調した。

さらに、インドネシアが発給している「ノマドビザ」についても言及。「短期旅行ではないため、旅行者には地域の文化を尊重し、コミュニティにどのように受け入れられるかを考えてもらう必要がある」と話し、持続可能な社会の観点から、その新しい制度を評した。

東南アジアのデジタル化については、「まだ構造的な問題は多い」と指摘。インドネシアではデジタル決済は進んでおらず、クレジット決済の浸透率も5%以下にとどまっているという。そのうえで、「その不完全さは、トラベロカにとって大きなチャンス。ビジネスの潜在性は非常に大きい。他社との差別化を進めるためにも注力していく」と期待を込めた。

東南アジア最大手のOTAトラベロカ社長のシーザー・インドラ氏(右)

韓国OTA、急回復する日本への送客

韓国では、新型コロナの規制緩和後、アウトバウンドが好調。依然として2019年比で半分程度の回復にとどまる日本とは対照的だ。韓国のセッションに登壇したTidesquareのミン・ヨンCEOは「2019年をすでに超えている」と説明。MyRealTripのドングン・リーCEOは、「コロナ前のほぼ倍」と明かしたうえで、「韓国の航空会社はできるだけ早く供給を戻そうとしている」と話し、アウトバウンド市場好調の要因の一端を説明した。

特に総じて日本への送客は伸びており、すでに2019年の1.5倍に拡大。「非常に大きな市場になっている」(ドングン・リー氏)。

GCカンパニーのミョンファン・チャンCEOは、同社が昨年アウトバウンドをの取り扱いを始めたばかりで、比較はできないとする一方、「全体としては回復は早く、現在は2019年を超えて、早いスピードで成長している」と自信を示した。

また、セッションでは、各社が今後の注力点についても言及。Tidesquareが挙げたのは「パーソナライゼーション」。ヨン氏は「多くのインベントリーを持っているが、それを適切にカスタマーに提供していきたい」と意欲を示した。また、GCカンパニーのチャン氏はユーザーの人気が高い日本を含めた近距離デスティネーションを強化していく考えを示した。

MyRealTripのリー氏は、韓国発のアウトバウンドが伸びているなか、「インバウンド」を注力ポイントとして挙げた。「コロナ禍で世界的にKカルチャーの人気は高まった。日本市場でも、パンデミック前は割安感から韓国を訪れる人が多かったが、今ではKカルチャーが動機になっている」と話した。さらに、「海外旅行に関心が高く、金銭的余裕がある50代以上の需要を取り込むために、オフライン販売も強化していきたい」と明かした。

韓国では旅行系スタートアップの資金調達が活発だ。その背景についても意見が交換され、総論として「グーグやアマゾンなどのグローバルテックよりも、カカオやネイバーなど自国のエコシステムが強く、彼らがスタートアップを支える傾向がある」ことを挙げた。

このほか、3社とも、パンデミックの完全収束を気にかけながらも、日本での事業拡大に意欲を示したほか、フィンテックやAIなどの活用に積極的な姿勢を示した。

韓国OTAのセッション。(左から)モデレーターのベンチャーリパブリック柴田啓CEO、Tidesquare CEOのミン・ヨン氏、GCカンパニーCEOのミョンファン・チャン氏、MyRealTrip創業者兼CEOのドングン・リー氏

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