楽天ステイCEOに聞いてきた、宿泊事業の独自展開、旅先テレワークの需要増で存在感

国内、訪日ともに旅行需要が本格回復するなか、日本の宿泊業界も構造変化が進みつつある。ホテル、旅館中心の市場に変わりはないが、コロナ禍を経て長期滞在、グループ利用、一棟貸しといったニーズがより顕在化。こうした変化をつかんでいるのが楽天ステイだ。日本最大級の宿泊・民泊予約サイト「Vacation STAY(バケーションステイ)」を運営しつつ、独自の宿泊ブランド「Rakuten STAY(楽天ステイ)」を全国展開する同社のビジネスをリーダーとしてけん引するのが、楽天グループ執行役員で、楽天ステイ代表取締役CEOの太田宗克氏である。

同氏は楽天ステイの事業だけでなく、世界70万超のホテル在庫を90カ国以上・約1000社のOTAに提供するBtoB流通事業「Rakuten Travel Xchange(楽天トラベル・エクスチェンジ)」のCEO兼ディレクターも務めている。先ごろ開催されたWiT Japanの会場で、太田氏に単独インタビューを実施。楽天トラベルが旅行事業を着実に成長させる一方で、楽天グループとして独自の宿泊施設、BtoB事業などを通じて世界での展開も視野にいれる事業展開について聞いた。

楽天エコシステムが詰まった独自ブランド

2023年夏、円安や航空運賃の上昇、世界的な旅行需要の急増で伸び悩んだ海外旅行とは裏腹に、活況を呈したのが国内、訪日旅行だ。

3年にわたるコロナ禍を経て旅行スタイルの変化も顕著。デジタルノマド、旅先テレワークなどの普及により長期滞在の需要が顕在化した。古民家のリニューアル、宿泊施設を中心とした街づくりといった新しい動きも全国各地で相次いでいる。そんな国内における民泊、バケーションレンタルで存在感を高めているのが楽天ステイである。

もともと、国内における民泊事業参入を目的に、楽天グループと住宅・不動産ポータルサイトのLIFULLが2017年に設立し、2022年のLIFULLによる全株式譲渡に伴って現在の商号になった。宿泊・民泊予約サイト「Vacation STAY」は一戸建て、マンション、アパート、ホテル、旅館などさまざまなラインナップに及び、登録部屋数は2023年9月現在、10万室を超える。

また、独自の宿泊ブランド「Rakuten STAY」は、楽天ブランドを冠した宿泊施設。民泊や簡易宿所の運営を希望する法人・個人の不動産オーナーに対し、楽天グループがブランドを貸与し、楽天ステイが導入のコンサルティングから施工、清掃などの運用まで、委託会社の協力を得て一括して運用代行をおこなうビジネスモデルだ。アパートメント、一棟貸し切りなど、さまざまなスタイルがあるが、基本には、リビング・キッチン、BBQ、リネン・食器類、洗濯機などを備え、なかには半露天風呂やサウナを楽しめる施設もある。手ぶらで滞在できる設えで、全国約40カ所に展開している。

運用ノウハウをBtoBで提供

パンデミックを経て楽天ステイの販売にも大きな変化があった。「コロナ前は外国人、日本人ともにアパートメントタイプが圧倒的に主流だったが、独自ブランドをはじめ1棟貸し切りの利用がどんどん増えていった」と太田氏は語る。たとえば、2023年1月にオープンした「Rakuten STAY VILLA 鴨川」は全室2階建てのヴィラで最大約300平米と3世代やグループで利用できる。小型犬だけでなく大型犬も泊まれること、ユニバーサルデザインであること、無人チェックインも含め人との接触が最小限に抑えられることなどが評価されている。

楽天ステイ代表取締役CEOの太田宗克氏

太田氏は「楽天ステイは当初、民泊の概念で始めたが、もはやその枠にこだわらず、旅行を阻害する課題をどんどん解決し、新しい宿泊体験を創造するビジネスと考えている。特に独自ブランド『Rakuten STAY』は、楽天市場で販売している商品が体験できたり、再生可能エネルギー導入で楽天エナジーとともに取り組んだりするなど、楽天エコシステムが機能している。こうしたグループシナジーを活用した宿泊をきっかけに地域経済にも貢献していきたい」と力を込める。

また、視野に入れるのが、楽天ステイの運営ノウハウの開放だ。販売管理や現地スタッフの調達といった運用代行はもとより、楽天ステイではホテル管理システム(PMS)を自社開発している。今後は、在庫や料金を一元管理するサイトコントローラーからタブレット受付、清掃管理まで統合したシステムを構築し、BtoBでの提供を検討。「楽天のオリジンはデータを集積して分析し、ウェブで販売すること。この強みを最大限活かしていく」(太田氏)。

一方で、ホスピタリティの向上にも力を入れる。「Rakuten STAY」は清掃スタッフも外注せず、自分たちで調達している。その理由について太田氏は、「将来的には過去の履歴などから、宿泊者が入室する前に好みの室温に設定しておくといったパーソナライズのサービスを提供したい。そのためには、自社での教育が不可欠になる」と説明。日本ならではのおもてなしを見すえる。

テクノロジーで世界のホテル流通を変えたい

こうして国内での新しい宿泊体験の創造を推し進める一方で、現在、太田氏はシンガポールに拠点を置く楽天トラベル・エクスチェンジのCEO兼ディレクターも務めている。楽天トラベル・エクスチェンジは、もともと2019年にシンガポールのホールセーラーZumata社を買収して開始した事業。数多くのAPIを統合した単一API連携によって、90カ国以上・約1000社のOTAに対し、楽天ステイ、世界中のホテルチェーン、日本のホテルやバケーションレンタルといった宿泊施設の在庫を卸している。楽天の強みであるAIを活用したビジネスでもあり、世界中のBtoBサイトから最もリーズナブルな価格をAIで算出して各国で販売してもらうことで、販路を着々と拡大している。

「コロナ禍で旅行がストップしてしまったなか、世界中の小さな旅行会社にもグローバルな旅行在庫管理を支援できる仕組みを提供できないかと考えた」と太田氏は振り返る。複数通貨、複数の支払い方法の取り扱い、1つの画面にベストレートの表示、契約するOTAに合わせてベストラー物件のポートフォリオをパーソナライズして提供するのも楽天トラベル・エクスチェンジの特徴だ。太田氏は、「まだまだ在庫が少ないのが課題だが、今後は宿泊施設だけでなく、楽天トラベル 観光体験が取り扱う国内外のアクティビティなども取り扱っていきたい」と意気込む。

民泊の枠を超えた新しい宿泊体験の創造、地方創生に取り組む一方で、楽天ならではの運用ノウハウの開放による既存プレーヤーとの協業、さらには先端テクノロジーの力で世界の宿泊流通も変えようとしている太田氏。強力なリーダーシップで、事業拡大に向けた動きを加速している。

WiT Japan 登壇時のセッションの様子

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