欧州34カ国の政府観光局が共同で観光施策を進める欧州観光委員会(ETC)のエドゥアルド・サンタンデールCEOが、大阪で開催されるツーリズムEXPO2023に合わせて来日した。ETCは1948年に発足。現在、日本を含む世界6カ所に拠点を置き、欧州へのインバウンド需要開拓の活動をおこなっている。
サンタンデールCEOは、今回の来日について「コロナ後の日本市場の旅行形態や消費者動向の変化を確認したい。ツーリズムEXPOへの参加はそのいい機会になる」と話した。ツーリズムEXPOには欧州から11カ国の政府観光局が出展。サンタンデールCEOも観光大臣会合に参加する。
ETCの調査によると、日本人の欧州への旅行意欲は高いが、実際の予約に結びついていないのが現状だ。サンタンデールCEOは「そのギャップを埋めていくのが大きな仕事。我々の知性と知識、そしてパートナーシップを通じて、それを進めていく」と強調した。
コロナ後の欧州のインバウンド市場では、北米の回復が早く、滞在も長期化している。一方、日本からの旅行者の回復は遅れている。サンタンデールCEOは、その要因として、旅行者属性の変化、日欧間のフライト環境、インフレや円安などの経済環境を挙げた。
旅行者の量よりも質を重視
そのうえで、今後の方針てとして「欧州が多様なデスティネーションであることを伝えて、日本人があまり訪れていない国への誘致を進めていく」考えを示した。大都市以外でも、歴史、建築、食など日本人が好むコンテンツは多いとして、「日本の旅行会社と一緒に新しい需要を開拓していきたい」と続けた。
また、旅行者の量よりも質を重視する考え。さまざまな価格が上昇していることから、「あるテーマにパッションを持った人たちをターゲティングしていく」と話す。例えば、複数国を周遊する場合でも、統一したテーマ性を訴求していく。さらに、日本市場でも、地域との交流などより深い経験を求める傾向があるとの認識から、「体験の選択肢をさらに増やし、価格に見合った体験価値を創り出していくことが必要」との考えも示した。
このほか、サステナビリティへの取り組みについても言及。CO2削減などの環境問題だけでなく、地域コミュニティへの貢献も重要と位置づけ、「地産地消など地元にしっかりと還元できるような取り組みを業界パートナーとともにリードしていく」と話した。
「各政府観光局は、日本市場への投資に積極的。課題もあるが機会もある」とサンタンデールCEO。コロナ後、欧州でも日本でも旅行市場にはさまざまな変化が見られる。共同組織であるETCの立場として「(加盟国間の)競合は重要だが、協業はもっと大切」と強調し、国レベル、欧州全体の双方で日本市場の回復と今後の発展に向けたプロモーションを進めていく方針を示した。