OTAとホテルは、どちらも同じ部屋のマーケティングを行っているが、ホテルがOTAから学ぶべきことは多い。OTAがホテル予約で大きなシェアを獲得できているのには訳があるのだ。
ブッキング・ドットコムなどの大手OTAは、ただ単に宿泊施設をリストアップしているだけではない。潜在的な旅行者に向けて、宿泊施設の推奨から滞在中の体験の提案、滞在後のフォローアップまで旅行全体を販売するエコシステムを構築している。
旅行者の趣向は様々だ。それに合わせて、物件や部屋のタイプ、体験を提案する。 ある客にはカフェを勧めるが、別の客には寿司屋を勧める。OTAは、ユーザーが予約プロセスのどの段階にいるのかを正確に把握しており、いつ予約を促し、いつリマインドするべきかを知っている。 また、予約後、滞在前、滞在中、滞在後にユーザーとコミュニケーションをとる方法も知っている。
これは、旅行者にとってはありがたいことだが、宿泊が単なる旅行の1要素になりつつあるホテルにとっては脅威だ。OTAが、ユーザーに対して、どこで食事をするか、何を体験するのか、ウーバーをいつ予約するのかを提案している間、ホテルは単なる夜のベッドを提供する場所だけになってしまう。
ホテルは今、そのマーケティング戦略を変更するか、あるいは宿泊者を失うかの岐路に立たされている。OTAから学び、従来の「デジタルパンフレット」モデルの枠を超えて、AIと機械学習を活用して、インタラクティブでパーソナライズされたプラットフォームを提供することが大切になってくる。
アマゾンやネットフリックスから学べること
ここで、アマゾンの例を見てみよう。アマゾンはユーザーが買い物をするとき、関連性の高いおすすめ商品のみを表示する。 アマゾンはユーザーのショッピング習慣や履歴から、ユーザーが次に何を欲しているかをすでに知っているのだ。 アマゾンのショッピングホームページはその人向けに特別に設計され、受動的な閲覧をインタラクティブでパーソナライズされた情報提供に変えている。
ネットフリックスも同様だ。各ユーザーには、自分の好みに合わせて独自にパーソナライズされたコンテンツライブラリが表示される。顧客データや行動とAIアルゴリズムとを組み合わせて活用し、オーダーメイドの視聴体験をつくっている。
もはや、顧客に対して画一的なアプローチは存在しない。どの業界もパーソナライゼーションとカスタマイズされた体験の創造に舵を切っているのに、なぜホテルはこれほど遅れているのだろうか。
ホテルのウェブサイトに人を集めるだけではもう十分ではない。OTAのサイトでは、ユーザーによって、コンテンツ、画像、部屋の提案、パッケージオプション、推奨事項などがすべてが異なる。
このハイパーパーソナライゼーションを実現する鍵は、宿泊者データを賢く活用する能力であることに気づいていないホテル経営者は多い。データ収集だけでは不十分で、それを分析し、応用していく機械学習テクノロジーが非常に重要になる。
宿泊者の行動、好み、エンゲージメントのパターンを理解し、そのプロフィールを保有することで、ホテルは独自のエコシステムを構築することができる、そして、最終的にロイヤルティの高い価値のある顧客との関係を築くことが可能になるのだ。
※この記事は、世界的な旅行調査フォーカスライト社が運営する「フォーカスワイヤ(PhocusWire)」から届いた英文記事を、同社との正式提携に基づいて、トラベルボイス編集部が日本語翻訳・編集したものです。
筆者:ホスピタリティ産業向けテクノロジープロバイダーAvvioの共同創設者で、現在はAvvioを買収したSHRで、ホテルでのテクノロジー活用を訴えているフランク・リーブス氏による寄稿。
オリジナル記事:WHAT HOTELS CAN LEARN FROM AMAZON, NETFLIX AND THE OTAS