2025年の大阪・関西万博の開幕まであと1年。2024年4月13日、大阪・ミナミで「ミナミ・フライング万博」が始まった。10月13日までの半年間、道頓堀・戎橋筋・なんば広場などで、毎月“おもろい”イベントを開催。万博を盛り上げるとともに、ミナミのまちを国内外にPRしていく。第1弾のイベントは「道頓堀たこ焼EXPO2024」。万博に出展予定の海外パビリオン関係者も熱い視線を送る。
8カ国のパビリオンと連携した「たこ焼EXPO」
その名の通り、フライング気味に始まったミナミ・フライング万博。主催は、地元商店会や南海電気鉄道などミナミを拠点に活動する企業・団体でつくる「なんば・道頓堀公共空間活用連絡会(NDK連絡会)」だ。
会長を務める道頓堀商店会会長、上山勝也氏は「道頓堀・戎橋筋・なんば広場などの公共空間に隣接する団体がタッグを組んで、新しいまちづくりを目指すために発足した。一致団結して、大阪・関西万博の1年前から『先やってますねん!』といろいろな国の方々を巻き込んで、おもろいミナミの万博として開催する」と意気込む。
フライング万博の第1弾イベント「道頓堀たこ焼EXPO2024」は、4月13日から28日まで開催。道頓堀でたこ焼き店を営業する「道頓堀たこ焼同好会」の8店舗で、万博にパビリオンを出展予定の8カ国(フランス、アメリカ、韓国、タイ、イタリア、ドイツ、スイス、中国)の食材を使った創作たこ焼きを販売する。アメリカのたこ焼きはステーキ入り、イタリアはトマトソースとパルメジャーノチーズをかける、中国は麻辣ソース味など、具材やトッピング、ソースで各国の特徴を出した。
4月12日に開かれたプレス発表会では、各国の創作たこ焼きがお披露目された。同好会を代表し、「たこ家道頓堀くくる」を運営する白ハト食品工業専務執行役員、二宮末己氏が「ぜひ各店舗に足を運んで、(万博への)機運醸成につなげていただきたい」とPRした。
被災地・富山県産の花を使い、復興支援も
またフライング万博では、元日に発生した能登半島地震への復興支援も行う。4月26日から28日まで、なんば広場などで開くオープニングイベントでは、被災地である富山県で廃棄予定の数万本の花を活用した長さ20メートルのフラワーカーペットを作り、フラワーワークショップを行う。北陸3県に関連する物販ブースを設け、音楽ライブなども催される。
イベントに花を提供するジャパン・フラワー・コーポレーション(本社・富山県射水市)は能登半島地震で水を入れるポリタンクが次々と売り切れる中、被災者にバケツを提供。避難所に花を届けるなどの支援にも取り組んできた。同社の松村吉章社長は「富山のチューリップ生産者支援と合わせて、イベントの収益の一部を能登支援、避難所や再開した小中学校、仮設住宅に花を届ける活動に充てたい。チューリップの花言葉は『博愛、思いやり』。万博を盛り上げると同時に、思いやりの輪を能登にも届けてほしい」と呼びかける。
プレス発表会には、公益社団法人2025年日本国際博覧会協会担当局長、堺井啓公氏と公式キャラクターのミャクミャクも駆けつけた。堺井氏は「万博まであと1年となり、大阪もまち全体で来場者を迎えるという態勢がどんどん整ってきている。ミナミに来たお客様が一緒に頑張ろうという形で万博に向けて盛り上がっていくよう期待している」と力を込めた。
フライング万博には、万博に出展予定の海外パビリオン関係者も注目している。在大阪イタリア総領事館のイタリア館館長、アンドレア・マリン氏はたこ焼EXPOについて「たこ焼きを切り口に皆さんが一生懸命にイベントに取り組むというのは大変心強い」と評価する。万博については、「日本は世界でもリーダー国の一つであり、多くの国、特にアジア圏の人々が目標にしている国でもある。その日本とより関係を深められる今回の万博は非常に重要な機会。経済的な成長だけでなく、いろいろな期待感がある」と話した。
ミナミから大阪、日本を元気にしたい
NDK連絡会会長の上山氏はフライング万博を始めたきっかけを「万博が盛り上がりに欠ける、関東の方ではほとんど認知されていないと言われる中で、今こそ大阪を盛り上げないと駄目だと。準備段階からウォーミングアップして大阪を盛り上げようと考えた」と説明する。
イベントの開始に当たり、「ミナミのまちから大阪のまちを元気にする、また日本を元気にするということに期待し、わくわくしている。安心・安全なまち、また来たいまち、食とエンターテインメントのまちとして外国の方々に喜んでいただき、国に帰って『大阪おもろかったよ、日本を代表する面白いまちや』と言っていただきたい」と語った。
海外にアピールしたいまちの良さとして「人の面白さ」を挙げる。「大阪は庶民のまち。まちの人たちを見ていると、一人ひとりが面白いことをしようと思っていなくても面白い。そういう自然な姿から『楽しいまちやな、おいしいものもぎょうさんあるし、また来たいわ』と思ってもらえるのが大阪の売り。各国のお客さんを巻き込んで、面白いまちにしたい」。
コロナ禍を経て現在、ミナミのまちには多くの外国人が訪れている。オーバーツーリズムの対策については「(道頓堀川沿いの道の)リバーウォークを活用するなどして、(混雑する)道頓堀や戎橋筋商店街をうまく迂回してもらえるようにしたい。迂回しながら面白い看板などを見てまちの良さを発見していただけたらと思う」と話した。
万博については「世界中のたくさんの方々に来ていただくのが一番の期待。そして万博が終わった後も『もう1回大阪に行きたいな、大阪で遊びたいな』と思ってもらえるようなきっかけを作りたい」。フライング万博では、今後もまち一帯をテーマパークとして楽しめる企画を予定している。「先やってますねん!」の精神で万博を盛り上げていってほしい。
記事・写真:ライター 南文枝