観光事業者の顧客送迎の法的許容範囲が明確に、「自家用有償旅客運送」の最新制度を弁護士が解説【コラム】

国土交通省は2024年3月1日付で、「道路運送法における許可又は登録を要しない運送に関するガイドライン」(以下、「本ガイドライン」)を通達として発出しました。日本では現在、移動手段の供給が十分ではない地域が存在し、観光産業の観点からは目的地までの利便性のよい交通アクセスの確保が課題となっています。

こうしたなか、本ガイドラインは地域の宿泊事業者、ツアーなどのサービス提供事業者や観光ガイド事業者等の観光産業に関わる事業者が自家用自動車を使って顧客の送迎をおこなうことができる範囲を明確化するものです。今回のコラムでは、観光関連事業者にとって重要と思われる本ガイドライン上のポイントについて解説します。

本ガイドラインのポイントは?

読者のみなさんもご存じかもしれませんが、道路運送法において、自家用自動車は、原則とし、有償で運送をおこなうことに使用されてはなりません。災害のため緊急を要するときを除いて、例外的にこれをおこなうためには、国土交通大臣の許可又は登録(以下、「許可等」)を受けるべきことが定められています(法第78条、第79条)。

ア.自家用自動車とは

そもそも、自家用自動車は、道路運送法上、「事業用自動車以外の自動車」(法第78条)をいい、事業用自動車とは「自動車運送事業者がその自動車運送事業の用に供する自動車」(法第2条第8項)とされます。「自動車運送事業者」とは「自動車運送事業を経営する者」(法第2条第8項)であり、「自動車運送事業」は「旅客自動車運送事業及び貨物自動車運送事業」(法第2条第2項)とされ、バス・タクシー事業やトラック運送事業などがこれに該当します。したがって、こういった事業の用に供する自動車以外の自動車が、自家用自動車に該当します。

イ.有償とは

自家用自動車により無償でおこなわれる運送(たとえば、友人を駅まで無償で送迎する行為等)については道路運送法による規制がなく自由におこなうことができる一方、自家用自動車により有償でおこなう運送については道路運送法において禁止されています。ここでいう有償とは「運送サービスの提供に対する反対給付として財物を収受すること」とされ、これに該当するか否かにより、許可等の要否が判断されます。そして、本ガイドラインでは運送サービスを提供する際に財物を収受することが認められる(有償性がないと判断される)ケースとして、収受するものが反対給付にあたらない場合と、反対給付が運送に対するものではない場合の有償性判断について明示しています。

無償でおこなう運送、実費請求の考え方

(ア)利用者から収受するものが反対給付に該当せず、有償性がないと判断される場合、本ガイドラインは、社会通念上常識的な範囲での謝礼については、運送サービスの対価ではなく、反対給付に該当せず有償性が認められないと示しています。

他方、謝礼とはいえず有償でおこなわれる運送と評価される例として、(i)運送を提供する者が運賃表を定めてそれに従って利用者が金銭を支払う場合、(ii)口頭・ジェスチャーにより利用者に強く謝礼を促すなど、謝礼の名を借りて実質的には運賃を求める態様の場合、(iii)ウェブサイトなどにより無償の運送サービスを仲介・紹介するサービスにおいて、謝礼の金額を入力しないとサービスが提供されなかったり、謝礼の有無・金額の多寡により利用者を選別するなどの取扱いをおこなう場合が挙げられています。

また、利用者から運送(前後の回送を含む)に必要なガソリン等の燃料代、道路通行料、駐車場料金、保険料、当該運送をおこなうために発生したレンタカー代の実費を受領したとしても、有償でおこなう運送とは評価されない旨、述べられています。

実費請求として認められる保険料とは、ボランティア団体・NPOなどにより、一回あたり、又は一日あたりの無償運送行為を対象に提供されている保険(当該保険が、年間契約による場合を含み、ただし、当該車両にもともと掛けられている自賠責保険・任意保険は除く)や、レンタカーの借り受けに伴って加入する一時的な保険(免責補償制度及び休業補償)を指すとされています。

(イ)反対給付が運送に対するものではない場合の運送サービスの有償性判断について、本ガイドラインでは、宿泊サービスが有償で、当該サービスに対する反対給付がおこなわれていたとしても、当該サービスの利用者へ運送サービスが付随的に提供され、運送に特定した反対給付がない場合(送迎利用の有無にかかわらず利用料金に差異がない場合)は、法に基づく許可等は不要とされます。また、運送サービスの利用の有無によって施設の利用料や宿泊料に差を設ける場合でも、当該差額が運送サービスに要する実費の範囲内であれば、許可等は不要とされます。

そしてこの場合の実費としては、車両が主として送迎を要する利用者のためだけに購入・維持されていることに鑑み、イ.(ア)で述べた実費の範囲に、車両償却費、車検料・保険料等の車両維持費を含めることも認められています。

送迎途中のお土産屋の立ち寄りも許可不要で可能に

具体例として、ホテル・旅館等の宿泊施設の利用者を対象とする運送についてあげてみます。本ガイドラインでは、宿泊施設が、駅・空港・港等と宿泊施設との間で、無償の運送サービスをおこなう場合において、利用者の依頼・要望に応じて、送迎途中でお土産屋などの商店などに立ち寄ることも差し支えないとされています。また送迎距離が長距離に及ぶ場合であっても、利用者を対象としたサービスとして社会通念上妥当と考えられる場合は、当該運送サービスに対する許可等を取得することは不要とされています。

また、スキー旅館からゲレンデへの運送、旅館から海水浴場への運送、宿泊施設からイベント会場への運送などはどうでしょう。運送以外のサービスの利用者を対象に、無料サービスとしておこなう近隣施設等への運送について、社会通念上常識的な範囲のものは許可等が不要とされます。同様に、ツアーなどのサービス提供事業者がツアー参加者を対象に行うサービスに付随した運送として、例えばダイビング・シュノーケリングなどのマリンスポーツやスノーシューツアー等の事業者が、ツアー利用者を近隣の駅・バス停・宿泊施設等からツアー実施場所まで運送するなど、利用者を対象に無料サービスとして行う運送は、社会通念上常識的な範囲のものは、許可等は不要とされます。

国土交通省資料より

ほかにも、国・地方公共団体、日本観光振興協会、公的機関が認定・付与する資格を有するガイドが、ガイドのために人を運送する場合で運送に特定した反対給付がない場合は、許可等は不要とされることが新たに言及されています。しかしこの場合、観光ガイドと称しても、提供されるサービスの実態が、当該地域に関する専門的な知識や高度な語学力などに基づくガイドの提供ではなく、単に目的地への運送と評価される場合には許可等は必要とされ、脱法的な運用は認められないこととされています。

すなわち、本ガイドラインにより、観光関連事業者が自家用自動車を使って顧客の送迎をおこなうことができる範囲が明確となり、それによって利用者の利便性が向上し、観光関連事業者の社会・経済活動がより活発化することが期待されているのです。

執筆者プロフィール

窪田 三四郎 (くぼた さんしろう)

西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 パートナー。M&A・コーポレート・事業再生を中心に、訴訟・仲裁まで幅広く対応。航空ビジネスプラクティスチームで、各種規制のリサーチ・対応からジェネラルコーポレート、M&Aまで、航空関係や観光・旅行関係の事業者を多面的にサポート。


赤松 祝 (あかまつ はじめ)

西村あさひ法律事務所・外国法共同事業 アソシエイト。国土交通省航空局において空港の民営化事業に従事後、英国Cranfield Universityで航空ビジネスを研究、Air Transport Managementの修士号取得。航空ビジネスプラクティスチームで、航空・観光産業のビジネス構築に際する様々な法的問題へのアドバイスを提供。

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