韓国OTA「ヨギオテ」、日本への送客事業を加速、その戦略をトップに聞いてみた

韓国のOTA「ヨギオテカンパニー」は、日本市場での事業を加速させる。コロナ後、日韓関係が安定していることもあり、訪日韓国人旅行者は急速に回復。その市場環境を追い風に、日本の宿泊施設との直接契約を増やし、ヨギオテ・ユーザーの韓国から日本への送客をさらに増やしていく計画だ。グローバルOTAも訪日市場に注目するなか、韓国のローカルOTAであるヨギオテは、日本市場でどのような戦略を描いているのか。同社の鄭明勲(チョン・ミョンフン)社長に聞いてみた。

日本はビジネス拡大の大きなチャンス

韓国は海外旅行意欲が旺盛な国だ。総人口約5000万人に対して2019年の海外旅行者数は約2900万人。コロナ後、2023年には約2300万人にまで急回復した。チョン氏は、東京で行われたオープニングセレモニーで、「韓国では労働時間が減り、余暇の時間が増えている。結婚しても子供がいない人も増えており、旅行をする機会が増えている」と話し、今後も海外旅行市場は拡大していくとの見方を示した。その市場規模は2023年の4兆円から2028年には6.3兆円に拡大するとの予想もある。

その海外旅行先としてトップとなっているのが日本だ。日本政府観光局(JNTO)の統計によると、2023年の訪日韓国人旅行者数は約700万人。前年比では587%増。日韓関係が悪化した2019年比では25%増。直近2024年4月でも前年比45%増と増加傾向は続いている。訪日中国市場の回復が遅れていることもあり、マーケットシェアもトップを維持している。チョン氏は「今年は1000万人に達するのではないか」と期待をかける。

ヨギオテは2022年7月から海外の宿泊施設および航空券の販売を開始した。韓国の海外旅行市場の回復に合わせて、2024年1月~4月の海外旅行ビジネスの売上高は前年比200%以上の成長となった。

その市場環境のなかで、ヨギオテユーザーの海外予約の約60%が日本への旅行。韓国の訪日旅行者は海外旅行者全体の30%ほどであることから、ヨギオテにとって日本は重要なマーケットになっていることがわかる。チョン氏によると、ヨギオテは現在でも、日本では1日1500~2000室を販売しているという。

現在のヨギオテのアプリユーザー数は約1100万人で韓国トップ。20代と30代が全体の67%を占め、モバイルユーザーは全体の90%以上を占めている。グローバルOTAも日本を成長市場として投資を強化しているが、チョン氏は「そのユーザー数と、そのうち海外旅行者の60%が日本への旅行者という点が強み」としたうえで、「日本市場に向けた取り組みに集中できる」と強調した。

日本語が堪能なチョン氏。自身も日本の地方を訪れるのが楽しみだという。直接契約で共同プロモーションを

ヨギオテが今後、日本市場の拡大を目指すなかで重視しているのが宿泊施設との直接契約だ。チョン氏は「我々の力だけでは限界がある。リアルタイムの在庫確認、宿泊施設の正確な情報のアップデート、効率的なプロモーションなどで健全なパートナーシップが必要」と話す。

「日本の宿泊施設と共同でプロモーションを展開して韓国での認知や送客を拡大させていくためには、直接契約は必須」との考えだ。

ヨギオテは、国内外の宿泊施設と直接契約を結び、アプリをはじめ、各種SNSやYouTubeなどで韓国人ユーザーに向けたさまざまなプロモーションを仕掛け、販売や送客の増加で実績を上げてきた。チョン氏は「日本でも同じようなビジネスを展開していきたい」と意欲を示す。

そのなかで注力するのは地方の宿泊施設との直接契約だ。「韓国人旅行者の間でも『モノ』から『体験』を重視する傾向が強まっており、日本の地方への関心は高い」とチョン氏。特にヨギオテのユーザーである若い世代は、昔のように日本の地方に行く不安感は低く、気軽に訪れるリピーターも多いという。全体的に九州の人気が高く、九州のインバウンド市場の約60%が韓国。このほかにも、チョン氏は「例えば、鳥取、富山、石川など潜在性の高い地域は多い」と話す。

2025年以降には直接契約3000軒に

ヨギオテは今年1月に日本法人として「ヨギオテジャパン」を設立した。2024年上半期時点の日本での直接契約数は200軒弱。今後、2024年末までに400軒以上、2025年以降には3000軒以上を目指す。さらに、直接契約に加えて、日本のサイトコントローラーとの連携も拡大させていきたい考えだ。

「宿泊施設や自治体とともに、どのように地域の観光産業を支援していけるのか一緒に考えていきたい」とチョン氏。そのうえで、2028年の日本市場での売上高目標を1100億円と定めた。

チョン氏は、投資会社からヨギオテカンパニーの社長に就任した。今はオペレーションの仕事に面白さを感じているという。「旅行は、毎日の忙しい生活から解放するもの。できるだけ多くの人に休暇の機会を便利に提供していくことは、とてもやりがいのある仕事。と同時に、責任も感じている」と話す。

「訪日韓国人旅行者が今の倍になっても驚かない」とチョン氏。ヨギオテは、日本が進めている訪日旅行者の地方誘客に大きなインパクトを与えるかもしれない。

聞き手 トラベルボイス編集部 山岡薫

記事 トラベルジャーナリスト 山田友樹

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…