森記念財団都市戦略研究所は、2024年版「世界の都市総合力ランキング(GPCI)」を発表した。今回は、コロナ時代の影響を特に受けた社会や暮らしの指標(航空ネットワーク・生活コスト・賃金・働き方など)が、都市の総合力を構成する6分野(経済、研究・開発、文化・交流、居住、環境、交通アクセス)のランキング結果に色濃く反映される結果となった。
それによると、GPCIトップ都市はロンドン、ニューヨーク、東京、パリ、シンガポールが続き、トップ5の順位に変動はなかったが、東京、パリ、シンガポールがスコアを大きく上げ、ニューヨークとの差を縮めた。昨年初めてトップ10入りしたドバイは8位。
このほか、日本では大阪が35位、福岡が42位となった。
文化・交流:東京の躍進は観光資源が要因
分野別に見ると、東京は「文化・交流」で昨年の5位から3位にアップし初のトップ3入り。「外国人訪問者数」(3位)など外国人受入実績が大幅なスコア増となったほか、レビュー数より満足度をより評価する手法に変更した「観光地の充実度」(11位)、「ナイトライフ充実度」(8位)も改善するなど観光資源が今回の躍進につながった。「ハイクラスホテル客室数」も12位に上昇。20位以下の指標がなくなった。
この分野のトップ5は、ロンドン、パリ、ニューヨーク、ドバイ。パリは、「外国人訪問者数」が1位、 2024年夏季五輪を背景に「文化イベント開催件数」が2位となったほか、「スタジアム数」や「ホテル客室数」などでもスコアを順調に伸ばした。一方、ソウル(16位)とバンコク(18位)は大きく順位を落とした。日本では大阪が23位、福岡が45位となり、いずれも昨年から順位を上げた。
交通・アクセス:東京は5位に上昇、「公共交通機関」は1位
東京の「交通・アクセス」の順位は、昨年の8位から5位に上昇。「国内・国際線旅客数」(4位)、「航空機の発着回数」(7位)など航空キャパシティに関する指標が大きくスコア増となったほか、「公共交通機関の利用のしやすさ」(1位)など、公共交通機関の利便性をより評価する指標構成を変更したことから、都市内交通の評価が向上した。
この分野の世界トップ5には、ロンドン、ニューヨーク、パリ、ドバイが入った。ロンドンは4年ぶりのトップ。強みである「国際線直行便就航都市数」と「国内・ 国際線旅客数」で1位を維持したことに加え、「自転車での移動のしやすさ」でも1位を獲得した。
台北は、「タクシー料金の安さ」「通勤・通学時間の短さ」「自転車での移動のしやすさ」といった指標で高スコアを獲得したことから、昨年の31位から15位に大きくランクを上げた。日本では大阪が32位。
環境:東京は18位にダウン
東京の「環境」の順位は昨年の16位から18位にランクダウン。順位を落とした指標は「空気のきれいさ」(18位)のみであったが、評価を上げた僅差の都市が多かったことから、相対的に順位が下がった。
このほか、「環境への取り組み」においては、コペンハーゲン、メルボルン、メキシコシティ、ブエノスアイレス、シドニーといった都市が上位5都市にランクインしたことから、オセアニアや中南米の都市も気候変動対策に積極的に取り組んでいることがうかがえる結果となった。
経済:東京は昨年と同じ10位
「経済」では、東京は昨年同様10位。「世界トップ500企業」(2位)、「上場株式時価総額」(3位)など経済集積に関する指標は依然強いが、円安も影響し、強みだった「GDP」(2位)、「一人あたりGDP」(18位)のスコアが大幅に下落した。また、モバイルのインターネット速度も新たに評価対象に加えた「ワークプレイス充実度」(23位)のほか、「賃金水準の高さ」(27位)や「優秀な人材確保の容易性」(39位)もスコアを落とした。
世界トップ5は、ニューヨーク、ロンドン、ドバイ、シンガポール、チューリッヒ。大阪は38位、福岡は41位。
居住:東京は引き続き3位、大阪も7位に
「居住」では、東京は、パリ、マドリードに次いで3位。強みである「小売店舗の多さ」(2位)、「飲食店の多さ」(4位)など生活利便性に関する指標がさらに向上。また、円安が影響し「物価水準の低さ」でスコアを伸ばした。この部門では、大阪が7位でトップ10入り。福岡も21位に入っている。
「飲食店の多さ」では、台北が昨年に引き続き1位。また、居住分野で上位のパリやシンガポ ール、トロントがスコアを伸ばす結果となった。