海外旅行の戻りは7割弱、回復に向け若者へのパスポート無償配布や、修学旅行代金の上限見直しを要望 ―日本旅行業協会

日本旅行業協会(JATA)は2025年1月19日、新春記者会見を開催した。会長の髙橋広行氏は「2024年は大きく飛躍した1年だった」と振り返った上で「2025年はマーケット拡大に向け、非常に重要な年であり、大きなチャンスの年でもある。この機を捉え、国内・海外・訪日のバランスの取れたツーリズムの実現を目指す」と話した。

海外旅行の完全復活を最大の課題とする一方、訪日旅行のオーバーツーリズム解消や国内旅行のマーケット拡大にも取り組む方針だ。すでに訪日インバウンドはコロナ前の2019年の実績を大きく上回り、国内旅行もコロナ前の水準に回復。海外旅行だけが、2019年比7割弱と回復が遅れている。

髙橋氏は、海外旅行の回復の遅れについて「旅行業界だけでなく、国としても大きな課題であると認識すべき」と強調。その理由として、訪日インバウンドを2030年に6000万人とする政府目標の達成には「地方空港を含めた国際線の拡大が不可欠。便数を維持するためには訪日需要だけでは足りない。アウトバウンド需要も必要」と話した。さらに、若者の海外渡航の減少は「将来、国際舞台で活躍できる人材育成の観点からも憂慮すべき状況」と指摘した。

若者へのパスポート無償配布へ、与党に要望書を提出

海外旅行の回復に向けて、JATAは(1)高付加価値化の商品展開と2国間の相互交流の拡大、(2)若年層の社員を中心とした海外旅行販売に対する教育支援、(3)若者の海外渡航の促進、の3点を柱に取り組む。

特に(3)若者の海外渡航の促進では、パスポート取得費用の支援を含むキャンペーンを実施する予定。昨年には政府与党の「予算・税制等に関する政策懇談会」で、初めて海外旅行をする若者へのパスポート無償配布や、公立校の修学旅行代金の上限見直しなどを含めた要望書を、全国旅行業協会(ANTA)とともに提出したことも明かした。

「アドベンチャーツーリズム」と「ラーケーション」を推進

髙橋氏は、訪日旅行と国内旅行でも取り組むべき課題を指摘した。

特に訪日旅行は「急激な拡大によって多くの課題が顕在化している」とし、オーバーツーリズム対策を「喫緊の課題」と認識。地方分散には、世界で70兆円市場に成長しているアドベンチャーツーリズムが有効とし、その推進のため「地方の自然や文化に精通した英語が話せるガイドの育成を、官民連携でおこなう必要がある」と訴えた。また、旅行会社と地域との連携による商品開発や海外の旅行会社へのPRも推進し、「訪日旅行の地方分散に寄与したい」と意欲を示した。

国内旅行は、日本人の1人当たりの宿泊を伴う観光旅行は年に1.4回、宿泊日数は平均2.3日で、この傾向は十数年、変わっておらず「ほぼ頭打ちの状態」と指摘。要因に、企業や学校の休日が週末やお盆、年末年始など特定期間に集中していることを上げ、打破するには「ラーケーションが有効。平日の旅行需要が増加し、需要の分散化・平準化が図れ、雇用の拡大や安定化にもつながる。マーケットを拡大し、地方活性化の起爆剤になりえる」と主張した。今後、業界をあげて推進していく方針だ。

このほか髙橋氏は、2025年のイベントで旅行マーケットの拡大が期待できるものとして、大阪・関西万博と、ツーリズムEXPOジャパン(TEJ)愛知開催の2つを提示。特にTEJは、中部・北陸のゲートウェイである愛知県で開催する意義の1つに「観光を通じた、能登半島地震の被災地域の息の長い支援」をあげた。

最後に髙橋氏は「すべての企業活動のベースにはコンプライアンスがなくてはならない」と強調。「業界を挙げて公明正大な経営に努める」と力を込めた。

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