平成25年版の観光白書によると、旅行業の旅行取扱額は1996年の9.92兆円が、2011年は6.29兆円に減少。その減少率は36.6%と4割に近い。海外旅行は4.06兆円から2.74兆円と32.6%減、国内旅行は5.81兆円から3.49兆円と40.0%減という状況。宿泊業は1991年の4.94兆円をピークに2011年は2.70兆円と45.3%減少し、旅行業、観光業ともに、取扱額は年々減少している。
世界と比較すると、旅行業、宿泊業ともに日本とは経営規模と事業展開が大きく異なる。海外の旅行業ではネット販売に注力したり、宿泊業や運輸業を傘下に置いた多角的事業の展開などがあり、日本の大手旅行会社よりも規模が大きい。宿泊業では日本では国内展開が主であるが、海外では大規模ホテルグループがグローバルチェーン展開を行なっている。
また、観光産業の労働・就職状況だが、就職活動中は比較的人気が高いものの、労働時間や賃金水準の状況から社会人の転職では新卒者ほど人気が高くないと指摘。大学の観光関連の学部等を終了した学生が、観光関連企業に就職する割合も16.1%と小さい。
以上の観光産業の現状と課題を踏まえ、観光政策として観光の担い手である観光産業のあり方や強化にも着手。2012年9月に立ち上げた「観光産業政策検討会」で、観光産業の強化に向けてとるべき方策を6つの観点で提言した。ツアーオペレーター認証制度の導入や旅行産業の現行諸制度の見直し、宿泊施設への無料公衆無線LANの整備等の推進も含まれている。
最後に観光白書では、日本が1日も早く観光先進国になるためには、観光産業が国民の期待に応えて大きな役割を果たす必要がある、と言及。観光産業自らが、課題やあるべき姿、変革の可能性について考慮し、我が国の観光産業を世界最高・最先端へ飛躍させるべく、産業強化の取組を進めることが求められていると結んだ。
【観光産業政策検討会の6つ提言】
- 観光サービスの品質の維持・向上を通じた我が国観光産業のブランド確立
- 先進的な旅行産業への挑戦
- 宿泊産業におけるマネジメント・生産性等の改善・向上
- 旅行の安全の確保
- IT技術の発展に対するニーズの高まり等新しい事象への対応
- 観光産業における優秀な人材の確保・育成