2012年に最も多く外国人旅行者が訪れた国はフランスで、訪問者数は8300万人と、同国の人口6600万人をも上回る数字を達成した。ただ、滞在中における消費額の面では欧米各国より低く、なかでも首都パリでは、滞在の長期化や、観光客をもてなす温かいムードづくりなどの受け入れ対策が課題となっている――。英BBCニュースはこのほど、国連世界観光機関(UNWTO)の世界観光統計調査を基に、こんな分析結果を発表した。
世界観光統計によると、フランスは2位のアメリカに1600万人の差をつけて外国人訪問者数でトップの座を確保。アルプスのスキー場や地中海のリゾートが人気のトップスポットとして調査が始まって以来、不動の地位を確立しているためでもある。アメリカの次は中国、スペイン、イタリアとランキングが続く。
しかし、フランスは観光にかかわる消費額の面では、苦戦している様子が伺えるという。旅行・観光産業の国内総生産における7%を占め、自動車産業よりも高い数字となっているが、旅行者の平均消費額は646米ドルと、訪問者数でトップ10に入った国々では、ロシアを除くすべての国より下回った。旅行者の平均消費額はアメリカで1884ドル、ドイツで1253ドル、イギリスで1249ドル、東南アジアのカジノデスティネーションで知られるマカオは3213ドルとなっている。
フランスの平均消費額が低いのは、同国を訪れる旅行者の約83%が欧州各国からとショートホールのため、消費額が少ないというのもあるかもしれない。加えて、ホテルに泊まらずにキャンプしたり、地元のスーパーで買い物をしてしまう人も多いようだ。一方、アメリカでは海外からの旅行者の55%(全米旅行産業協会の調べによる)が近隣のカナダとメキシコからだが、残りの45%がロングホールで、平均滞在日数18日と長く、 旅行者による消費総額の78%を占める。
フランスは今まさに高い失業率と不況に悩まされており、観光消費額の拡大は大きな課題となっている。なかでも首都パリには同国への訪問者のわずか16.8%しか訪れていないという結果も明らかになっており、パリ・イル・ド・フランス地方の観光局は「パリにおける平均滞在日数は2.7泊となっているが、欧州からの旅行者は2泊、北米やアジアからの旅行者は1週間以上滞在しているはず。長く滞在すればそれだけホテルやレストランでもっと消費する。オリンピックなどの大型イベントの開催誘致を目標にしている」という。
同時に、パリでは旅行者を迎え入れる温かいムードづくりも行われている。パリ商工会議所は地元の観光協会と手を組み、観光業に従事する人向けのガイドを発行。外国語の会話集や外国諸国における生活習慣の違いなどに伴う顧客対応アドバイスなども盛り込んだ。
なお、マスターカードの行った調査では、世界で最も多くの外国人が訪れた首都は「バンコク」となっている。中国人旅行者のおかげで急速に訪問者数が伸びているようだ。