こんにちは。公認会計士・税理士の石割由紀人です。
今回は、「民泊」と宿泊税の関係について、各国事情を交えて解説してみたいと思います。
民泊と宿泊税の考え方
2020年の東京オリンピックに向けて、外国人観光客の増加で不足する宿泊施設を確保するため、政府は「民泊」の規制を緩和しつつあります。
「民泊」とは、「民家に宿泊すること」ですが、個人宅やマンション等の空き部屋を外国人観光客の宿泊施設として活用することです。
自宅等を貸したい人と宿泊したい人を仲介するサイト(Airbnbが代表的)の登場で民泊が身近なものとなってきています。
民泊は、従来は旅館業法上、グレーゾーンでしたが、政府の「国家戦略特区」の規制緩和では旅館業法の適用除外とされています。
この「国家戦略特区」の規制緩和策の一環で、大阪府で10月27日に民泊を特例的に認める条例を可決しました。また、東京都大田区でも2015年内に条例制定予定となっています。
東京都では、旅館業法上の宿泊施設に「宿泊税」という税金がかかってきますが、現時点では民泊に宿泊税がかかるのかは明確ではありません。
「宿泊税」とは、国際都市東京の魅力を高めるとともに、観光振興のための事業(例;旅行者に分かりやすい案内標識の整備、観光案内所の運営、観光情報の提供、観光プロモーション等)の経費に充てるため、東京都が独自に課税をする法定外目的(自治体が独自に課税する使途を限定した税金)です。
海外における宿泊税
東京都では、1泊1万円以上なら100円、1万5千円以上なら200円を課税していますが、海外における宿泊税の取扱いはどのようになっているかをご紹介したいと思います。
【海外自治体別 宿泊税率】
自治体名 | 税率 |
サンディエゴ(アメリカ) |
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サンフランシスコ(アメリカ) | 清掃料込の宿泊料金の14% |
ニューヨーク(アメリカ) | 1室1泊につき
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パリ(フランス) | 1人1泊につき
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出典;『第3回大阪府観光客受入環境整備の推進に関する調査検討会議』 大阪府 2015/7/27 を参考にした。
海外のAirbnb(エアビーアンドビー)規制と宿泊税の内容
また、各国自治体における「Airbnb(エアビーアンドビー)」に関する規制と宿泊税の関係は、以下のようになっています。
(1) サンディエゴ
カリフォルニア州サンディエゴ市内のAirbnb物件を予約する際、宿泊者は「サンディエゴ一時占有税」込みの宿泊料金を支払います。税務当局がAirbnbによる宿泊税回収納付代行を認めていたにもかかわらず、サンディエゴ市が、ホテルの無許可営業としてホストを罰した事例もあるようです。
出典;『Airbnb利用者急増で賃貸の規則見直しも』 フジサンケイ・コミュニケーションズ・インターナショナル2015/8/20
(2) サンフランシスコ
サンフランシスコでは2014年10月にAirbnbを合法化する条例が通過しました。
カリフォルニア州サンフランシスコのAirbnb物件を予約する際、宿泊者は「サンフランシスコ短期滞在税」込みの宿泊料金を支払います。
(3) ニューヨーク
ニューヨーク市では、法律上、民泊は認められておらず、Airbnbに登録された部屋の7割以上は違法状態となっています。
ニューヨーク市では、Airbnbを違法と考えているため、Airbnbによる宿泊税の代理徴収も行われていません。
(4) フランス・パリ
フランス・パリでは、Airbnbが観光客から宿泊費から観光税を徴収し、パリ市に納付することになっています。
出典;CNNMoney (London) 8/26
「フランスでは、自宅を貸す限り何の許認可も必要ないという非常におおらかな決まりになっている。」
出典;『平成26年度我が国経済社会の情報化・サービス化に係る基盤整備(サービス分野におけるルール形成に関する調査研究事業)報告書』 総務省 2015/8/10
以上のように、Airbnbの課税上の取扱いに関する各国の対応を踏まえると、Airbnb合法化の問題と宿泊税の問題は、一筋縄ではいかないといえそうです。
対応がどうかという問題は、そもそもAirbnbを合法と考えるかどうかによって変わってきます。
Airbnbは合法か違法かがグレーゾーンといわれ、世界的にみても、自治体ごとに異なった対応となっています。
合法と認めた自治体では、当然に課税の問題が出てきますし、Airbnbが宿泊税回収納付代行を行うケースもあります。
一方で、合法ではないと考える自治体では、課税の問題以前に、違法なAirbnbによる営業自体が認められないことになります。自治体もAirbnbの存在を違法と考える以上は、宿泊税を徴収できないケースが高いと思われます(例;ニューヨーク等)が、違法でも宿泊税を徴収しているケースもあるようです(例サンディエゴ)。
例外はあるにしても、基本的な考え方としては、"合法にするなら課税"、"違法なら課税以前に貸し出し禁止" ということになる場合が多いと考えることができます。