ANAが中期戦略を発表、2020年に国際線1.4倍、LCC3.1倍へ、航空以外の民泊や越境ECも視野に事業領域拡大も

全日空(NH)は2016年1月29日、2016年から2020年度にわたるANAグループ中期経営戦略を発表した。「攻めとスピード経営の実践」を戦略の柱に据え、エアライン事業領域の拡大、新規事業の創造と既存事業の成長加速を実践。昨年発表した「長期戦略構想」で掲げた2025年度までの目標「営業利益2000億円、ROE(自己資本利益率)10%」を前倒しで2020年度に達成、世界のリーディングエアライングループとしての地位を築くとするもの。

戦略の柱は「攻め」と「スピード」の二本立て

「攻めの経営」面では、(1)新規市場参入/新規事業の創造、(2)戦略的投資、(3)イノベーションの創出 を提唱。また、「スピード経営」の面では(1)タイムリーな情報集約配信、(2)シンプルな判断プロセス、(3)リーンスタートアップ(プロダクトなどを試験的に投入して早期にユーザー調査を実施し、継続してプロジェクトをユーザーと一緒に作り上げるかまたは、早期に撤退するかを判断するプロジェクト推進手法)といったテーマを取り入れた。

各事業戦略の概要

全体の方向性としては、グループ収益の要であるフルサービスキャリア(FSC)・国内線事業の収益を維持しながら、同国際線事業やLCC事業、貨物事業を積極的に拡大する方針。   FSC国内線はシェアの100%維持を行う一方で徹底的な効率化を推進。高需要期における大型機稼働の最大化と、低需要期における小型機稼動の最大化を目指す。 FSC国際線では、積極的に事業を拡大。中南米やASEAN、リゾートマーケットでの新規需要開拓を行い、2015年の5170億円規模から2020年には1.4倍に成長。首都圏空港の再拡張を背景に、「首都圏3バンクモデル」を構築。成田空港は夕方、羽田空港は午前・深夜と、首都圏で1日3つの乗り継ぎダイヤの集中時間帯を設けていくとする。   LCC事業(バニラエア)は、訪日需要の取り込みや国内市場の需要創出などを行うことで、2015年の230億円から2020年には3.1倍規模に拡大していく計画とした。

ほかにはノンエア事業として、訪日旅行プロセスに合わせたANAグループの新規事業開拓も盛り込んだ。この中では、ANAグループの有形無形資産の最大活用、業務提携を通じた他社ノウハウの活用、ICT技術など新技術の活用による新規ビジネス機会の創造を提唱。 ツアーやホテル販売はもとより、ガイドツアーや民泊、免税店、機内販売、越境ECや国際物流などのビジネスを視野に、訪日外国人のタビマエ・タビナカ・タビアトまでをカバーしていく考え。事業領域拡大のイメージは以下のとおりだ。

ANA:報道資料より

利益目標 ―5年前倒しで「営業利益2000億円」達成へ

2015年に設定した長期戦略構想にある目標設定を前倒しし、2020年には営業収入2兆1600億円、営業利益2000億円、営業利益率9.3%、ROE(自己資本利益率)9.8%、ROA(総資産利益率)7.6%を目標値に設定。 株主還元については、成長投資のための原資を確保しつつ充実。配当性向を考慮しながら安定的な1株あたり5円配当の実践を基本に「総還元性向(=配当総額+自社株買い総額)÷当期純利益」)も指標に設定することも検討していく方針としている。

みんなのVOICEこの記事を読んで思った意見や感想を書いてください。

観光産業ニュース「トラベルボイス」編集部から届く

一歩先の未来がみえるメルマガ「今日のヘッドライン」 、もうご登録済みですよね?

もし未だ登録していないなら…