楽天代表取締役会長兼社長の三木谷浩史氏は、宿泊施設を対象に開催した楽天新春カンファレンスの講演で、「スマートフォンの急速な普及により、インターネットサービスはさらに進化が加速していく」と述べ、「人間の行動パターンや社会そのものが劇的に変わる。それを見据えながらサービスを向上していくことが大切」と、参加者に意識変化を促した。
三木谷氏は、劇的な変化を遂げるものとして教育や医療、行政サービス、交通などをあげつつ、特に大きなトピックとして「シェアリング」を提示。「世界経済は所有型から共有型へ移行しており、共有型経済がどう普及するかが大きなポイント。所有の概念をインターネットが変えようとしている」と、その影響を強調した。
さらに三木谷氏は「シェアリング」について、「民泊をどう考えるか」とも提起。「ネットユーザーは急速に多様化し、ホテルとは別のところに泊まってみたいというニーズもある。様々な形でシェアリングに進出する企業が出てきている」と指摘し、「民泊と既存の宿泊施設のバランスを取りながら、相乗効果で成長することも重要」との考えも示した。
もう一つのトピックとしては、「自動化」をあげた。自動運転はアメリカでは時間の問題と言われており、「5年後か10年後には人が運転する方が危険というのが一般的な通念になる」とも展望。この分野には自動車メーカーに加え、アップルやグーグルなども積極的に取り組んでおり、「小さな国で、すべての車が基本的に自動運転になることも出てくるのでは」との予測も語った。
その実現を可能にするのが「機械学習(Deep Lerning)」と「人工知能(AI)」とし、「近い将来、人と話をするような感覚でコンピューターと話すことも出てくる。旅行会社ではカウンターで話すように、画面の向こうに人がいるような形のサービスも出てくるのでは」と語った。
一方で、三木谷氏が楽天で目指すのは「すべてが自動化された世界ではなく、人と人を繋ぐことで幸せを感じてもらうためのプラットフォーム」と強調。それに加えて、ビッグデータの活用によってサービスのクオリティが変わるとし、楽天では今後、グループ全体のビッグデータを活用して、より個人にカスタマイズされたサービスを提供していく方針を強調した。
なお、三木谷氏の講演後に行なわれたトラベル事業の戦略発表では、テクノロジーの開発を加速していることも説明。新たにインド、中国にも開発センターがオープンし、2015年は2013年の4倍に効率を上げているという。
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