国産旅客機MRJのライバル2社とは? 小型ジェット機市場の最新動向を探ってみた -シンガポール航空ショー会場から

航空ショー初日にエアロリース社からのMRJ受注が発表された三菱航空機ブース

秋本俊二のエアライン・レポート

シンガポール航空ショー会場から(2)

シンガポールで始まった航空ショーの初日、三菱航空機のブースでは新規受注のニュースで沸いていた。

「米国の航空機リース会社エアロリースがMRJ(三菱リージョナルジェット)を最大20機購入することで基本合意」と発表されたのだ。このオーダーが確定すれば、MRJのトータル受注数はANAやJALを含め7社から計427機になる。

三菱航空機は現在、76席のMRJ70と88席のMRJ90の2タイプの開発・製造を進めている。ライバルとして立ちはだかるのは、リージョナルジェット市場で先行するエンブラエルとボンバルディアの2社だ。両社の最新動向を探るため、それぞれの展示ブースも訪ねてみた。

航空ショー初日にエアロリース社からのMRJ受注が発表された三菱航空機ブース

E2シリーズの開発を進めるエンブラエル

エンブラエルは1969年にスタートしたブラジルの小型機メーカーで、ボーイングとエアバスに次ぐシェア第3位の座をボンバルディアと争う。代表機種は「E-Jetシリーズ」。ERJ170(78席)、ERJ175(86席)、ERJ190(104席)、ERJ195(110席)の4つのモデルをこれまで市場に送り出している。

日本ではJALグループが2009年にERJ170を導入し、大阪・伊丹空港をベースに76席で運航を始めた。静岡空港を拠点に2009年に誕生したフジドリームエアラインズも、ERJ170/175を使って地方都市を結んでいる。

今回は残念ながら展示はなかったものの、2013年6月のパリ航空ショーで同社は次世代型「E2シリーズ」のローンチを発表。2018年のデビューを目指し最大88席の175型、106席の190型、132席の195型の3タイプの開発を進めている。実績のあるメーカーの戦略機種だけに、MRJにとっては手ごわいライバルになりそうだ。

JALグループが大阪・伊丹空港をベースに運航するエンブラエルERJ170

エンブラエルのブースを訪ねたが、E2シリーズの展示はなかった

ボンバルディアが挑む100席超のCシリーズ

一方のボンバルディアはカナダに本社を置き、これまでリージョナル機やビジネスジェット、水陸両用機などを製造してきた。日本ではローカル路線で活躍する高翼プロペラ機DHC-8シリーズで知られるが、注目は開発中の次世代機「Cシリーズ」。100席クラスのCS100と150席クラスのCS300の2タイプを揃えている。

Cシリーズはボンバルディアが初めて挑む100席超クラスの旅客機で、リージョナルジェットのMRJよりもむしろボーイング737やエアバスA320の市場をおびやかす存在だ。現時点でのトータル受注数は240機超。同社のブースでは、ローンチカスタマーとしてCS100とCS300を合わせて30機オーダーしているスイスインターナショナルエアラインズ塗装のCS100が展示されていた。

ボンバルディアの展示スペースでは中央にスイスインターナショナルエアラインズ塗装のCS100が置かれていた

炭素繊維複合材やアルミ・リチウム合金などの軽量な素材を多用した機体構造。重量は737やA320に比べ5000kg以上も軽量化し、燃費効率を大幅に向上させた。機内は通路をはさんで左側に2席、右側に3席がゆったりとレイアウトされている。案内してくれたアジア地区営業担当副社長、アンディ・ソレムさんは「経済性とともに乗客に提供できるこの“ゆとり”もCシリーズの大きなPRポイントです。新開発のエンジンで音も格段に静かになりました。羽田を離発着する新ルートが日本では議論されているようですが、Cシリーズなら騒音問題の解決にも貢献できると思います」と日本市場も意識する。

ボンバルディアのアジア地区営業担当副社長、アンディ・ソレム氏

スイスインターナショナルエアラインズへの1号機納入は2016年6月ごろを予定。就航後は実際にそのフライトを体験し、この連載で改めてレポートしたい。

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秋本俊二(あきもと しゅんじ) 作家/航空ジャーナリスト

秋本俊二(あきもと しゅんじ) 作家/航空ジャーナリスト

東京都出身。学生時代に航空工学を専攻後、数回の海外生活を経て取材・文筆活動をスタート。世界の空を旅しながら新聞・雑誌、Web媒体などにレポートやエッセイを発表するほか、テレビ・ラジオの解説者としても活動する。『航空大革命』(角川oneテーマ21新書)や『ボーイング787まるごと解説』『みんなが知りたい旅客機の疑問50』(ソフトバンククリエイティブ/サイエンスアイ新書)など著書多数。

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