日本航空(JL)は、このほどマイクロソフト社と共同で、ホログラフィック・コンピュータ「HoloLens(ホロレンズ)」を使った業務用トレーニングシステムを開発した。今回、JALが共同開発したのは、ボーイング737-800型機のコックピットで利用できる運航乗務員訓練生用のトレーニングツールと、787型用エンジンの整備士訓練用ツールの2種類。同社の植木義晴社長も「パイロットだった自分だからこそ良さがわかる」と絶賛のコメントを発表している。 *画像はツール着用時に見えるエンジン(マイクロソフト社提供)
今回開発されたアプリケーションを搭載した「HoloLens」を実際のコックピットで装着すれば、ホログラムとして浮かび上がったスイッチや計器などを操作する訓練が可能になる。また、整備士用のツールでは、これまで実際にエンジンパネルを使って実施していた訓練を、ホログラムを使って仮想的に実施。エンジンの構造や部品名などをリアルに学習できるようになった。
JALとしては、従来、頭で覚えた知識をシミュレーター操作など実際に体を使った訓練に移行する際にあった違和感を軽減できるとして訓練効果が格段に上がっていくことに期待する。開発コンセプトは「教室に航空機1機を持ち込み、どこでも安全に」。自宅に持ち込むことも可能で、体感訓練の機会が増えることで習熟度が早く深まるとしている。訓練期間の短縮ではなく、習熟度の向上をサービス品質の向上の一環としていく狙いだ。
HOloLensは、頭部に装着することができる機器。この機器を通すことで、実際の空間に3Dの仮想映像(ホログラム)を配置し、実際に存在する機材のように操作できる。また、音声ガイダンスと同期をとる機能も用意されている。
発表の記者会見では、マイクロソフト社ゼネラルマネージャー ニューデバイスマーケティングのスコット・エリクソン氏が「VR(バーチャルリアリティ・仮想現実)ではなく、ミックスドリアリティ(混在現実)」であることを強調。電話やPCなど外部機器との接続が不要で、ホログラムを実際の世界に溶け込ませて活用できる点をアピール。手や目線を動かす際に、自分の手の動作を立体的なホログラムで確認できる点で精度の高いトレーニングになることを説明した。
なお、航空会社としてのHOloLens導入はJALが世界初。搭載するアプリケーションは、エンジンなどメーカー側に知的財産権などで許諾を得た数万点の画像を利用して開発したという。B737-800型機はパイロットの初期訓練で使用される機材であり、B787は同社の戦略的な機材。重要な2種の機材でトレーニングの習熟度を上げることで、業務改善や品質向上に期待がかかる。
エリクソン氏によると、世界の他航空会社とのプロジェクトも存在しており、今後、航空業界で新たな技術を活用したトレーニングシステムが登場しそうだ。
マイクロソフト「ホロレンズ」 (英語)トラベルボイス編集部 山岡薫