訪日旅行者数の急増を受け、日本での外資系OTAの攻勢がますます強まっていきそうだ。エクスペディアは2016年、日本を最優先市場に選定。このほど開催した宿泊施設担当者向けのパートナーイベントには、本社の社長兼最高経営責任者のダラ・コスロシャヒ氏がスピーカーとして登壇。本社CEOが特定市場のパートナーイベントに参加するケースは珍しく、日本市場に対する姿勢を強く印象づけた。
イベントではまず、日本・ミクロネシア地区統括本部長のマイケル・ダイクス氏が、日本政府の訪日旅行者数目標値を2020年に4000万人に倍増させたことに触れ、「達成には観光業界全体の責任と使命がある。特に宿泊施設と外資系OTAは大きな役割を果たさなくてはならない」と、日本の観光発展に欠かせない存在であることを強調。
コスロシャヒ氏も、「アジア太平洋地域のなかで、特に日本が重要マーケット」と述べ、同氏をはじめ、40名の上級幹部が市場理解のために1週間来日したことを明かし、本社レベルで日本市場への取り組みを強化していることを示した。
2015年は日本全体で訪日外客数が前年比47.1%増の成長を遂げたが、東京地区本部長の西浦亮氏によると、エクスペディアではその伸びを上回る取扱で推移。日本国内の取扱はインバウンドが主流であるものの、日本人の国内宿泊についてもモバイルの普及率の上昇に伴い「確実に伸びている」といい、インバウンドの劇的な増加に加えて、国内の動向変化も最優先市場に選ばれた理由だという。
日本では6か所の支店をオープンしており、営業スタッフも前年比で倍増。地方での新規施設の獲得を進めている。一方、東京については在庫の確保が注力するポイント。西浦氏によると、エクスペディアが送客する訪日客の3割が東京に7泊以上滞在しているが、土日は国内市場との競合になるため空室を抑えるのが難しい。「外国人は希望する全日程で予約ができなければ、香港など日本以外の旅行先に変更することも多い」とも語り、宿泊施設にとっても平日の販売機会を失っていることを示唆する。
送客の源はテクノロジー、カギはモバイル
冒頭の挨拶でダイクス氏が「送客の源はテクノロジー」と述べたように、今回のパートナーセミナーは旅行におけるテクノロジーの重要性がテーマ。コスロシャヒ氏の講演でも、質の高い送客を実現するためにテクノロジーを重視し、関連部門に継続した投資を行なっていることが説明された。
コスロシャヒ氏によると、エクスペディアと傘下のホテルズドットコムやトリバゴなど、全ブランドをあわせた事業規模は6兆5000億円以上。各サイトのビジター数は54億人、フライト検索数は86億超、宿泊数は20億以上となった。この数字を実現するために投じた予算は、技術開発で1000億円、マーケティング関連で4100億円に上ったという。
消費者のネット利用動向が「これまでにないスピードで変化している」なか、コスロシャヒ氏は重要なのは「モバイル」だと言及。トラフィックのモバイル比率は全世界で40%超、アジア太平洋地域では45%超となり、トランザクションの3件に1件はモバイル経由となった。こうした変化に対応し、エクスペディアではモバイルアプリでのオプショナルツアー予約や旅程確認などの機能を拡充。これにより利用頻度を高め、蓄積された情報をもとに関連製品を勧めるクロスセルやアップセルに繋げているという。
最近の傾向では、利用者が予約をするまでに、2つ以上のデバイスを利用する人が全体の55%となった。例えばPCで下調べをしてモバイルで決済するなど、その利用の仕方は「予測不能になってきている」ともいう。コスロシャヒ氏は今後、デバイスをまたいでシームレスに利用できるための技術開発を行なう考えで、刻々と変わるトレンドに対応した技術開発・改良に努めていくことを強調した。