英調査会社ユーロモニターインターナショナルはこのほど、世界各国を対象にしたスポーツツーリズムに関する調査レポートを発表した。オリンピックやサッカーの国際大会など、大規模スポーツイベント開催時の旅行者数やインバウンド消費(海外からの旅行者の消費)の傾向をまとめたもの。
それによると、2016年のリオオリンピック期間の旅行者数は推定38万人。インバウンド消費額は推計75億米ドル(約7500億円)となり、ブラジルでFIFAワールドカップが開催された2014年と並び「2つの山」が表れることが想定される。
大規模スポーツイベントの経済効果は国によって異なる傾向も
ただし、スポーツイベント開催時のインバウンド消費について国別の成長率を比較すると、その動向が国によって異なることも判明している。2012年にポーランドなどで開催されたサッカー欧州選手権(UEFA Euro)や2014年にブラジルで行われたFIFAワールドカップでは、海外から開催地を訪れた旅行者数が大幅増となり、それに伴う消費額が増大。例えば2014年のブラジルではインバウンド消費の成長率が15%以上に急増した経緯がある。
その一方で、2012年のオリンピック開催地ロンドンの傾向は異なる。具体的には、同年7月から8月にかけて約59万人におよぶ外国人観光客が英国に訪れたにもかかわらず、8月時点の外国人旅行者数合計は前年よりも5%減。同年のインバウンド消費にも大きな成長が見られなかった一方で、翌2013年には6%の急速な成長を示したという。
同レポートでは英国での現象について、決して「ロンドンオリンピックがつまらなかった」といった理由ではなく、その時期に例年英国を訪れる旅行者のうちスポーツに興味のない人々が英国以外に流れたことが大きな要因であると分析。国内旅行をおこなうレジャー客の割合が大幅に伸びたことも関連しているとする。
過去に大規模スポーツイベントが開催された5か国におけるインバウンド消費額の推移は以下のとおり。
オリンピックが民泊などのシェリングエコノミー浸透の契機に
また、同レポートでは、スポーツイベントの開催がその国におけるシェアリングエコノミーの急激な浸透につながることを示唆する。例えば2014年のワールドカップや2016年のリオオリンピックが開催されたブラジルではAirbnbが公式パートナーとなり、その期間の宿泊場所提供に貢献。さらに大規模なスポーツイベントは、インバウンド消費だけでなく、たとえば旅行者が使用する宿泊・交通・食事・エンターテインメント系アプリの利用状況にも明確な変化をもたらすものと予測する。
さらに、スポーツイベント開催時のフード業界の動向にも注目すべきという。同社の調査によれば食べ物のテイクアウトの売上推移は大規模イベントの開催国現地では大きな変化はみられなかったものの、ゲームで勝利を得た国では一定の傾向がみられたという。たとえば2014年のワールドカップで決勝戦に登場したドイツやアルゼンチンでは、テイクアウトの急増が誘発された。2012年のロンドンオリンピックや2014年のワールドカップ開催時期のアメリカでも同様の傾向が見られ、その売上高の推移は時差があるにも関わらず、ゲームの視聴率と相関があったという。